第23話




色々ありつつも日が経った。

僕は宣言通り『陽葵』として過ごす内に少しずつ記憶を取り戻していった。


まず思い出したのは幼馴染みの『カナ』の事だった。

真利愛さんにも確認は取れたので間違いない。


手嶌てしま 楓奏かなで』という名前の少女。僕の幼馴染みで昔将来を誓い合った仲だった。


きっかけは恐らく弟であり妹である彼女の事を『かな』と呼び始めた事だと思う。


そしてある夜彼女から胸の傷を触れられた際、心臓移植を受けた時の事も思い出した。

『カナ』の事と心臓移植の事を思い出して記憶が繋がって事故についても思い出した。


そして『志村 陽葵』に戻ってから一週間が経った始業式であるその日。

僕は忘れていた事の全てを思い出した。


朝起きて、真利愛さんと向き合って自然と流れてきた涙を拭いながら言った。


「おはよう。忘れてた事全部思い出したよ」


その一言を聞いた真利愛さん──、ううん、それはもう違う。

″お母さん″ はそう言って泣きながら僕を抱き締めてくれた。


「そう、おかえり。陽葵」


「うん、ただいま。お母さん」


4月9日。


その日、15歳になった僕は本当の意味で母との再会を果たした。




>


いよいよ、登校日が来てしまった。


今日はあんなことがあって以来久しぶりの登校だ。


私は男子生徒の中で生活しなければならなくて窮屈だけど、それでも陽葵が居てくれるしなんとかなる気がした。


「──あれ?」


「かな?どうかした?」


「いや、前に通ってた時より不良っぽい人が減ってる気がする」


「前は不良が多かったの?」


「少なくともこんなに黒い髪の生徒居なかったよ。ほとんどが髪染めているような感じだった」


「へー、じゃあかなはより一層目立っちゃうかもね」


「確かに。髪染めろとか言われたら困るなあ……」


行き交う同年代の生徒達を眺めながら、私達は学校へ向かっていた。


陽葵の言う通り、肩に掛かるくらいの長さの白い髪に詰襟の学生服を着て歩く私は結構目立ってしまっているようで、自然と通学する生徒達の目を集めてしまっていた。


学校に着き、クラス表を眺める生徒の群れを横切って、陽葵を連れて職員室に来た。そこには私が知っている先生は一人も居なくて、新しい先生ばかりだった。


「君達、新入生かね?新入生は明日の入学式に参加した後からこの学校に通うことになるんだが……」


職員室を覗いていると、後ろから突然男性教師に声を掛けられ驚いた。


「いえ、私達は一昨年度に入学したんですけど諸事情でほとんど不登校だったんです。やっとの思いで登校することを決めて、今日登校して来たんですけど……」


「あー、そういえば。そんな話を聞いていた気もします。生徒名簿を確認してくるので少し待っててもらってもいいですか」


「はい、よろしくお願いします」


そう言って私達二人を応接室に通してくれてから男性教師は職員室へ戻っていった。


なんだか柔らかい教師だった。

他の教師達もこんな感じなのだろうか。


本当に色々と変わってしまっている。


「あの時もたった半年しか通ってなかったけど、全然雰囲気が違い過ぎてビックリだよ」


「そんなに違うんだ」


「うん、別の学校に来たみたい」


感慨に耽っていると、先ほどの男性教師が戻ってきた。


「お待たせしました。確認出来ました。志村 陽葵さんと志村 彼方さんですね」


「はい、そうです」


「他の生徒達は始業式に参加するのですが、お二人はこのままこの場でこの学校についての説明会をさせていただきましょう」


それから男性教師が一人の女性教師を連れて来た。


まず学校自体の説明から始まり、昨年秋に学校の改革が成されて学校の仕組みが丸ごと変わったことなんかを説明された。


次にカリキュラムの説明。

しっかりと細かく時間割が決められていて、びっしりと授業が詰め込まれている。一般教科から保体の授業、芸術系の教科なんかもある。


校則についても厳しく定められていて、髪色はもちろんのこと髪の長さにも決まりがあって、伸ばし過ぎている場合は指導が入り数日の内に切ってくるように言われる。ちなみに切らなければしつこく指導が入るそうだ。


