第37話 ラルフの交渉術
翌日、俺たちは早速準備に取り掛かった。
俺たちはギルドの創設をして、その間にラルフは銀行の創設の準備を始める。
ラルフは俺が預けた袋を持って王の元に乗り込んだ。
3人の甲冑を着た兵士に囲まれて高そうな絨毯を踏みながら王の間に向かう。周りの人々が走り回って騒がしく、忙しそうにしている。
城の中の要人のような人間が噂話をしている。
「先日の騒ぎのせいで散々だ、。全く誰がこんなことやったんだ…」
「噂によると、上層部は例の盗賊だと睨んでいるそうだ。」
「国外追放されたんじゃねえのかよ…。犯人が分かってるなら早く捕まえればいいのに、」
「とっくに捜索してる。もう時期国中で指名手配する予定だそうだ。」
しばらく歩くと王の間への重苦しい扉の前に着いた。
「通せ!」
扉が開き、朝早くから王の声が部屋に響く。
「お久しぶりです。」
「三貴族の当主としての挨拶ならさっさと済ませたまえ。こっちはここ数日忙しいのだ。」
言われてみれば城内がやけに騒がしい。恐らく先日電力供給を賄っていたエルフの施設をあの二人が襲ったのが原因だろう。
「分かりました。ですが、それだけではございません。事情は大まかにですが把握しております。」
「ほう?お主に何が分かるというのだね。」
どうやら若くして大貴族の当主になったラルフを下に見ているようだ。
「先日からずっと電気魔力の供給が止まっていますね。原因は詳しくは分かりませんが、魔力源が枯渇したと捉えた方が良いでしょうか。」
「…それくらい皆わかっておる。お主はこの状況を、どうにかするというのかね?」
「我々が、国に新たにクリーンで持続可能な魔力源を提供しようと考えています。」
ラルフの一言で周りがざわつき始めた。
「こちらの魔鉱石が我々の領土にて大量に見つかりました。」
預かった袋からヴィブラタイト鉱石の欠片を取り出した。
「これは、すごい魔力量だ…」
「あの大きさであの魔力なら新たな魔力源に十分なりうる。」
「あぁ、それにこっちの方が安定して供給できるぞ、。」
王様が顎に手を当て考え込んでいる。
「いい提案だとは思うが、こちらもリスクは得られんのだよ。お主が途中で裏切る可能性も考慮しないといけない。」
「その点については安心していただきたいです。私はつい数日前までこの国に忠誠を誓った兵の1人であり、その忠誠はまだ失われてきません。」
王様はさらに深く考え込んだ。
「して、値段はいくらかね。」
「100|kwa(キロワンド)辺り金貨500枚でお願いします。」
「100|kwa(キロワンド)はこの城の1日の魔力使用量ですよ?!王様、これははっきり言って高すぎます。破格ですよ、」
「ラルフよ、お主が赤子の頃から知っているが君らしくないぞ。もっと良心的になりたまえ。」
「おいくらが希望ですかね。」
「そうだな。100kwa辺り金貨100枚でどうかね。どちらに取っても良い価格だとは思わんか?」
「それはさすがにダメですね。その価格であれば、この話は無かったことでお願いします。」
「ちょ、ちょっと待て。分かった、金貨250枚だ。250枚でどうだね?2倍だぞ?」
今夜中にこの件に片をつけて穏便に済ませたがっている。王がかなり焦っているのがよく伝わってくる。
「無理です。そちらの元の希望額が提示額の5分の1なんですよ?それをお分かりで?」
「分かった。350枚だ。それ以上は出せない。」
「…はぁ、分かりました。それで構いません。」
交渉成立だ。ヴィブラタイト鉱石から抽出される魔力量を破格の値段で買い取らせることが出来た。
ラルフは意気揚々と城を出て家に帰った。
「あんた中々やるな。」
途中の路地で小次郎に出会った。
「全部見てたんですね。その魔法の眼とやらで。」
「あぁ。本当は金貨100枚でも、なんなら50枚でも良かったはずなのに。提案を承諾させるのはもちろん、あの王様たち、いつの間にかあんたの口車に乗ってたな。」
「商談は常に相手の上にいることが鉄則とアドバイスしたのはあなたでしょう?」
確かに一言アドバイスしたが、ここまでやってのけるとは思わなかった。さすがとしか言い様がない。
「エネルギー産業は儲かると、直感で分かったので笑 そんなことより、小次郎さん、あなたもう時期指名手配されますよ?」
「分かってる。魔鉱石の運搬と抽出の施設はもう準備したよ。今から俺は城に忍び込むから、あんたは魔鉱石の件を引き続き頼む。」
「分かりました、。くれぐれも大きな騒ぎはやめてくださいよ?」
「約束は出来ないな笑」
ラルフは一回自宅に戻り、俺は城に忍び込んだ。
「さ、今日も始めるぞ。」
クラスのみんなは今日も訓練場に入って訓練に取り掛かろうとしている。
「またぁー?なんか今日は城のみんなが忙しそうだし大丈夫でしょ、」
いつもの通り寝起きに弱い黄瀬だ。
「そうは行かない。こうしてる間にも敵は強くなっているんだ。」
熱血真面目なエドワードがまた黄瀬を説教する。
「第一なんでこんなに今日は騒がしいんです?」
「昨夜電気の魔力を止められたんだ。その犯人を追跡したり後始末に追われてるそうだ。」
訓練場に予め忍び込んでいた俺はみんなに姿を現した。
「久しぶりですね。エドワードさん。」
「…吉川くんか?何しに来たんだ!!」
みんなかなり驚いているようだ。
「小次郎…、。」
ネネが小さく呟いた。
「そうカッカしないでくださいよ笑 ただクラスに戻っただけです笑 クラスメイトと再会できて嬉しいだけの高校生ですよ。」
「君なんだろ!?昨夜の騒動は。君がこの国を陥れた犯人なんだろ!?」
またあの目だ。あの時と同じ目付きでみんなこっちを見てくる。
エドワードは王国の一兵士としてかなり憤りを感じているようだ。
「それは…今はノーコメントで。もう時期指名手配されるようなので、捕えらまる前に来たってだけです。」
「じゃあ私には君を連行する義務がある。大人しく着いてきてもらおうか。」
俺はエドワードに連れられて王の元に向かった。
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