第3話 予言のせいで

俺たちはしばらく魔法を鍛錬しある程度洗練した状態にした上で戦争に備えることにした。


それにあたり、|使役者(テイマー)の塚田先生と|錬金術師(アルケミスト)の井ノ原練、|占い師(スターゲイザー)の庄司翠、|霊媒師(シャーマン)の篠原玲子、|鍛治職人(ブラックスミス)の梶大貴の5人は講師だった老人の寺で修行することにした。生産職スキルと使役スキルはあの老人の寺がこの国で最も強いらしくそこの周辺環境がかなり適しているようだ。寺は国境の山脈付近にあって戦争が起きてもすぐにいけるかららしい。



5人が寺に修行に向かう前に俺たちは一度王様の元に集まった。

「修行の前に転移者の皆様には伝えなければならないことが1つあります。」

エドワードの一言にみんな静まり返った。

「18年前、大魔歴4582年に大預言者シルヴァ・ミネルバ様が最期の予言をしたのです。彼女はこの世界で最も優れた預言者様で、戦争や大災害、この転移のことも予言されました。」

「その方はなんと予言されたのですか?」

「先生殿、よくぞ聞いてくださいました。今読み上げます。」

エドワードは兵士から古い紙を渡され、開いて大きな声で読み上げた。



「『これより数十年先の未来、盗賊が突如この地に現れ大きな混沌を呼ぶだろう。王は備えよ。兵は死に、かつてない災いが起きる。』」



冷たい空気になり、周囲がザワついた。

「メインスキル|盗賊(バンディット)は、というかほとんど全てのメインスキルは先天的なもので、『この地に現れ』という部分が”この王国で産まれる”と思われていた。まさか、転移者様にいるとは思わず転移させてしまったことをお詫びさせて欲しい。」


「…は?俺が、その混沌を呼ぶ者なのか?」

「その魔力量と潜在能力から見てそうだろう。この一件は国内のごく一部の人間しか知らない極秘事項だが、転移したことは既に噂が広まっている。予言のことはまだだろうが、時間の問題かもしれん。」

王様の頼りない一言で再び静まり返った。俺をみんながまたあの目を向ける。あの冷たい蔑むような目だ。



「…とりあえず先生方5人は|玄武(げんぶ)老師と一緒に|玄天寺(げんてんじ)に向かってください。」


クラス全員で5人を見送った。練と大貴が俺に大きな紙袋をくれた。小次郎、これやるよ。2人で徹夜で作った。ちゃんと32人分全員あるぞ」

中を開いて確認すると謎の小さな機械がたくさん入っていた。

「これはなんだ?まさか、」

「魔力を電気に変換する装置!これでスマホも充電できるなぁ!自分の魔力を注いで充電できる。許容量を超えない限りスマホが耐えられる電圧に変換してくれる。」

「ちょうどさっき充電切れたから助かるよ。まじで。」

「ネットは使えないけど、王様に頼んで城のてっぺんにアンテナを付けた。電波を受送信して通話はできるようになったはずだよ。」

「これでお前らとも話せるってことか?」

「そゆこと!範囲は大体この国全土ってとこかな」

クラスのみんな全員喜んでいる。


王様はなにがなんだかわからない顔をしている。

「あれがなんだかよく分からないが、そんなに遠くにいても話せるのか。す、すごいな。」


俺たちは5人に最後まで手を振って見送った。その場でエドワードがみんなに発表をした。

「今からみなさんは8人一班で講師が1人付き、計4班で訓練致します。私は吉川小次郎、澄田寧々、藤原力也、黄瀬悠里、平木真守、岸田怜央、大久保千結、八雲颯太の8人を担当しま。」

「げ、俺たちあいつらと同じ班かよ…。」

颯太はかなりガッカリした様子だ。


「各自、講師と合流して訓練場に向かうように!」


俺たちは訓練場に向かい、早速訓練を始めた。

「力也!俺とまだ戦ってなかったよな?やろうぜ!!殺し合いッ!」

「…まあいいけど、怪我すんなよ?」

「怪我してもチユがなんとかしてくれるから大丈夫だぞ。もしかして、怖いのかぁ?」

「冗談言うなよw いつでも来いッ!」

2人は剣を構えて戦い始めた。


エドワードが急に俺に立ち寄ってきた。

「吉川さん、今夜この城であなの処遇をどうするか決めるそうです。会議という建前にはなっていますが、実際のところはほとんど裁判です。あなたはあらぬ罪状で容疑をかけられているのです。」

「…で、俺も出席をしろと。分かりました。」


密かに気にかけていたネネは、エドワードとの会話に聞き耳を立てていた。

「黄瀬!ちょっとこっち来て!」

「えぇーん。今いいとこなんですけど、」

「どうせフジが勝つって!見て分からない?」

「いや分かんないよ?笑笑」

「いいから来て!」

ネネは黄瀬の耳を引っ張って無理やり一緒に隅に行った。

「痛いって!離せよ!、どうしたって言うんだ?」

ネネは盗み聞きした今夜の会議のことを話した。

「な、なんだって?!」

声を荒らげた黄瀬をネネが引っぱたいた。

「声が大きいって!私たち以外誰も知らないんだから…。」

「それで俺に何ができるんだよ、」

「あんたのスキルなら会議にこっそり侵入してもバレないでしょ??」

「なるほどな。任せとけ!気配のケの字も見せないぜッ!」


エドワードの話が終わって俺は颯太を呼び出した。

「おい颯太ー!」

「ん、どうした?」

「錬成の練習がてら、少し付き合ってくれ。試したいことがいくつかあってな。」

「なんだ?|盗賊(バンディット)スキルで気になることでもあるのか?」

日が暮れるまで俺たちの班は練習にあけくれた。

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