第28話 しばしのお別れ

朝早く俺は何回もドアをノックする音で目覚めた。訳あって昨日はバーバラの部屋で寝たのだが、ここはドアが近いから無言のノック音で起きれた。


「はい今出ますよ。」

俺はドアを開けるとそこには例の俺の守護者を名乗るアイリスという女の子がいた。

「おはようございます。小次郎様。今お目覚めですか?」

「あぁ。様はやめてくれよ、。まさか、起こすためだけに来たの?」

「えぇ、まあ。」

こいつまじか…笑


俺はマーガレットとバーバラを起こして家を出た。昨日は結局2人で仲良く俺の部屋で寝たらしい。2人を起こしたらママさんとパパさんも起きてきた。


6人全員で食卓を囲み、朝食を食べる。

「君は…なんという名前なんだい?」

「アイリスです。小次郎様の守護者を努めさせていただいています。」

「あら、かっこいいのねぇ〜 アイリスちゃんはおいくつなのかしら?」

「1000と17歳です。」

「…1000?」

「冗談ですよ笑 たまたまエーデルワイス物語の登場人物と同じ名前なのでね笑笑」

アイリスはキョトンとした顔をしてこちらを見ている。


ドアの前で俺たちはママさんとパパさんに別れの挨拶を言った。

「今まで本当にありがとうございました。」

「またいつでも来なさい、。待ってるよ!」

「バーバラちゃん寂しくなるわねぇ、」

「パパ、ママ、私が行っても泣かないでよ!」

「分かったわ。」

ありゃドアを閉めた瞬間泣くな。


俺はマーガレットとバーバラとアイリスの4人で家を出た。

「で、まずは何をするの?」

「まずこれでアイツらと連絡するために結界の外に出る。」

俺はインベントリからスマホを取り出した。

「それは…なんですか?」

「魔道具の1種でしょうか?」

「前の世界ではみんな持ってた便利な道具だよ。遠く離れた人と話せたりするんだ。」

みんな結構半信半疑だ。まぁ無理もない。


「じゃあそのあと盗賊団を創設するのね。初期メンバーは私たち4人だけ?」

「いや、もう1人あてがある。」

「というと、それは誰です?」

「半吸血鬼のイーサン・ワトソンだ。」

「それってあのアンチテールズの?!」

「ならかなり強いんですね。いいと思います。」

「良いわけないでしょ!?悪人よ!?」

「いや、そうでもない。あいつは金のためだけに働いていた。吸血鬼一族はワケありなんだ。」

みんな俺の言葉で納得したようだ。


俺たちは転位陣を地面に描いて結界の前に転移した。

「なぁ、確認するけど、この結界は人間以外なら出入り自由なんだよな?」

「えぇ!おばあちゃんの一族が代々結界を守ってきました!」

「じゃあ…アイリスは人間だけど大丈夫なのか?」

「それなら心配要りません。話すと長いですが、私はこの結界の通行許可を既に得ています。」

アイリスは朝でも関係なくお堅い。


たぶんアイリスが通れるのも俺が通れるのと同じ理由で1000年前になにかあったのだろう。アイリスが俺が通れるか聞かないのがその証拠だ。俺の盗賊スキルとアイリスのスキルがこの結界に条件として組み込まれているのだろう。


俺たちはヨトゥンヘイムを隔てる結界をそのまま通った。

その時すぐさまスマホから着信音が鳴った。俺はスマホを取るとネネからの着信だった。俺はすぐに通話に出た。


《ようやく繋がったわ。なんで出なかったのよ!》

「ヨトゥンヘイムの結界で電波が届かなかったんだ。どうしたんだ?」

《そんなことより助けて!今アレに追われてr》

途中で電話が切れてしまった。どうやら緊急事態のようだ。

「話せたの?!で、その人はなんて…?」

「助けてほしいって。緊急事態のようだ。」

「それは大変ですね…すぐに助けないとじゃないですか!」

「でもどうやって助けるのよ…。場所は分からないの?」

「分からないが、この神律眼でネネの場所を特定できる。場所さえ分かれば転移できるさ。」

「すごいわね…もうとっくに私より転移魔法上手いじゃない…」

距離で言えばそうだが、俺よりバーバラの方が機動力の面じゃ叶わない。

「小次郎様、それじゃあ速く行きましょう。なぜそうなってるのか検討はついてるんですか?」

「様はやめてくれよ。検討ならついてる。たぶん前にした頼みごとでトラブルが起きてるんだ。」


俺はみんなに、ヨトゥンヘイムに来る前にネネにした頼み事を話した。


「俺はこの世界に来てから人一倍魔力感知が得意だった。それで夜、城をぶらついてると、微かに弱った魔力を感じたんだ。今思えばあの魔力はエルフのだと思う。常に魔力を強制的に吸われて、ずっと苦しんでた。夜だから他の兵士の魔力が無くて感じ取れたんだと思う。」


「それを調査するのが頼みごとってわけね。」

「そんな…。もしかして…それってアッシュが前に言ってたやつかもしれません、。」

「…それはなんだ?」

「アッシュは里に来る前は王都で生まれました。アッシュの周りのエルフの子供たちは、毎晩1人攫われていって帰ってきた人は誰1人いなかったそうです。自分もさらわれそうになった所を、恩人に助けられたと言っていました。」


これは闇が深そうだ。すぐにネネの元に行かないと。


俺は右眼に集中した。ネネが暗い場所で逃げている姿が見えた。広い場所ではないが、集中して転移を地面に描いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る