第36話 成果報告

アイリスと俺はラルフの豪邸に転移した。

「暑っ!!」

「すみません、。寒いと思って暖房付けておいたのですが笑」

俺たち二人は厚着をすぐに脱いだ。


「あの二人はまだ帰ってきてないんですか?」

「はい、そのようですね。」

「たぶんそろそろだと思うんだけど…」

そう言った瞬間客間の照明が消えた。

俺は手をかざし、調律者で自分の魔力を雷魔法に変えて直接照明に魔力を送った。

「電気が消えたということは…」

「あぁ。二人がやってくれたようだ。」


強い光とともにマーガレットとバーバラが転移してきた。

「ただいま帰りました!!」

「おかえり。どうだった?何かわかったことはあったか??」

「全部回ったけどどれもやっぱりエルフを使ってたみたい。指示通り全員解放して例の貧民街の空き家に転移させておいたわよ。」

俺は事前に貧民街の空き家に十分な食料を用意していた。そこで全員を一か所に集めて俺が後でヨトゥンヘイムに転移させる手筈だ。

「ありがとう。早速行ってくるよ。転移!」

俺は一瞬で空き家に転移した。



やせ細ったエルフが軽く200人はいる。大きめの空き家にしておいて良かった。

「みんな集まってるな?」

「はい、ありがとうございます…」

一番年を取っているであろうエルフが答えてくれた。

「じゃあ、今から早速ヨトゥンヘイムに転移するからな!」

「その前に、今のうちに少しでも食べておきたいのですが…」

「大丈夫だよ。あっちに行ったらもっと食べれるぞ。もうここの食料もつきそうだろ。」

「…何から何まで、ありがとうございます。」

俺は全員を俺の周りに集め、転移陣を描いた。

「さ、行くぞ!転移!!」



俺たちはヨトゥンヘイムの結界の目の前に転移した。

「あれがヨトゥンヘイムの結界。あれさえ越えれば君たちを縛るものはなくなるよ。」

全員で結界を越えたあと、俺も挨拶がてら結界を越えた。

「全く、あんたも後先考えずやってくれるねぇ」

エルフの里にいた孤児院のばあさんがいた。

「まぁ、どうせ転移は使えるんでしょ?」

「そりゃ予め転移陣は描いてたさ。でもねぇ、そもそもこんなに急に難民を受け入れるこっちの身にもなってくれよ!」

「いやぁ、すみませんね笑 王様には話は通してたはず。」

「王様の命令じゃなきゃやってないよ!」

やっぱりこの人は嘘が下手だな。

一通り礼を言って俺はラルフの豪邸に戻った。



「ただいま!」

「おかえりなさい!マザーには会えましたか??」

「あぁ。相変わらず元気な人だな笑」

マーガレットはかなり喜んでいた。

「それより、状況確認だ。そっちはどうだった?」

「どうもこうも、どこもあの宗教が絡んでるわね。言われた通りちゃんと姿が見られないようにしておいたわ。」

「やっぱりか、。明らかな人権無視だな。」

「それもそのはず、この国では非人間族には人権は保障されてません。」

「そんな…。」

二人とも悲しそうな目をしている。

バーバラはともかくマーガレットは一目で人間族ではないと分かってしまう。二人の姿が見られていないのが幸いだ。もし見られていたらきっと非人間族のせいにされて自体がさらに悪化しかねない。


「それはそうと、そっちはどうだったのよ。何か収穫はあった?」

俺は袋から取り出したヴィブラタイト鉱石を取り出した。

「これを見つけたよ。あっちにはもっとあったけど、とりあえず一番小さそうなのを拾ってきたよ。」

「これはすごい…それ一個でもこの街の半年分くらいの魔力ですよ…。」

「それで何をする気なんです??」

「もちろん国に売るのさ。」

「でも、小次郎さんはこの王国じゃ一応犯罪者ですよね?どうやって売るんです?」

「そこであなたの出番ですよ。」

俺はラルフの肩に手を置いた。

「そういうことですか。構いませんよ。丁度この家の当主になったところですし。」

話が早くて本当に助かる。

「このエネルギー源にすれば安定して電力を賄える。この家にもさらに金が入るだろう。」

「でもその魔鉱石の運搬はどうするんですか?あんな遠くて寒すぎる場所にわざわざ一回一回行くわけには…」

「そこは俺が転移陣をあらかじめ描いておく。転移のことは一応王国には言わないでおいてくれ。」

「難しいですが、分かりました。うちの領土でたまたま発見したとでも言っていきましょう。」


「それはそうと、その魔鉱石で得た資金でどうするんですか?」

「とある組織を創る。それにも協力してもらいたい。」

「なるほど、具体的にどんな組織なんです?」

「俺の元いた世界じゃ経済の要の組織だよ。銀行っていうんだ。」

俺は計画の詳細をラルフに話した。



「それより、あの宗教が気になるんだけど。なんなのよあのカルトは」

「マギーアデウス教ですね。はるか昔からこの王国で活動して来ました。主に人間族を創造したとされる天神べヴィリーを崇めています。」

だから人間第一主義の文化になってしまったのだろう。

「彼らによると、天神様が太古の時代に人間を創造し、以来スキルを人間に与えてそれぞれに使命を授けているそうです。」

「でも人間じゃなくてもスキルを持っている種族はいますよね、?」

「もちろんです。彼らの思想によれば、人間から派生したのが非人間族であり、天神様の双子の兄弟の魔神バルドルが創造した魔人族も人間と同じように使命とともにスキルを与えているのだそうです。マギーアデウス教の第一の敵は、その魔人族なのです。」

「なるほど。だから魔王と勇者は戦い続けているんですね。」

「問題はそのスキルなのですが…」

「どうかしたんですか??」

「その天神様が与えていない唯一のスキルが盗賊スキルなんだそうです。」

俺がやたら嫌われている理由が分かった気がする。

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