校則の話を聞いた私は自分の事情を話しつつ質問をしていった。


過去のストレスが原因で白髪しか生えなくなっていること。身体的には既に女子だけど戸籍上は男性であること。


新しく改革が行われ、現代の考え方に寄り添うようになったらしいこの学校は、私みたいなのの受け入れも考えているらしく、男女の如何に関わらず校則の範囲内であれば特に問題は無いそうだった。


ただし、特例措置なので条件の規定は設けられてしまう。

優秀な成績を修めることだったり、きちんとした生活態度を守ることだったり。

少し納得がいかなかったが、陽葵はそれに頷き不満そうな私を「認めてもらえるだけいいんじゃない?」と注意した。


陽葵の言う通りだった。


私の白髪については地毛なのだから仕方がない、と認めてくれた。ただ目立つからあまり長く伸ばさない方がいいかも、と補足された。


一時間が経ち良い頃合いだったようでその辺で話は終わった。


「私があなた達の担任を務めます。宮下と申します」


最後に女性教師に自己紹介をされてから、案内されるまま私達は教室へ向かった。


「ええ、皆さん。事情があってこれまで学校に来れなかった子がこのクラスで皆さんと一緒に生活を送ることになりました。──さ、入って」


声を掛けられた私達は教室の扉を開いて中に入った。


教室の中にいたクラスメイト達は私達の姿を見て唖然とした。そしてその顔は次第に戸惑いへと変わり、コソコソと声が聞こえてきた。


私は彼らの顔を知っている。奇異な物を見た時の顔、私を蔑む顔だと感じてしまった。

そうしてあの時の光景が頭の中に蘇り、身体が震え出した。


分かり切っていた事だった。

学校が認めてくれたからと言ってそこに在籍する生徒達が認めてくれるとは限らない。


私はクラスメイトの方に顔を向けられなかった。


「志村 陽葵です。一昨年度から籍だけは置いていたのですが、今日初めて中学校に来ました。分からないことだらけですが色々と教えてくれたら嬉しいです」


陽葵は堂々と自己紹介をした。

それに習うように私も教室中のクラスメイトの顔を眺めながら、自己紹介をしようとして──。


「わ、私は……、志村 彼方です」


震えが止まらず、上擦った声しか出なかった。

色々と言いたいことはあったはずなのに、名乗ることしか出来なかった。


「はい、二人ともありがとう。席は一番後ろに用意してあるからそこに座ってね」


私は俯いたまま席に着き、授業に参加した。


何度かクラスメイトに話し掛けられたけど、何を言われるのか考えてしまって怖くて、何も返答出来ず無視してしまった。


──きっと嫌な印象与えちゃっただろうな。


その日、私に話し掛けてくる人は居なかった。




帰り道、とぼとぼと歩きながら考える。


陽葵はすごい。

他者の目なんて気にすることなく自分を貫けるところだったり、それを何の気無しにやっているところだったり。


「ひなはすごいよ。堂々としててさ」


「僕はほら、今まで通ってなかったし学校ってものにトラウマとかそういうのは無いから。多分それだけのことだよ」


「だとしてもすごいよ。知らない人間のいる場所に躊躇も緊張もせずに入っていけちゃうところがさ」


私は誰かの目ばかりを気にして、それを怖がり逃げることばかりをしている。

今までもそうだった。


父親から逃げた。施設の子供達から逃げた。ダイレの痛みから逃げた。青年達から逃げた。学校から逃げた。施設長から逃げた。


逃げ続けた私には何も残っていない。逃げ続けてきた結果がこれなのだから。

自分のことが酷く惨めに思える。


昔はこんなんじゃなかったのにな。




