第22話 僧兵と俺

マーガレットがアルフォースを倒したそのころ、俺はニューアンチテールズの一人ハーフオーガの老人、ヴァレンティノ・バッカと相対していた。



「私のスキルは|珠数師(ロザリオ)。この数珠を媒介に魔法を発動し長距離広範囲で攻撃できる。」

そう言って首から下げた数珠を外して見せてきた。

「最強の僧兵である私の力、見せてやろうぞ!!|魔法付与術(エンチャント)!|大炎煌輪廻(イグナイト)!」

炎を数珠に纏わせて俺に鞭のように攻撃してきたが、なんとか避けることができた。


「バーバラ、君の剣を使わせてもらう!」

俺はバーバラが城に飛ばしたSOSメッセージ付きの大剣を取り出して応戦した。

「大嵐天突き(ゲイルショット)!」

大剣を数珠の球の中心に投げてそこから風魔法を流した。数珠は連鎖的に全部崩壊した。

「さすがですな。ではこれならどうでしょうかな!|球鎖災大蛇(ウロボロス)!」

今度はより一層固そうな数珠を投げ、その数珠が禍々しい緑に光る大蛇になった。俺は足の裏に風魔法をかけて機動力を上げて必死に避けようとした。地面を蹴って大蛇を避けようとしたが、地面と天井から数珠が出てきて手足を拘束した。


「このまま死んでいただきます!」

大蛇が俺に向かって炎を吐いた。

「老害がッ!舐めるな!!|偉大なる狂盗(グレイテストヴォール)」

俺は数珠の元の根を無理やり盗んで拘束を解いた。炎をぶん殴って風圧で押しのけた。

「なんという身体強化魔法…。これなら!」

やつは手から数珠を上に投げてそれが巨大化し、そこから牢が出現した。俺は大蛇と囚われてしまった。牢に触れてみたら転移魔法を防ぐ結界が付与されていることに気づいた。

「だったら…|常盤岩威(トキワギ)!」

両拳を地面に叩き付け、魔法で岩を出して大蛇ごと牢をぶち破った。


「やっぱり結界魔法は苦手のようだな。知らないのか?魔法に条件を付け足すと普通は効力が弱くなるもんだぞ。」

「私に授業をするとは…小僧、どこまでも見下しやがって!」

温厚だったヴァレンティノもついに怒ったようだ。

「仙法!|雷豪鳴輪廻(サンサーラスパーク)!|大炎煌輪廻(イグナイト)!」

首の数珠に雷魔法を、手首の二つの数珠に炎魔法を付与したようだ。

ヴァレンティノはそのまま俺に殴りかかってきた。炎魔法による身体能力と雷魔法の火力の強化で拳はかなり重い。俺はゼラさんから教わった体術と|身体強化(エンハンス)で対抗した。


「…時間稼ぎもいい加減にしてもらおうか。いい加減目を瞑るわけにもいかないな。」

「この姿になれば小僧、貴様は終わりだ!!」

「俺の|盗賊(バンディット)スキルの条件は認識すること。特に人間の五感による知覚は視覚が八割なために、より強力で確実に対象から盗むことができる。そしてこの眼を使えば、あらゆる事象を視認できる。」

「何が言いたいんだ」

「つまり、この眼を使えば分子レベルでも視認できる。酸素を視認すれば、炎も電気も燃えることはできない!|賢哲の狂盗(スニークヴォール)!」

|盗賊(バンディット)スキルで手首と首の数珠の雷魔法と炎魔法の酸素を奪って消した。

「なんだと…貴様ぁあ!」

ヴァレンティノはすべての魔力を身体強化に回して純粋な体術戦に切り替えた。

身体強化魔法のおかげも俺の方がありかなり優勢だ。


俺は蹴りをやつの顔面に入れて吹っ飛んだ先に転移して背中に拳を当てた。

「この眼のこと、忘れたか?お前の神経に流れる電気信号を視認すれば、未来を読むが如く戦闘することできる。魔力を少しでも数珠を媒介にした防御に徹したらそんなことなかったかもしれなかったのに。」

「そ、そんな…。 」

「終わりだ。黙って死しな。」

インベントリから剣を取り出してヤツの背中を貫いた。


俺はヴァレンティノの体を静かに地面に倒して先に進んだ。

「貴様…!このまま終わると思うなよ!!!仙法闇魔法!|死霊球思念鎖(マラズグレイブ)!!」

致命傷を負ったヴァレンティノが自分の残りの全ての魔力と自分の命を使って、俺のインベントリに入っていた数珠の球に魔法をかけた。

「なんだ…?!」

球が複製してになり、インベントリから無理やり出てきた。一つの球がいくつにも増えて一本の数珠になって俺の腕の付け根に強く絡みついた。

「がぁぁあ!!」

締め付けが強すぎてすぐに腕が赤くなり感覚がなくなった。

「お前!これを解きやがr…」

振り向いてヴァレンティノを見るともう死んでいることが分かった。

右目の|神律眼(しんりつがん)で腕を見ると、数珠には闇魔法で継続的に魔力を吸い取り、腕の方に毒のような魔法を出していることが分かった。

「そのままにしておくと闇魔法で魔力を取られ続けて魔力出力を大幅に下がる。数珠を壊して解けば腕にある毒魔法が俺の体を蝕む…。やむを得ない!」

俺はヘイムダルの神斧、ブルートガングをインベントリから取り出して腕を切った。切り落とした腕はチリのようになって消えてしまった。


「上等だよ。腕一本で全部壊してやんよ!!」

結界の前に高速で移動して、ブルートガングでそのまま結界を壊し先に進んだ。

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