第35話 アイリスと俺
俺たちは早朝ラルフの家で起きて彼の家で朝食を取った後に戦闘の準備をした。
「じゃ、一回お別れね。」
「転移の座標は紙に書いたとおりだ。何かあればここにすぐに戻ってきてくれ。」
「大丈夫です!バーバラさんは任せてください!」
「ちょっと!それ私のセリフよ?!」
まぁ、この二人なら大丈夫だろう。昨日のような特別な|結界師(バリアマスター)がいるわけではないし。
「転移!」
バーバラたちが転移をした。
「さ、俺たちも行こうか。」
「はい。小次郎様。」
「転移!」
俺たちは王国北西部の名もなき豪雪地帯に転移した。雪が激しく降り続け、周りは何も見えない。
「なぁ、前にも言ったと思うが、様はやめてくれよ。呼び捨てで構わないからさ、」
「…分かりました。小次郎。」
アイリスは渋々了承し、慣れない呼び捨てで俺を読んだ。
二人でしばらく歩き続け目的地に向かった。
「おそらくあそこだ。あまりに強い魔力反応でこの眼じゃまだ感知しずらい。」
この右目に慣れるのはやはり時間がかかる。
「厚着しておいて良かったですね。にしても寒いですが。」
さすがのアイリスも凍えている。
しばらく歩いたところに大きな洞窟を見つけた。
「ここだ。近くだとすごい魔力反応だな…。」
「いったい何があるというのですか…」
「気をつけろアイリス。何か来る。」
洞窟の中から、大きな物音とともに5m近くある人型の魔物が現れた。
「デカい…巨人くらいだな。」
「これはゴーレムですね。おそらく元は小さな鉱物ゴーレムだったのでしょう。ここの洞窟の発せられる魔力にここまで大きく成長したのでしょう。」
やはりアイリスはかなり博識だ。この世界のことは確実に俺より知っていそうだ。
「そういうものなのか?」
「鉱物ゴーレムはこういう洞窟に湧いて辺りの魔力を吸い取って成長しますが、こんなにも大きなものはおそらくここだけでしょう。」
「じゃあ、世界最大の鉱物ゴーレムかもしれないやつが相手か、。」
「いや、私がやります。一瞬で片を付けます。」
ちょうどいい。アイリスの戦闘スタイルを見られる。
「分かった。あいつは物理攻撃はさほど効きそうにないぞ?いざとなったら魔法を使え」
「…魔法ですか、。今は少々自信がないです。」
珍しく本当に自信が無さそうだ。
「無理に思い出す必要はない。一からで構わないから自分の思うままに魔法を使うといいよ。魔法って自分の魂なんだからそれが一番重要だと思うよ。」
アイリスは静かに頷いた。早速彼女は戦闘準備に入った。
「|超(ハイパー)|身体強化(エンハンス)!」
アイリスは身体強化魔法を自分にかけた。
「普通の身体強化魔法じゃない…上位魔法だな」
彼女は目にも止まらぬ斬撃を繰り出した。あの硬そうなゴーレムに斬撃が効くようには到底思えない。
「それじゃ傷はついても少しだけじゃないか?」
「マーキング完了です。|魔願(チャーム)|緑柱岩天撃(ベリルショック)」
さっき切り裂いたの部分から緑色の岩魔法が生えてくるように出てきた。
「あれがアイリスのスキル…なのか、?」
岩魔法によってゴーレムの硬い体が割れて中から魔力を放つ光る球体が現れた。
「あれが核ですね。直ちに破壊します。|魔貫(バイト)!|焦炎之樋(スパークエッジ)!」
球体に炎魔法の斬撃を貫通させて壊した。球体はガラスのように砕かれた。
その瞬間、ゴーレムの動きが止まって倒れた。
「核で動いていたってわけか。」
俺はゴーレムに近寄った。もっと核を神律眼で詳しく見たかったが一瞬で砕かれてしまって跡形もない。
「あれは疑似的な魂のようなものです。生きてはいませんし、魂に直接干渉したり操ったりする魔法も効きません。」
「なるほどな。にしても強いな、アイリスは。」
アイリスは顔を赤らめた。
「あ、ありがとうございます。」
「顔赤いけどどうした?ゴーレムにやられてのか?」
「い、いや、少し寒いだけです。」
俺たちは洞窟の奥に進んだ。
「どうだ?少しは自分のスキルのこと思い出したか??」
「はい。どうやらいくつかのスキル魔法の効果を併用して魔法を放つことができるようです。」
そうなるとメインは古式魔法になるのか。
「今はそれはいくつくらい使えるんだ?」
「5つです。遠隔発動の|魔願(チャーム)|、貫通の|魔貫(バイト)、融合の|魔合(ユナイト)、追跡の|魔追(トレイル)、あと一つがまだよくわかりません、。」
「まぁ、自分のペースでゆっくりやっていけばいいと思うぞ。きっとこれから増えるだろうしな。」
あの魔法一つ一つはスキルに直結しているから俺にも奪えないようだ。
手数が多いのはかなり多いのかもしれない。
ある程度進んだ時奥に青白い光があるのが見えた。ゴーレムの核の光と同じ色だ。
「すごい魔力ですね。」
「あぁ。ゴーレムはきっとこの魔力で大きくなったんだろう。先に行こうか、。」
光の方に進むと青白い光と魔力を強く放つ鉱石がいくつもあった。
「なんて魔力量…。一つ一つでもすごいのにいくつもありますね。」
「あぁ。たぶん少し前に本で読んだヴィブラタイト鉱石っていう魔鉱石だな。少量ヨトゥンヘイムの地下にあったそうだがここ数百年発見はされていなかった。とりあえず一個持ち帰ってみよう。」
俺はあらかじめ持ってきた特殊な袋に小石ほどの鉱石を拾って入れた。
「その袋は何ですか??」
「昔王様に貰ったんだよ。試作品らしいけど光も魔力も通さない特殊な布で作ってるみたいだ。」
入れたとたんに小石程度の鉱石が放つ大きな光と魔力は微塵も感じなくなった。
「さ、帰ろう。転移するぞ。」
アイリスは頷いて俺に近寄った。俺は早速転移陣を描いた。
「転移!!」
俺たちは元居たラルフの豪邸に転移した。
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