俺だけ史上最悪の盗賊スキルでみんなから蔑まれたけど、最強になって丸ごと全部救ってやるよ

@Usuta96

第1話 教室ごと転移?!

今日もなんでもないような一日が始まる。


俺の名前は吉川小次郎(よしかわこじろう)。都内のとある高校に通う、あまり友達は多い方でもないし騒ぐ方でもない、いわゆる陰キャの部類の男子高校生である。


俺たちのクラスは全部で37人いる。5人の一軍陽キャと32人のその他不登校やガリ勉などの陰キャたち。


俺は普段から誰よりも早く学校に着き、椅子に座って大人しく寝る。余裕を持って登校することで遅刻して目立つリスクを無くせるためである。それに、たとえ忘れ物をしたとしても、余裕をもって登校すれば一度家に帰って持って来れる。


だいたい俺たちのような陰キャがまず学校に早く来る。俺の次に来たのは同じ陰キャの翁長千草(おながちぐさ)。次に来たのは、学級委員長でクラス1のしっかり者で陽キャグループリーダー格の藤原力也(ふじわらりきや)だ。


そして次に来たのは、陽キャグループの1人で学年1のマドンナ澄田寧々(すみだねね)。

幼稚園の時から家が近いふたりはずっとよく3人で遊んでいた。

彼女は元々俺と幼なじみで、古くから親しかった。もう1人の幼なじみの森谷帝樹(もりやたいじゅ)と3人で遊んでいたが、帝樹が中学で突然不登校になり学校になったせいで3人とも疎遠になってしまった。


「小次郎!あ!そ!ぼ!」

「うん!今行く!いってきまーす!!」

急いでボールを持って家から出る。

「ネネ、たいじゅは呼んでないの?」

「ま、まだ呼んでないよ」

「ネネはたいじゅと隣の家なのにいつも僕から誘うね!笑」

ネネは少し苦笑いした。

「ネネちゃん!小次郎!」

「塾帰り?今から遊ぼ!」

「うん!荷物おいてすぐ行くね!」


なぜか小さい頃のことを数年ぶりに思い出してしまった。懐かしい。


「おはよう!力也は今日も早いね」

「学級委員長だからね。みんなの手本にならなくっちゃ。」


いつものように寝ていたら、いつの間にかクラス全員が投稿していた。たが、いつものように帝樹は来ていないようだ。


「おはよ、小次郎。またずっと寝てたのか?」

「ん、今日は早いんだな。颯太。」

いつも遅刻ばかりの颯太が珍しく俺を起こしてくれた。彼も俺と同じ陰キャの類だ。


「はーい、お前ら。席に着け。」

チャイムと同時に担任の塚田役典先生が来た。塚田先生は少し厳しいところがあるが、ちゃんと差別しないタイプのいわゆる良い人だ。髭面で長髪でコワモテだがしっかりした大人で生徒からも先生からも信頼が厚い。


「特に連絡事項は無い。各自次の授業の…」

突然、連絡事項は無いはずなのに放送が入った。


《2年1組の皆さま。これより、転移を開始致します。》


放送が入ると、教室中の床と天井に大きな魔法陣が現れ、強く光り出した。クラスの37人全員が思わず目をつぶり、中にはあまりの眩しさによろめき膝を着いてしまう者もいた。



目を開けると目の前には玉座に王冠を被った王らしき老人が座っており、周りを見渡すと兵士が全員片膝を立ててしゃがんでいた。


「転移者様たちよ。よくぞお越しくださった。私はヴァルデンシア王国第15代国王、ヴァルデンリッヒ・レオナルド・ドラゴンハートだ。」


「王様?ですか?ここはどこなんです?」

塚田先生が前に立ち、聞いてくれた。

「ここはあなた達がいる世界とは別の世界『ルミナスワールド』。人々が魔力を宿し、魔法が全ての世界だ。この王国では、隣国の下劣で愚かな種族である魔神族と戦争をしている。はっきり言うと、数年前に起きた大災害のせいで大きな戦力差があり、このままでは人間族は滅んでしまう。そこであなた方を転移させ、戦っていただきたい。どうか、この国と人間たちを救ってください。」

「無理を言うな!王だかなんだか知らんが、うちの大事な生徒たちに戦争なんてさせない!第一、なぜ17歳の高校生になにができる!」

「この世界の人間よりそちらの世界の人間の方が、魔力指数は圧倒的に高い。そして、15歳から17歳の時に転移させると大きな成長が見込めるのだ。そう言われるのも無理は無い。先生殿、そこをどうか…どうか我々に救済を!」