人間というものは困ったもので、少しマイナスな思考を持つだけで周囲の全てが敵に回ってしまったように感じてしまう。


教室に入って、知らない誰かと目が合った。

ただそれだけのことなのに不信感を覚えてしまい、つい睨み返してしまい相手を怯えさせてしまった。


男子達が私を見てコソコソと話をしている。悪口を言われているのではないかと被害妄想をしてしまった。


声を掛けられて、話に混ざっても相手の言葉の裏ばかり考えてしまって会話が長く続かなかった。


翌日、登校再開三日目。

陽葵に支えられつつ情緒不安定のまま登校した私は彼を経由してクラスメイト達と話した。

陽葵の言葉だったら変に色々考えなくてもすんなりと聞けるからだった。


私はボソボソと小声で返すことしか出来なかったけど、クラスメイトはそれでも満足だったようで私との会話を楽しんでいるようだった。


私も少しずつ打ち解けた、と思う。


本当に陽葵がいてくれてよかった。



登校再開四日目。


保体の授業が行われた際、『男子は体育、女子は保健』と言った形で授業が分かれた。

私は男子生徒としてこの学校に通っているため、男子達と一緒に授業を受けた。


「志村ってさ、男なんだな」


一人の男子がそんな風に声を掛けてきた。

自己紹介では話していなかったので、この体育の授業に私がいることに戸惑っている様子だった。


「だからなに?」


陽葵が真っ向から男子の相手をした。

私は陽葵の後ろに隠れることしか出来ない。

本当に情けない。


「いや、ごめん。だからどうってわけじゃないんだ。ただその、驚いただけで」


「そうなんだ。ならこっちこそ謝らなきゃ。こういう事は最初から説明しておくべきだったよね」


そう言って陽葵は私の事情を男子に話し始めた。


「──ってわけ。だから言わば僕達は『兄弟』で『兄妹』なんだ」


陽葵がそう話を締め括った頃には気づけば他の男子達全員も話しを聞いていたようで、私達は質問攻めに遭った。

私についての話には体育教師も興味津々の様子だった。


流石男子と言うべきか、私の身体の話になると目の色を変えて話を聞いていた。


話を聞いた男子達は私に視線を向けると上から下まで舐め回すように見つめて、最終的には股の辺りをじっと見られた。

私は両手で股を隠しながら慌てて陽葵の後ろに隠れて視線を回避した。


──セクハラで訴えてやろうか。


ただでさえ、話すだけで一苦労なのに、彼らのテンションに当てられて余計疲れてしまった。


その日の体育の授業はほとんど身体を動かすことなく終わった。


教室に戻ると今度は女子達に詰め寄られた。

陽葵は同様の説明と謝罪をしつつ彼女らの質問に答えていった。


話を聞いた女子達は私の方を向くと、ニヤリと笑った。

二人の女子に左右の腕を捕まれ、他の女子達に押されながら女子更衣室に連行された。


私は必死に陽葵の方に手を伸ばした。けれど陽葵は困ったような顔を浮かべて私に手を振るだけで助けてはくれなかった。


「本当に女の身体してるのかな」


「ちょっと見てみてもいい?いいよね?」


「ちょっと、そこは……」


私は女子に言われるがままされるがまま抵抗も出来ず制服も下着も脱がされ陰部の状態を見られてしまった。


「んっ、待って。そこはダメ……っ」


人工膣内をイジられて少し感じてしまい変な声が出てしまった。

自分の顔が熱くなるのを感じて静止を促した。


「……ちゃんと感じるんだ。すごい」


「これで男なんて信じられないわ」


「ふんふん。やっぱり少し違うけど、ちゃんと女の子の身体ね。胸はほとんど無いけど、くびれもあって筋肉質な感じもなくてスラッとしてるし。っていうか寧ろこれスタイルいいまである」


