第6話 公開処刑
「吉川くん、起きてくれ!おい!」
俺は早朝、早々にエドワードに叩き起され話をされた。
しばらく話をしたあと、クラス全員で集まり転移の件を国民に発表すると伝えて城下町の大広場にみんなで向かった。
国の重大発表なだけあって、前日に告げられたのにも関わらずかなりの人が集まっている。
舞台にエドワードが立ち、開会の挨拶を始めた。
「国民の皆様、良くぞお越しくださいました!ただいまより、ヴァルデンシア王国国王様より重大な発表をさせていただきます!」
「王国三銃士のエドワード様だ!」
「エドワード様ー!」
「近くだとやっぱすごい迫力だなぁ」
エドワードは国民の人気が高いようで、登場しただけでかなりの賑わいだ。
「これより国王ヴァルデンリッヒ・レオナルド・ドラゴンハート様がご壇上されます!」
王様がゆっくりと舞台に上がった。
「お、王様だ!」
「すげー、初めて見たぞ…!」
やはり権力は凄まじいようで、騒がしかった人々が一気に静まり返った。
「皆の者、良くぞ集まってくれた。さて、本題に入るが、1週間ほど前、我々王国はアルカナ教団協力の元、異世界からの数十名の転移に成功した!これにより、格段に兵力が上がることが大いに期待できるであろう!」
「マジかよ、すげぇな!」
「あぁ、転移召喚なんて何十年ぶりだ?」
「下手したら100年前とかだぞ…」
王の衝撃的な発表に、民衆は驚きが隠せない様子だ。
「これより、全員ではないが37名の転移者に壇上していただく!」
クラス全員で壇上に上がったが、俺の姿はない。ネネは必死に見渡して探したがやはりどこにもいない。
「こ、こんなに多いのか…!」
「しかもみんなとんでもない魔力量だぜ、兵隊じゃない俺でも分かる。特にあそこの2人すごいぜ」
民衆の1人が藤原とネネに指を指して言った。
「だが、残念な知らせがある。皆も既に知ってる者はいるだろうが、昨夜多種族による多数の貴族を襲うクーデターが起き、何人も死人や重傷者が出た。幸いにもここにいる|聖勇者(ホーリーブレイブ)の藤原力也殿たち王国兵が駆けつけたことにより最悪の事態は免れたが、その首謀者がこの転移者の中にいたのだ!」
「あの残虐に人を殺しまくったクーデターの首謀者が…転移者に?!」
「よそ者がふざけんじゃねえ!」
「そうだ!蛮族を率いてクーデターなんて愚かな行為だ!」
「あぁ、普通なら即刻死刑かもしれないぞ…。」
「それより、勇者様が転移されていたとは!」
「反乱も救っていただいたなんて、まさに救世主だ!」
藤原を称える声が避難する声より増していった。
「壇上していただこうか!反乱首謀者の愚かなる罪人にして、|盗賊(バンディット)の”吉川小次郎”!」
「ば、|盗賊(バンディット)?!史上最悪のスキルじゃねえか!」
「そんな者が転移に紛れていたとは…!」
俺は手錠と足枷を付けた状態で舞台の上に連れ出された。
壇上に上がるやいなや、数え切れないほどの罵声と共に小石を投げる者もいた。
「死で償え!愚か者め!」
「お前みたいなやつは呼んじゃいねえんだよ!」
「…こっちも呼ばれてねえよ」俺は小声で呟いた。
「厳正な裁判の結果、この者を巨人族の住む未開の地ヨトゥンヘイムに拘束状態で追放処分とする!」
王のこの言葉でより一層民衆が騒がしくなった。
「王様の慈悲に感謝しやがれ!」
「黙って今すぐ自害しろ!!」
「死ね!死んでアルカナ様に魂で償え!」
小石や食べ物を投げる者がより増えた。
「あのヨトゥンヘイムに拘束した状態で追放なんて即死確定だな!」
