第13話
私は自分の息子だと思って、陽葵を助けた。
けれど世話をする中で、そうじゃないことを知った。
そして私は居なくなった息子の代わりに愛でて育ててあげようと思って陽葵を引き取った。
今度こそ失敗しないように、と。
けどそれは間違いだった。彼女は自分が『誰かの代わり』として扱われていることが気に食わなかったらしく、いつしか彼女は私のことを『母』とは呼ばなくなっていた。
私は最初そのことにすら気づいていなかった。
次第に言うことだって聞いてくれなくなって、彼女の気持ちに気づいた時には全てが手遅れだった。
私は失敗を繰り返さないためにあの子を私個人の元には置かず、この児童養護施設に預けることにした。
私といるよりはその方がいいと思ったから。
あの子も最初は普通に女の子として児童達の中に溶け込んでいた。だから安心していた。
けれど、やっぱり身体の事で男子達と揉めてしまって、挙げ句の果てに私が紹介した男性と上手くいかなくなって、人との距離を置くようになっていった。
『ある程度距離があった方が気軽に接することが出来るから』とか言って。
そしたそこにトドメを指すように学校で酷い嫌がらせを受けて。
あの子は学校に行かなくなった。必要最低限でしか家から出なくなった。
男性のストレス発散に付き合って大怪我をして帰ってきた事だってあった。
私はあの子のためにどうするのが正解か分からなくて悩んだ。それは未だに答えは見つからないまま。
数日経って怪我が治ったからとまた性懲りも無く出掛けた陽葵を叱った。『考え無しも程々にしなさい』なんて言って怒鳴ってしまった。
喧嘩の末、『もうまーさんの話なんて聞きたくない!』と言い残して、彼女は家を飛び出して行った。
私は頭を抱えて反省した。
どうしてあんな言い方しか出来ないんだろうって。
悩んでいると、口も聞かないと言ったはずの陽葵から電話が掛かってきた。
出掛けた先にあった公衆電話から掛けてきているらしく、慌てた様子の彼女が『早く来て!』と焦らすものだから急いで駆けつけてみると、そこに意識を失った彼方が居た。
風当たりの良い場所を探して彼方を移動させた 陽葵を褒めながら私はどうしていいか迷ってあたふたと対処を考えた。
けど何もいい考えは浮かばず、結局車の中で応急処置をしてあげることしか出来なかった。そんな時、陽葵は頭を下げて言ってきた『この子を助けてあげて、死なせないで』って。
あの子は初めて私を頼ってくれた。
その後、彼方を助けられた事に安堵しつつ、母にあれこれ尋ねられて私は彼をどう扱うか悩んだ。
けどそんな時に陽葵が『だったらこの子もまーさんの子供にしようよ』って提案してくれて、息子にして入院させた。
今度こそは過去の失敗を繰り返さないためにってどう接するべきか悩んで考えてそればかりで結局彼方ともちゃんと話をすることもまともに出来なくて──。
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「私がそんな風に悩むだけの日々を過ごしている間、いつの間にかあなた達は互いが互いを想い合うような関係になっていた。あの陽葵が自ら自分の事情を話して、信頼して接する相手なんて他には居ないのよ。そのくらいあなたは陽葵に受け入れられてる。あなたを見てて思ったのよ。あの子はきっと誰かに傍に居て欲しかったのね、見守って欲しかったのね。自分を受け入れて欲しかったのね」
独白は終わり、真利愛さんは僕のことを抱き締めた。彼女の抱擁は、とても温かかった。
「……貴方の事を引き取って良かった。あの子とあなたが出会ってくれて、本当に良かった」
眠ってしまった真利愛さんを布団で寝かせてから家の事の続きをした。あと出来ることは何かないか。頭を悩ませている時だった。
「……ただいま」
「おかえり。早かったね」
陽葵が帰ってきた。いつもより一時間以上も早い帰宅だった。
見たところ今日はそんなに疲れた様子も無く、怪我だって見当たらなかった。
「今日はその、あんまり気が乗らなくて、軽い接触だけで終わったから」
「そうなんだ」
どうやら、いつもより簡素に事が終わったらしい。僕も経験があるわけじゃないし詳しいことは知らないから説明されてもよく分からない。
陽葵はいつも通り部屋に戻って着替えを済ませてからリビングへと戻ってくる。