「…………、もう、いいかな」


そう言って私は群がる彼女達を振り切って起き上がり制服を着直した。

着替えている間、彼女達は私の身体の話題で盛り上がっているようだった。


着替え終わり、彼女達の元へ行くと一人の女子が前に出てきて私の両肩に手を置いた。


「志村さんはもっと自信を持っていいと思う。あなたはちゃんと女の子になれてるよ」


本物を持っている彼女からそんなことを言われてしまって、いつもなら嬉しいはずの言葉も素直に受け取れなかった。

彼女の言葉の裏を考えてしまって、勝手に心が落ち込んだ。


「──そんなわけない。どうせ私は、偽物だから」


それだけ言って逃げるようにして更衣室を飛び出した。

教室に戻り荷物をまとめるとすぐに教室を飛びした。


途中、廊下ですれ違った陽葵に事情を聞かれたけど、うまく答えられなくて「私、先に帰るから」とだけ言い残して私は学校を早退した。


女子達ともすれ違ったけど、私は何も言えずにそのまま学校を後にした。




家に帰ってきてすぐに部屋に入り、ベッドに突っ伏した。

何もする気が起きず、枕に顔を埋めていると次第に涙が溢れてきた。声を出して泣きじゃくって、枕をびしょびしょにした。


幼い頃、女の子に憧れた。

そしてある時何も知らないまま無理矢理身体を弄られて女の子になった。

女の子でいるために苦労してきた。けれど、どれだけやっても女の子として扱ってもらえなかった。

本物の女の子にきっと女の子になれるから自信を持てと言われた。


嬉しいはずのその言葉が、とても心に刺さった。

その言葉で私は自分が男であることを再認識させられた。


「なりたいんじゃないだよ。私は最初から女の子でいたかったんだよ」


私の口から不満が溢れ出す。


「最初から女の子だったら手術してあんな苦労しなくてもよかった。膣拡張なんてする必要も無くて、男性に身体を売るようなことしなくてよかった。あんないじめを受けることも無かった。詰襟の制服なんか着なくてよかった。きっとこんな悔しい思いをすることも無かった!」


過去を振り返り、恨みつらみの言葉がどんどん溢れてきた。


「なんで私は男に生まれてきたの。どうして女じゃダメだったの」


女で生まれることが出来なかった。

周囲に支えられながらも男として生きてきて、けれどある時そんな私が中途半端に女みたいな身体になって、けれど結局男してしか生きることが出来なくて。


大変なことばかりが残って、欲しかったものは手に入らない。

私が何をどうしたってあと数年は男として生きていかなければいけない。

あと数年は周囲からの腫れ物に触れるような扱いを受けて、気遣われた挙句こうした悩みに悩まされながら生きなければならないのかもしれない。


そう考えると生きる事自体が辛いものに思えてしまう。

生きる事を投げ出してしまいそうになる。


夕刻になり、帰宅した陽葵に話を聞いてもらって慰めてもらって。陽葵はまーさんに連絡を取ってくれて、慌てた様子で帰ってきたまーさんにも話をした。


まーさんは私の通学に対してもう少し様子を見るべきだったと後悔して、一先ず明日からの方針として陽葵だけを通学させて私には昼間はこの家で独りで生活するように言った。


翌日まーさんは学校の状況を知るためにと陽葵一緒に学校に行った。その間私は独りでベッドから動けず過ごした。


陽葵と出会ってから今まで、この家で彼が傍にいないことはほとんど無かった。

いつも傍にいてくれて、話を聴いてくれた。私が文句ばっかり言っても嫌な顔一つせずに聞いてくれた。


彼がいないというだけで、また私は何で自分は、と自分を追い込んでしまう。後悔ばかりしてしまう。

自分の全てを否定して、逃げ出したくなる。

生きるのが嫌になって死にたくなる。


考えることに疲れて眠って、目を覚ましたらまた同じことを考えて苦しくなってまた眠って──。


翌日も、また翌日もそんな感じだった。


毎晩毎晩、布団を被って声にならない叫びを上げながら泣いて、陽葵がそんな私を慰めてくれた。




週末である日曜日。

目が覚めて、陽葵を起こして彼と話をした。


何度も何度も頭の中に思い浮かんでくる負の感情を捨てきれないこと。

独りになると考えなくていい事ばかり考えてしまい、辛いこと。


「ならやっぱり学校に行こうよ。無理にクラスメイトと接しようとなんてしなくてもいいから。男子達だって女子達だってかなの事情は知ってるし、受け入れてくれてる。だから変に色々考えて思い詰める必要なんてないよ」