「ざまぁみろだ!己に課せられた死刑を噛み締めろ!」
「やめないかッ!王の前だぞ!不敬にも程がある!」
エドワードの一言で民衆の罵倒は止み、物を投げるのも止まったがまだかなりザワついている。
そのまま一時解散し、クラスや俺も一度戻った。
そして俺は手錠と足枷を付けられたまま兵士たちに城以上に大きな大樹まで馬車で連れられた。
「このバカでかい木はなんなんだ?」
「貴様!神聖樹ユグドラシルに無礼だぞ!!」
俺たちは大樹の周りの周回し、壁のような結界が張られたところの手前で降ろされた。
「これ以降は結界が張っているため我々は行けない。自分の足で向かうのだ。もし道を誤った場合、拘束具がお前の命を奪う。」
「逃げはしない。大人しくこのままヨトゥンヘイムに向かうさ。」
「おい吉川!待てよ!」
俺は兵を背に結界を通ろうとしたその時、知ってる声が俺を呼び止めた。
「藤原、お前ここまで炎魔法で飛んできたのか」
「お前自分が何をしたのかわかってるのか!たくさんの人を殺しておいて何のうのうと行こうとしてる!」
藤原は怒鳴って俺の胸ぐらを掴んだ。
藤原を押して本当のことを教える。
「お前こそ分かってない!あれを仮面舞踏会とでも思ったのか!!あれは貴族のクズたちの奴隷市場なんだぞ!囚われた奴隷を買ってたんだ!」
「そ、そんな…嘘だ!」
「俺は自分の魔法を使って自由にさせたんだ!!それなのにお前は自由になったはずの奴隷をまた奴隷に戻したんだ!!今頃罰として拷問を受けているかもしれない!お前のせいでな!」
「嘘だ!俺は信じないぞ!!!」
俺は呆れた。俺の言葉はこの正義感ぶった主人公気取りの奴には届かないのだ。
「嘘だと思うならネネに聞いたらどうだ?ちょうど猛スピードで来てるところだ」
強い魔力の反応と共にネネが風魔法で飛んできた。
「小次郎!なんで…私も同罪のはずなのに」
「実はネネの風魔法が王国側にバレてた。エドワードに今朝頼んで俺1人の犯行ってことにしてくれたんだ。ネネまで酷い目にあう必要は無い。」
ネネは酷く動揺し、藤原は衝撃を隠せずにいる。
「そ、そんな…本当に奴隷、俺は奴隷を…。ほ、本当なのか?ネネ」
「えぇ。私たちは子供をさらったヤツを追いかけて奴隷市場に着いたからみんなを解放しただけよ。」
「お前、ネネの言葉じゃないと信じないのか…。」
俺はまた呆れてしまった。
「小次郎、もう会えないの?」
ネネは悲しそうな目をしている。
「いや、とりあえず半年だ。半年後にあいつらの修行も一時終わる。その間に俺も必ず強くなる。」
俺は最善の結果になるように計画していた。
「そこでなんだが、ネネ。少し頼みごとがある。」
「なんでも言って!必ずやるわ!」
俺はネネに分かれる前に頼み事をした。
「じゃあ、もうそろそろ行くわ。頼んだぞ!」
「えぇ!じゃあね!」
ネネは手を振ってくれたが、藤原はずっと下を向き自分のしたことに絶望している。
2人を背に結界を越えた。案外なぜかすんなり入れた。
「こんな簡単に入れたら結界の意味無くないか。」
不思議に思っていたが、周りを見渡すと一面砂漠地帯が広がった。
「ここからずっと砂漠歩くのかよ…」
少し瞬きした瞬間、一瞬で180cmほどの長身の女が現れ喉元に剣を突き立てた。
「貴様!何者だ!我々の結界にどうやって入った!」
「落ち着け。俺は見ての通りこの状態だ。」
手を上げて手錠と足枷を見せた。
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