第23話 二鼠藤を噛む
マーガレットは魔力が残りわずかで前の戦いで負傷を追った中、急いで洞窟に進んで巨人兵やバーバラたちを助けるために戦地に向かった。
ある程度進んだ時に、奥に大きな魔力が一つと弱った魔力がいくつかあること気付いた。
「巨人兵のみなさん、もしかして…大丈夫かな」
走る速度を上げてさらに奥へと進んだ。
「これは…」
走った先に見た光景は、何十人もいた武装した巨人兵が全員自分よりひどい負傷を追ってかろうじて生きている者ばかりだった。
「みなさん!どうしたんですか?!」
「マーガレットさん…全員ヤツにやられたんです。」
巨人兵の一人が奥を指さして答えてくれた。そこには一人の半獣人の少女がいた。
大きくて太い声の屈強な巨人兵とは思えないかすれて弱った声をしていた。
「あなた…だれなんですか!?」
「名乗るなら自分からでしょ。お馬鹿さん。」
「…私の名前はマーガレット・アルテミラ、この方々の仲間です!」
「こんなでかいだけの雑魚の仲間なら、倒すのが簡単そうで助かるわ。私の名前はエリザベス・ゾットよ。エリーって呼んでちょうだい?」
小柄で白装束のようなものを羽織っているネズミ?の獣人の少女のようだ。
「あんな子ネズミにやられるとは…面目ない…。王に生きて合わせる顔が無い!」
「そんなこと言わないでください、。みなさん今治療しますね。」
「ちょっとちょっと!せっかく倒したのに治さないでよ、めんどくさい。全く、アルフォースはなにしてるのよ。こんなに敵を通すなんて門番失格ね。」
マーガレットたちの話をさえぎってエリザベスが話してきた。
「アルフォース…彼は、私が殺しました。」
「あ、あのアルフォースを?情熱だけしかない暑苦しいやつだったから、仕方ないわね。」
若い女の子がアルフォースを倒したと聞いて少し驚いているようだ。
「ま、マーガレット殿、あの半魚人を倒せたのですね…。我々の残りの魔力をほぼすべて差し上げます。お願いです、我々の無念を晴らしてください…!!」
「そ、そんな!魔力を全てなくすと魂が消えてしまうんですよ?!」
「大丈夫です。かろうじて生きられる程度です。小次郎殿との約束がありますからね…。」
マーガレットは古式魔法の闇魔法でその場にいる巨人兵全員からまとめて魔力を吸い上げた。
「こ、こんなに残っているなんて…。」
この屈強な巨人たちが魔法で戦えず、成す術なくやられてしまったと思うと、マーガレットは少し怯えた。
「あぁ、ありがとう。マーガレット殿…」
一気に魔力を吸われたため、巨人たちは一斉に気絶してしまった。寝顔は不思議とみんな笑顔だった。
「|完全回復(パーフェクトヒール)。」
マーガレットは負傷した自分の体を完全に回復させた。
「もしかして、私と本気でやる気?」
「当り前です。なぜそんなに消極的なのにゼラさんに賛同したんですか?」
「はぁ、。私、もともと人間の住む王国で生まれたんだけど、訳あって重要指名手配犯になっちゃってね笑 ヨトゥンヘイムなら人間は追ってこないし、ここならあっちよりかは私たちを歓迎してくれると思ったんだけど…。働くために無駄に強い私は軍に入ったはいいものの、いつ人間たちのところに行かされるか分からなかったのよ。でもゼラのとこに行けば、そうはならない確証があるってわけ。」
「…なるほど。あなた、いい人ですよね。完全に巨人さんたちを殺していませんし…だからといって、倒すのには変わりませんが。」
「そう。じゃあ仕方ないわね!」
羽織っていた白装束を投げて姿を現した。背中には無数の鋭い針がある。
「私は、父が人間で母がネズミ獣人のハリネズミの半獣人。鋭くて長い針を防御にも攻撃にも使える便利な獣よ。」
「さ、はじめましょ?」
「はい。先に行かせていただきます。|一寸闇錠潜(ハザードダイバー)!」
闇魔法で一番出力の高い攻撃魔法だ。
「こんなもの!」
エリザベスは自分の背中の針を2本両手で引っこ抜いて剣のように攻撃魔法を切り裂いた。
「くっ…」
切った瞬間闇魔法が弾けて大きな爆発が起きた。爆発が収まるとマーガレットが巨人全員を闇魔法で一気に取り込んでいた。
闇魔法の引力は魂が強いと取り込むのが難しい。だが、今の巨人たちは魔力もかすかで致命傷を負っている者も多いため簡単に取り込むことができる。それに、時間の流れが極端に遅いマーガレットの闇魔法空間は傷の進行を遅らせることができるのだ。
「なるほどね。マーちゃん倒さないと巨人さんも…。やってくれるじゃん笑」
「マーちゃん…ですか笑」
懐かしい呼び方をされて少しにやけた。
「私、チームじゃ唯一スキルがないの。でもこの背中の針を使えば…!|魔法付与術(エンチャント)!|夕電の針(サエッタアーゴ)!」
エリザベスは両手の針に雷魔法を付与し殺傷能力を高めた。
古式魔法の魔法術式の付与や身体強化、回復魔法などの自分の体内で完結する魔法は比較的に難易度が低く、威力も高い。だが、体外に出された血液や髪の毛などは魔法では自分の身体とみなされないため、彼女の針も通常は|魔法付与術(エンチャント)も難しい。しかし、エリザベスの針はいついかなる時も魔力を注いでいたので容易に魔法を付与することができる。
「私のメインの戦術は体術!針の武器と背中の盾を使った体術はこのヨトゥンヘイムでも1、2を争うほどよ!」
「なるほど、体術使いなんですね。そういう魔法使いは、遠距離攻撃は弱いですよね?笑」
「さて、どうかしら。|大雷雨針柱嵐(カスピッドストーム)!」
背中の針にも雷魔法を流し、一気にマーガレットに放った。
「|常盤岩威(トキワギ)!」
岩魔法で障壁を作って針を防御したが、無数の針でボロボロと岩壁が崩れていった。何本かの針がマーガレットの腕や足をかすれて傷をつけた。
「かなり効いてるじゃないの笑 |自動回復(オートヒール)。」
エリザベスの背中に無くなった針が一瞬で生えた。
「自分の身体の一部だから回復で簡単にもう一度撃てる…魔力が尽きない限り針はずっと放てるんですね。」
「そゆこと。痛そうよ?笑 回復しなくていいのかしら。」
魔力をこれ以上無駄に使うわけにはいかないため回復はしない。
正直言って、現状マーガレットがかなり不利だ。
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