「女子達はせっかく私を励まそうってしてくれたのに、私の勝手な被害妄想で迷惑掛けちゃった。どう接していいのか分かんないよ」


「そういう事なら無理に教室に通わなくても保健室登校でもいいと思うよ。とにかく家に篭って独りになるのがマズイんだったら学校には行こう?」


「……うん、分かった」


まーさんが家を訪ねてきて、三人で話をした。


「私、一人でこの家に居ると色んなこと考えて後悔ばかりしてまた生きるのが嫌になってまた変なこと考えちゃう。

だから私も学校に行くことにする。教室に通うのは難しいから保健室で授業受けるよ」


私はまーさんにそう言って、彼女は何度か「ほんとうにそれでいいの?」と確認を取った。

私はそれに頷きつつ震える手でまーさんの手を握った。


「……分かったわ。なら、一緒に学校まで行って私から先生達へお願いしてみるわね」


まーさんはそう言って私の手を強く握り返した。




翌日、陽葵の手を握って怯えながら学校へ向かった。


学校に辿り着くと真っ先に職員室へ寄って、陽葵が宮下先生と養護教諭の女性に声を掛けた。


応接室に通してもらい、私は彼女らに事情を話した。


言われることやされることの全てを否定的に捉えてしまうために教室に通うのが難しい事。

私自身の身体の話と女子達と会話から自分が男であることを意識させられてしまった事。

家に独りでいると精神的に追い詰められる事。


「以上の理由からこの子の保健室登校認めてあげて欲しいんです。……お願いします」


まーさんが頭を下げて、それを見て私と陽葵も頭を下げた。


「事情は分かりました。担任という立場からすれば、あなたと一緒に学校生活を送れないのは非常に残念ではあります。けれど、保健室登校という形ではあれど、あなたが登校してくれるだけでも私は嬉しいです。もし何かあればなんでも言ってくださいね。生徒に寄り添ってあげるのが教師の仕事ですから」


そう言って宮下先生は納得して保健室登校を認めてくれた。


陽葵とまーさんに手を振って別れた。


陽葵と離れることが怖くてなかなか手が離せなかったけど、戸惑う先生達を見たまーさんが私を宥めながらゆっくり陽葵の手から私の手を剥がした。


そして陽葵とまーさんは宮下先生と一緒に何処かへ行ってしまった。


私は一人取り残されてしまった。


登校再開から一週間たらずで、私は保健室登校をすることになった。




「私は養護教諭をしている帆南といいます。スクールカウンセラーも兼任しているから何かあれば何でも話してくれていいからね」


自己紹介してくれた帆南先生に案内してもらい、保健室に到着すると一人の女性がいた。


女性に何か頼んでから養護教諭の女性は私に椅子を勧めてくれた。


「この人は養護教諭助手の橘さんね」


「橘です。大学の実習で養護教諭助手をしております。よろしくお願いします」


橘さんに挨拶をして私は保健室の中にあった机に腰掛けた。


「彼方さんが休んでいる間に試験が行われていたんですよ。だから今日はその試験問題を解いてもらおうと思います」


そう言って五教科の問題用紙が渡された。


一時限分の時間で一教科の試験問題を解けばいいらしい。


私は休憩を挟まずに試験を受けて、二時限分の時間で五教科の試験を終わらせた。


「随分早く終わらせたみたいだけど、もういいの?」


「はい。ちゃんと全部解き終わったので大丈夫です」


「そう、分かったわ。じゃあ宮下先生に提出してくるわね」


「はい、お願いします」


「私が戻ってくるまで休憩してていいからね」


そう言われ私は保健室のベッドに横になる事にした。


ふとそういえば小学校に通っていた時も保健室登校していた時期があった事を思い出して、その頃の事を考えながらゆっくりと眠りに落ちていった。




──愛梨、元気にしてるかな。

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