第26話 英雄のご帰還
戦いが終わり、バーバラを救った後に気絶した俺は、目を覚ますと巨人王と俺の守護者と自称するアイリスとバーバラと馬車に乗っていた。
「やぁ、起きたか英雄さん。」
「寝坊はいつものことのようね。起きないかと思って心配したわよ。」
元気なバーバラを見て少し安心した。
「もうこんな時間なんだぞ?寝かせてくれよ笑」
「バーバラくん、ずっと小次郎くんが起きないと思ってしゃべりまくってたよww」
「ハッキリ言って、うるさかったです。」
「う、嘘よ!こんなの信じないでよねっ!」
「またまた~w バーバラくんは本当に嘘が下手なんだからww」
みんな仲が良くて、なんだか不思議と幸せな感じがした。
高校のやつら、どうしてるかな。特にネネは、ちゃんと頼んだことやってくれたかな…。
一通り全部終わったら、結界を一度抜けて電波の届くところに行ってスマホで連絡を取ろう。
「それで小次郎、これからどうするの?」
「そうだな。実はやりたいことがある。」
「ほう?王様の私にできることがあれば、全力で支援するよ?」
「私は小次郎さんの守護者です。どこまででも着いていきます。」
「全部後処理が終わったら、盗賊団を創る。」
「小次郎くん、それは本当か?」
いつも軽薄な王様が珍しく真面目そうな顔をしている。
「それでそれで??何をするの??」
「盗賊団は主には人間の王国で依頼を受ける形で活動する。まぁ、基本は傭兵集団だ。そしてだれか信頼してる人を見つけて、とある組織も創る。それがあれば王様は俺たちを見て見ぬふりはできないし、国にとっても人類にとっても俺たちは必要不可欠な存在になる。」
「なるほどね。たしかに君が率いる盗賊団はとんでもなく強そうだが、王国を追放された君が創るとなると闇ギルドって扱いになるよ?その”信頼できる人”に創設してもらえばいいんじゃ?」
さすが王様だ。政治のプロは着眼点もプロだ。
「いや、少なくとも最初は闇ギルドでいいんです。そのための、”とある組織”です。」
「小次郎さんが起きたの??!小次郎さーん!!」
俺の声は聞き入れてマーガレットが急に馬車に無理やり押し入った。
「小次郎さん…心配しましたよ!!」
マーガレットは急に俺に抱き着いてきた。欧米ドラマの再開の挨拶みたいだ。
「エルフ?!ちょっと!あんた誰よ!!」
「あぁ、彼女はマーガレット。君を助けるのに協力してくれた。」
「あなたがバーバラさんですね!無事で本当に良かったです…!!」
マーガレットの人柄の良さにバーバラは言葉を失っている。こういうバーバラを見るのは珍しくて結構面白い。
「マーガレット、それにバーバラも。頼みがあるんだ。俺の創る盗賊団に入ってくれないか?」
「一緒に働けるんですか?もちろん!!」
「私はいいけど、私なんかでいいの?」
「あぁ。君は本当はかなり強いだろ??あとバーバラにはプレゼントがある。」
俺はヘイムダルからもらった大きな戦斧ブルートガングを取り出した。
「俺には大きすぎるし、バーバラなら使いこなせると思ってね。」
「本当にいいの?!これ番神の戦斧ブルートガングでしょ?!てか、どうやって手に入れたのよ!」
「まぁ、ちょっとやりあってね。負けそうだったけど、マーガレットと俺の中にいるアッシュのおかげで倒せた。おかげでヘイムダルの神律眼とアッシュのスキル|調律者(レギュレーター)を使えるようになったよ。」
「なんだか、すごいことになったのね…。」
バーバラは申し訳ないような顔をしている。
「ま、まぁいいわ!貰ってあげるわ!」
バーバラは戦斧を手に取った。かなり似合っている。
「バーバラくん嬉しいくせにww 男から贈り物貰ったことなんてないんでしょ?www」
「そ、そんなことないですよ!」
「えぇぇ!小次郎さん!バーバラさんだけずるいです!!私あんなに頑張ったのに、。」
「分かってる。マーガレットにもプレゼントはあるけど、ちょっと待って欲しい。」
マーガレットは渋々受け入れた。
他愛もない雑談や今後の対応を聞きながら過ごしていると、いつの間にか城の前に着いていた。辺りはすっかり暗くなっている。
王様によると、ゼラが首謀した国家転覆は協力者がほぼ全員死に、ゼラは重症で身動きも取れないためこのまま特殊な檻に幽閉するそうだ。幸いなことに、バーバラ以外は被害がないためこのままこの一連の騒動を隠蔽するそうだ。だが、そのうち噂は広がるため先に俺が解決したという噂を流すそうだ。
「小次郎くん、ちょっといいかな。少しだけ話がある。時間は取らせないよ。」
みんなが解散する中急に王様が俺を呼び止めた。
「はい、わかりました。」
バーバラとマーガレットは少し離れたところで待ってくれている。二人とも、先に行っててもいいのに。
「君は、エーデルワイス物語をしっているかい?」
「えぇ、マーガレットの先祖の主人公と俺と同じ|盗賊(バンディット)スキルを持った城木家寿たちの昔話ですよね。でも実のところ、千年前に実際にあった出来事と。」
「その通り。その物語でイエヒサ・シロキは君と同じようにここヨトゥンヘイムで盗賊団を創ったんだ。」
「すごい偶然ですね。」
「んで、僕は当時から生きているから分かるんだけど、家寿くんは死ぬ間際に盗賊団で誓いを立てた。どんな形であれ1000年後に集まってその時起こる危機に対処するってね。」
「…つまり?」
「つ、ま、り、彼は君が盗賊団を創ることをなんらかの方法で仕組んだのだろう。もしかしたら、君の計画していることも彼の思惑なのかも。」
俺は少し考えたが、返事はすぐ決まった。
「まぁ、そんなこと俺からしたら関係のないことです。俺はこうしたいと思ったからやるので、その城木家寿の思惑でも知ったこっちゃないですよ」
「そう言ってくれてうれしいよ。まぁ、そういうとは思ってたけどね笑 一応伝えておいただけだよ。」
俺は待ってくれたマーガレットとバーバラと合流してバーバラの家に向かった。どうやら今夜はマーガレットもバーバラの家に泊まるらしい。これも王様の計らいだ。
もうすっかり夜遅い。久々にこんなに綺麗な夜空を見た気がする。
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