「先生!困ってる人は助けるべきです!この人たちは私たちがいなければ、全員死んでしまうんですよ?俺たちがやるべきです!」

正義感の強い藤原が塚田先生に抗議した。

「ダメだ!俺たちを帰してもう一度転移すればいいだけの話だ!」

突然のことで、塚田先生はかなりピリついている。

「あなた方を転移させるために、この国の魔力を持った人々がたくさん犠牲になったのです…。もう2回目はありません…。」

「やりましょう先生!なぁ!みんな!!」

「「お、おー!!」」

陽キャたちはみんな藤原に応えた。

「そういっていただき、本当に感謝致す…!」

塚田先生は生徒たちのあまりに輝かしい目に黙り込んでしまった。



俺たちはみんな、城の地下の訓練場に連れられた。奥の扉から大柄の兵士が現れた。

「私は王国三銃士の1人、エドワード・レインです。転移者の皆様には1人1つロータスリングというものを差し上げます。これをはめるとあらゆる言語がニホンゴに翻訳され、スタータスや魔力残量、バイタル、レベルやスキルなどを確認できます。」

俺たちは小さなリングをはめた。

「この国でニホンゴを話せるのは私と王様2人だけなので助かります。メインスキルを確認してください。強く念じると簡単に視界に表示されます。メインスキルは本人の性格などから決まり、魔法の強さのほとんどはこれと魔力の大きさで決まります。レベルに関しては全員1からスタートですが、魔力指数は別です。魔力残量は現在の魔力の残りであり、魔力指数はどこまで魔力が入れるかを数値化したものです。一般的な兵士は100程度でしょう。」


各自、メインスキルを表示し確認していった。真っ先に確認したのは颯太だった。


《名前》|八雲颯太(やくもふうた)

《メインスキル》|狙撃手(スナイパー)

《レベル》1 《バイタル》正常

《魔力残量》100%《魔力指数》285


「お?俺|狙撃手(スナイパー)だ笑 練はなんだった?」


《名前》|井ノ原練(いのはられん)

《メインスキル》|錬金術師(アルケミスト)

《レベル》1《バイタル》正常

《魔力残量》100%《魔力指数》250


「俺、|錬金術師(アルケミスト)だわ…なにができるんだ?」

「|錬金術師(アルケミスト)は武器や防具、アクセサリーなどを作ることが出来るスキルです。狙撃手は遠距離攻撃が得意なスキルです。お2人とも使える人は比較的多い方ですが、強い方はかなり強いですね。魔力はかなり高いので今後かなり強くなるでしょうが、みなさん倍以上はあるようですね」

「「おー!」」


「私、|占い師(スターゲイザー)だったんですけど…。」

「翠はいいなあ。私|霊媒師(シャーマン)だったんだけど笑笑」

「篠原玲子さんは珍しいスキルですね。この国でも使える人はかなり少ないですよ?お2人とも戦闘向きではありませんが、上手く使えばかなり強いでしょう。」


陽キャたちが騒ぎ始めた。

「げ、真守|守護者(ガーディアン)じゃん!さすがアメフト部都内No.1だな!笑」

「そういう怜央は|騎士(ナイト)じゃねえか」

「|騎士(ナイト)はこの王国兵士のほとんどが使っているスキルですが、他のどのスキルよりも派生が多いスキルです。このクラスでもかなり多いようですが、怜央さんほど高い魔力指数の方はいませんね…。」


「へー、チユはなんだったんだ?」

「ウチ、|回復師(ヒーラー)なんですけど笑笑 力也とネネはなんだった??」


藤原とネネの2人のメインスキルを聞いたエドワードはとても驚愕していた。

「|聖勇者(ホーリーブレイブ)と|聖人(ホーリーセイント)ですと!まさか聖なるスキルが2人も出るとは!」

「それはなんですか、?」

「『|聖(ホーリー)』がつくメインスキルは魔王にも対抗できうる強力なスキルなのです!この国ではもちろん、世界でも1人しかおりません!」

「いいなぁお前らは。俺なんか|奇術師(トリックスター)だぜ?」

「なんだそれwww 奇術師てww」

みんな|奇術師(トリックスター)だった黄瀬悠里を笑った。


「先生殿はなんですか?」

「…|使役者(テイマー)だ。教師失格だな…。」

「|使役者(テイマー)は獣や武器を自由に使役することが出来るかなり強い役職ですね。おめでとうございます。」



「小次郎はなんだった?」

颯太に聞かれた俺は、自分のスキルを表示し確認してみた。


《名前》|吉川小次郎(よしかわこじろう)

《メインスキル》|盗賊(バンディット)

《レベル》1《バイタル》正常

《魔力残量》100%《魔力指数》285


「|盗賊(バンディット)?って書いてある」

それを聞いて、周りの兵士はザワついた。

「…小次郎さんのメインスキル|盗賊(バンビット)は正直この世界では、かなり虐げられてきたスキルです。下民の一部の人間が少ない確率で発現すると聞きます。歴史上数多くの国家反逆並みの大犯罪者の多くはその|盗賊(バンディット)を所持しています。転移者様でなければ即刻追放ものです。」


いきなり大ハズレのメインスキルを当ててしまった。周りの冷たい視線が刺さるように痛い。

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