第15話 深い絶望
転移した俺は一瞬で真っ白でローマのコロッセオのような神秘的な神殿に着いた。
そこには大きな戦斧を持った屈強な大男がいた。
「ここはなんのようだ吉川小次郎。冥界になら送ってやれる。」
「あんたがヘイムダルだな。ならわかるだろ、俺の計画のことも」
「もちろん知っている。私にはすべてを見通せる。小石の下の虫すら見ているのだからな。」
「だったら俺の要求をおとなしく聞いてくれないか?」
「私の片目をあげることはできない。おとなしく帰れ。」
見た目通り頑固な奴だ。まぁ、目をくれって言って素直に渡すやつの方が少ないか。
「じゃあ、戦って奪うしかないか。」
「挑戦を受けよう、少年よ。」
双方ともに剣と斧を構えた。
「|魔術複製(コーピア)!|焦炎之樋(スパークエッジ)」
魔法で刀身に炎を纏わせた。
「それが古式魔法、魔法複製術式か。自分の使える魔法のみ複製して2つにすることができる上位魔法。それで盗んだ魔法を保存して複製し発動することで半永久的にも他者の魔法を使える。」
「ご名答。全部見てたから正解して当然か!」
俺はヘイムダルに剣をふるって斬撃を飛ばした。
「こんな塵芥のまがい物など私に効かぬわ!」
飛ばした炎の斬撃を簡単に剣で払ってのけてしまった。
だが剣で払った時に派手な爆破と煙を上げた。
「こんなもの私の体には効かなぬことくらい…」
俺は後ろから転移して炎の剣で切りかかった。だが、ヘイムダルは斧で素早く剣の炎ごと振りはなった。かなりのダメージが胸部に入ってしまった。ノの字の大きな切り傷が胸に入った。
俺は傷口を小さな|魔虫蜘蛛(まちゅうぐも)から盗んだ簡単な糸の魔法で縫った。
「それがお前の、魔法まで切れるっていう神斧ブルートガングか。」
「少しは学があるようだな。なら私への不意打ちも効かないことくらいわかるだろう?」
「あぁ。試したかっただけだ!|大海天突き(ディルピオショット)!」
剣先に魔法で水を複製して一点に貯め、一気に大きな圧力で放ちヘイムダルに撃った。
「無駄だ!物理攻撃であろうが魔法攻撃であろうが通じはしない。そろそろこっちからも行くぞ!」
大きく上から下に斧を振り下ろした。俺は斬撃に構えて剣を防御の態勢に入った。
だが、なぜだが斬撃は背中に刻まれた。俺の背中から大量の血液が出てくるのを感じる。
「こ、これは…お前の能力か」
「惜しい、50点だ。これは戦斧と私の能力の複合だ。そしてこれがその二つの応用だよ。」
なにもない空間をヘイムダルは切り始めた。すると俺の持っていた魔法が消されていった。保存していたはずの魔法や武具がインベントリから消えているのリングで確認した。
「お前…やってくれたな。インベントリが綺麗に切った形だけ項目なくなってんですけど」
「ハッハッハッ!!さあ!始めようじゃないか!!武の真骨頂を!」
転移で一瞬で目の前に現れ光り輝く大きく斧で切りかかった。剣で必死に防御したが大きく深い傷が入り、さらに剣が真っ二つになってしまった。意識が遠のき時間がゆっくり進みながら、斧で切られた衝撃で吹っ飛んでいる。
「ダメだなこりゃ…。」
目の前が暗くなり絶望が深くなっていく。神の絶対的で圧倒的な力の片鱗を前に俺は、成す術もなく攻められている。終わりだ。最初からこのプランは破綻していたのかもしれない、。下に目をやるとたくさんの自分の血が見える。出血多量で死ぬか、それとも斧の攻撃で死ぬかだ。
「小僧、もう終わりか?残念だな。」
「あぁ。俺もだよ。」
少し黙り視界が暗くなったとき、なぜか初めて俺に驚いた顔を見せた。
「おい嘘だろ、なぜあいつが…そういうことか…。」
「なんのことだ?黙って俺を逝かせてもくれないのか?」
来るときに聞いた派手な古式魔法の転移の音が聞こえた。
「|叉曼(しゃまん)!|険悪なる宵月(グリムノーチェ)!」
知ってるエルフの女の子に似た声とともに闇拘束魔法がヘイムダルを襲った。
「小次郎さんは、私が守ります!!絶対にッ!」
おどろおどろしかったはずのマーガレットは力強くて頼もしく見えた。
「…久しぶりだな。マーガレット、どうしてここに来れたんだ?」
「あの転移陣はムーニー家の先祖が大昔エーデルワイスの命で物語の人物たちのみ転移できるようにしていたのです!そしてあなたは登場人物のイエヒサ・シロキと同じ|盗賊(バンディット)スキル保持者だから、そして私は主人公エーデルワイスの子孫です!地下室に眠っていた石碑に物語の最初が書いてあったので試してみたら本当にそうでした、!」
「そうか、それは良かっt…ちょっと待ってくれ、盗賊って日本人だったのか!?」
「…二ホンチン?それはなんですか?」
「まぁいいや、後でじっくり話してくれ。今はとりあえずこれ治してもらえるか?」
彼女はうなずいて慌てて俺の体を治してくれた。驚くことに、数秒で元通りになった。
治った途端に例の大男が拘束を解いて起き上がった。
「なぜ来たマーガレット・アルテミラ。君には関係のないことだと思うが?」
「いえ、これは私の戦いでもあります!私は小次郎さんの仲間です!」
「なるほど、好きな男を命がけで守りたいってわけか。」
「ち、違います!変なこと言わないでください!!」
前のマーガレットが垣間見えた気がして、なぜだか少し嬉しかった。
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