第34話 青年ラルフ

「リカルド…やけに強かったわよね。」

たしかにこの教徒は明らかに強い結界を作っていた。

「あぁ、俺もそう思う。」

「おそらく|契り(ちぎり)でしょうね。」

「なんだ?それ」

「簡単に言えば、自分に誓いを立てて一生それを背負うことで魔法の威力を高める禁術です。ですが、こんなに強まるとは思えませんね。」

アイリスは記憶をなくしてもこういうのは博識のようだ。


「神律眼でこいつの遺体を見てみるよ。」

俺は左目を抑えて右目の神律眼で遺体を集中して見た。

「なにそれ?」

「小次郎さん、ユグドラシル樹上で番神ヘイムダルを倒して片目を奪ったんです。それがあれば、ありとあらゆる物を見通すことができるんですよ!」

「すごいことしたのね…笑」

マーガレットが俺の代わりにネネに説明してくれた。

「こりゃただの契りじゃないようだ。誓いを立てたのは自分じゃなく神…おそらく天神と契りを交わしている。」

「まぁ、契りの効果は一生なんだから、こいつが万が一神の力で蘇っても二度と結界は張れないわけね!」



俺たちはもう遠くには転移できないため、地下を出て逃げることにした。

「こっちよ!夜とはいえ電気が消えたんだから気づかれたはずよ!急ぎましょ!」

みんなで地下道を走って逃げた。

「止まれ!ヴァルデンシア騎士団だ!」

走った先に一人の男が剣を構えて立っていた。

「通報じゃ侵入者は一人だったはずだろ!なんでこんなにいるんだ!!」

若いくて武器もかなり高いものだろう。挙動から見ておそらく新人だろう。ここの警備をして日が浅いだろうから何をしている場所かもしらないはずだ。。

「落ち着け、。俺たちはみんなを救ってたんだ。」

「みんな?なんのことだ!」

「やっぱり知らないんだな。あの部屋はエルフの高い魔力は永遠と吸い取り続けて電気に変換していたんだぞ。お前はそんな非人道的な行いに加担していたんだ。」

「…そんな、。電気は神の御恵みだって言われた…。うすうすそんなわけないとは思っていたが、」

かなりショックを受けているようだ。

「君たちはもう追われる身だ。とりあえずうちに逃げろ。」

「そんなことしていいのか?」

「うちは金と地位だけはある貴族階級なんだ。そんな家が嫌で兵士になったんだがな、。それにせめてもの償いだよ。」

「あぁ、本当に助かるよ。」


俺たちは彼について行って裏口から外に出た。

「じゃあ、またね。」

「元気でな。」

「もう時間はない!速く行きましょう!」

俺たちはネネと別れて彼の家に向かった。




しばらく夜道を走り、家に着いた。外も中もかなりの豪邸だ。

「すごい豪邸ですね。城から逃げたと思ったらまた城に着いた気分ですよ。」

「そう?結構小さくない??」

「そりゃ巨人族からすればね笑」

「巨人族なんですか…?」

「えぇまあ、半分は巨人族だけど、もう半分は人間よ!」

「自己紹介がまだでしたね。俺は小次郎、こっちの半巨人族はバーバラで、耳の尖った方がエルフ族のマーガレット、でこっちの堅いのが人間のアイリスです。」

「巨人族にあうのは初めてで、もっと大きいのかと思いましたよ笑」

「バーバラはたぶん半巨人族でも小さい方ですよ笑」


俺たちは客間に案内してもらった。

「おかえりなさいませ、ラルフぼっちゃま。今日は遅かったですね。」

執事のような礼儀正しい老人が現れた。

「あぁ、ただいま。もう夜遅いから寝なよ?」

彼は大人しく客間を出た。

「ぼっちゃま?笑」

「実は自分、三貴族の一つ”シュタインハルト家”の跡取りでして笑」

「三貴族…レイグラット家、ノイシュタット家と同じくこの王国で古くから権力をふるってきた有名な貴族です。」

「千年前から変わらずあったんだな。」

「千年前?なんのことです??」

「いや、なんでもないですよ笑」  


「実は…協力をしてほしいんです。訳あって、俺はすでにこの国で追われる身になっているんです。だから俺の計画には信頼できる人間が欲しい。あなたならきっと…」

「なるほど、薄々感づいてはいたんです。例の盗賊の方ですね…。分かりました。あなたに協力します。」

俺の正体を知ったうえで協力してくれるのか、。

「ありがとうございます。悪いようには絶対になりません。むしろあなたの一族と、この世界をいい方向に進めて行きますから。」

「それで小次郎様、次はなにをするのでしょうか???」

アイリスが俺に聞いてきた。

「この眼になってから気になってたのがあるから、明日はそれを調べようと思う。ものすごい魔力反応がこの国の北西部にあるようなんだ。」

「北西部ですか…あそこはなにもない豪雪地帯です。ひたすら雪が降り続ける氷点下の平地ですよ?寒すぎてだれも行こうとはしません。」

「そんなところに…一体どんなやつがいるっていうんですか?!」

「人じゃないさ、マーガレット。物だよ。しかも大量の。」

俺以外のみんなは全員不思議そうな顔をしている。


「明日は別行動だ。俺とアイリスはその豪雪地帯に行く。バーバラとマーガレットは転移で別の場所に行ってほしい。」

「別の場所?どんなところなの??」

「たぶん今日みたいなエルフをたくさん捕まって電力にしている施設だ。五か所あるが、いずれも教会の地下にある。」

「ひどいわね…ラルフさんも行く?」

「私は、騎士団を辞職しようと思います。父にここの跡取りを受け継ぐよう言いますよ。」

「ありがとうございます。助かります。」

「良いんですよ。ここの権力を使いたいのは分かっています笑」

彼はどうやら信用できるようだ。兵士よりも貴族の方が向いているしかなり有能だ。


「最後に、聞かせてください。あなたの最終的な目的はなんですか??」

「簡単なことですよ。みんなできてることが、俺たちにはできないんです。」

俺はラルフに最終目的を話した。

                                                    

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