第2話 史上最悪のスキル

そんな目で見るなよ…。よく知るはずのやつまで俺を蔑むような目で見る。

きっと最初にエドワードが性格でスキルが決まるって言い出したからだろう。クラスのみんなも周りの兵士たちも俺を冷たい目で見る。


「と、とりあえず各自魔法を発動してみましょう」

各々がエドワードたち兵士に教えてもらいながら魔法を発動し始めた。だが、盗賊スキルを使う者がいないからか、俺には誰も着いてくれなかったため颯太たちに混ざって1人で練習を始めた。


「そこの小石を持っててくれ」

「おう。」

颯太は言われた通り小さな石を拾ってポケットにしまった。

「|狂盗(ヴォール)!」

インベントリに小石が表示され、その小石を手の平の上に移した。

「すげ笑 ガチで盗めてんじゃん笑笑」

「じゃあ俺が錬成した物ならどうだ?」

「やってみよう」

そういうと練が小刀を錬成を始めた。

「|錬成(アルケミー)!」

「|狂盗(ヴォール)!」

手元に練が錬成した小刀が来た。

「成功だな!どうやらナイフはちゃんと柄の部分で盗めるようだ。」

「お前それを確認するために刃物にしたのか?」

「まあな笑」

「リスク代でこの小刀は貰っていいか?」

「構わないよ」


その後もいくつか錬成しては盗んで、大きいものは今の魔力じゃ盗めないことが分かった。颯太と俺のレベルは1から4まで上がった。俺の魔力指数は変わらずずっと218だ。後から訓練場の兵士に聞いた話によると数字は先天的なもので余程のことじゃなきゃ変化しないらしい。


先生たちのグループは杖のついたスキンヘッドの老人が指導していた。

「先生殿はこちらのクギウサギを使役してもらえるかのう」

「なんだこの、うさぎ?」

老人が角が釘のようなウサギを出してきた。おそらくこの世界特有の小動物だろう。

「やってみるか、|操獣(ドミネート)!」

ウサギが突然意識を失い、起き上がって手を振り始めた。

「小難しい操作はまだ簡単には出来ないな。」

「上出来ですぞ?一発で使役したのですからのう。続いて、梅田玲子さんの|霊媒師(シャーマン)スキルでこのクギウサギの魂を…」

「あーはいはい。なんとなく分かりますんでやってみますね!」

老人の話を遮り、手をかざして魔法を発動した。

「|魂巫禰闇(スピリットミディアム)!」

うさぎから白い煙のようなものが出た。その煙が、玲子のかざした手の中に入りそのまま掴んだ。

「ちゃんとこの子の魂を私のインベントリに入れられました!」

「…わしがうさぎを仮死状態にさせてからにしようとしたのですがのう…若いのにさすがじゃな」

「あの、初めて会った時から分かったんですけどもしかしてかなりお年を召していらっしゃいます?魂の洗練度が桁違いです、。」

「ホッホッ!わしはもう|齢(よわい)数百年の老人じゃよ!笑」

玲子や先生たちは唖然としてしまった。


「悠里!真守!ちょっくらやり合わねえか?!」

スキルが|騎士(ナイト)だった岸田怜央は剣を構え2人に決闘を挑んだ。敵対心ではなく好奇心で誘ったのだ。

「良いぜ?実験に丁度いい。」

「えぇー。俺、|奇術師(トリックスター)なんだぜ?無理に決まってんだろ笑笑」

乗り気な平木真守とは違って黄瀬悠里は自信が無い様子だ。

「是非やってください。危ないようならお止め致しますし、ちょうど|回復師(ヒーラー)の大久保千結さんをどう試そうかと迷っていたところです。」

「さんせー!!やらなきゃウチずっと暇なんですけど笑」

「チユまでそんなぁ…。まあいっか!」


3人は他の人から離れた場所に行き、武器を取って構えた。

「まずは、行くぜ!真守!|流星の閃き(エターナルフラッシュ)!」

強い魔法の光を纏った剣を上から下に振り下ろし、斬撃を平木真守の方に飛ばした。真守も咄嗟に盾をかまえ斬撃を受け止める。

「来たな!|昇重防壁(ライザーシールド)!」

盾を縦方向に伸ばし光の斬撃を受け止めた。

「忘れてもらっちゃ困るぜ!」

岸田の後ろから黄瀬が小刀を持って迫る。岸田は振り向いて剣で防御した。

「自分の姿をずっと隠していやがったのか…!」

「お前それでも俺の攻撃当たってねえじゃん!!」


「素晴らしいです!おふたりとも初めての魔法でこの規模とは!」

エドワードの大きな声が訓練場に響き、クラスメイト全員が注目した。そこには藤原とネネがいた。

「ほんとはもっと派手にやりたいのですが、壁とか壊してしまいそうで笑」

「それなら心配ありません!この訓練場の壁は特殊な魔鉱石でできていてよほどの攻撃でなければ壊れたりはしません!」

「それじゃ僕も遠慮なくやらせていただきます!|烈化大斬剣(フレイムブレイド)!」

藤原は斬撃を飛ばし、それが壁に当たって一部の壁が破壊された。大きな穴が向こうの山まで見える。

「…すみません笑」

「こ、これは私の責任ですね笑」


「ウチ、この穴に向かって撃ってみますね」

ネネが一点放出の魔法を発動する。

「|風天突破(ウィンドストライク)!」

風の攻撃魔法穴に放ち、奥にあった山にポッカリ穴を開けた。

「これも…私の責任のようですね笑」

エドワードが苦し紛れの苦笑いをした。

「す、すみません笑」


俺たちはその後も小一時間ほど魔法を使った。結局ボロボロになった岸田と黄瀬と平木の3人は、大久保の回復魔法で全て元通りになった。そして俺たちはクラス全員、城の客室に向かいそこで寝泊まりした。さすがは王の城だけあってかなり豪華だ。



夜遅く、クラスメイトも全員が寝静まっている頃にエドワードは王様のところに行き報告をしていた。

「エドワードよ、転移者様たちはどのような様子だ?」

「恐ろしく強いスキルや高い魔力を持つ者ばかりです。特に|聖なる(ホーリー)スキルを持った2人は既に王国の重要な兵力と言えるでしょう。ですが…。」

「なんだね?」

「1人、|盗賊(バンディット)スキルを持つ者が…。」

「な、なんだと!?…例の大予言のではなかろうな?」

「可能性としては、十分に有り得ます。」

「まさか、ここ数十年現れなかったゆえ完全に想定外だった…。これは災害級の脅威だ!今すぐなんとかせねばいかん。」

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