「まーさん、来てたんだね」
眠る真利愛さんの横に腰掛けて優しい手つきで彼女の背中を撫でた。
「うん、真利愛さんと色々話したよ」
「そっか、なんて言ってた?」
「真利愛さん、最近のひなの様子を聞いてビックリしてた。『えっ……あの子が?』って」
「なんかその言い方、侵害だなあ」
話した内容を伝えて、間々でそんな風に冗談を言っては笑い合って、話の途中で陽葵は真利愛さんに寄り添って眠ってしまった。
僕もそんな二人に寄り添って横になった。
リビングで川の字になって、初めて三人で一緒に眠った。
翌朝、真利愛さんは鞄から二つの携帯電話を取り出して机の上に並べた。
「これはもしもの時のため、念のために用意したものよ。誰かとの電話以外の機能は制限が掛けてあるから。特に陽葵は余計なことには使わないこと。それが守れるなら渡すわ」
「絶対に守ります。みだりに電話番号を配ったりはしません。変なサイトに登録して男性に会ったりとか絶対しません。会った男性と連絡先の交換とか絶対しません。まーさんとかなの二人以外とは連絡を取りません」
「細かく約束され過ぎて逆に信憑性が無いわね」
「ええ、酷い……」
「まあやらないって言ってるんだからあげるけど。本当に変なことに使っちゃダメだからね」
「うん、分かったよ」
そんなこんなで緊急時の連絡手段として僕達は携帯電話をもらった。
古いタイプの物で本当に電話以外の機能にロックが掛かっていた。
数日が経ったある日のこと。
昼間に出掛けた陽葵がなかなか帰ってこない。
夕方を過ぎても心配で寝ずに待っていた。
夜になっても帰ってこなくて、そろそろ連絡を入れてみようと思った時にちょうど向こうから連絡が来た。
「……もしもし」
「ひな、こんな時間までなにして──」
「ごめん、かな。迎えに来てくれないかな」
「迎えにって、何かあったの?」
「実はさ、今日相手してくれた人にご飯に連れてかれて、しかもそこでお酒飲まされて酔って眠っちゃったの。起きたらホテルに連れ込まれてて媚薬まで盛られちゃってた」
「……その媚薬って?」
「うーん、何て説明したらいいかな。気持ち悪いんだけど、気持ちが良くなる薬でね、身体の自由が利かなくなるの」
「それ大丈夫なの」
「うーん、あんまり大丈夫じゃないかも」
「……分かった。とりあえずすぐに行くから少しだけ待ってて」
「ありがとう」
陽葵から場所を聞いて、指定されたホテルに向かった。
そこは高級そうなホテルだった。外装なんかは派手な装飾が施されたものでしっかりとしていた。
フロントで受付の女性に事情を話して部屋まで案内してもらった。
部屋に入るとバスローブに身を包んだままベッドで横になっている陽葵を見つけた。
「ひな、迎えに来たよ」
「……ありがとね、かな」
変に昂る気持ちを抑えながら、陽葵を着替えさせ、散乱していた荷物をまとめた。
彼女の言った通り本当に身体が上手く動かせないらしく、肩に手を回して一歩ずつゆっくりと歩いてその部屋を出た。
フロントの受付にいる女性に案内のお礼をしつつ、タクシーを呼んでもらった。
すぐにタクシーが到着して、ホテルを後にした。
車に乗り込んですぐに陽葵は僕の肩を枕にして眠ってしまった。
「君ら高校生かい?」
「は、はい」
突然タクシーの運転手に話し掛けられて焦って嘘を吐いてしまった。
「余計なお世話かもしれないが、こんな時間にこんな場所を女の子二人でうろつくもんじゃないよ。今どき何があるか分からないんだから気をつけないと」
「そうですね。妹にはぼ……、わたしの方から注意しておきます」
「お姉さんの方はしっかりしてるんだねえ」
「ははは、そうでもないですよ」
施設に辿り着いて、誰にも見つからないように家へと帰ってきた。
脚がおぼつかない陽葵をここまで連れてくるのも大変で、帰ってきて二人して玄関に倒れ込んだ。
久々の外出だったのもあってすごく疲れてしまった。
部屋まで運ぶのも辛くて、二人でリビングで寝転んだ。
「向こうが私を孕ませる気でやってたみたいでもう何から何まで激しくてね。暴力も振るってこなかったし、全体的に柔らかい人で、媚薬のせいか途中からは私も乗り気になっちゃって」
「……へえ、それは良かったね?」
「まあ、結局その人やるだけやって金だけ置いて私を放置して帰ってくようなクズなんだけどね」
まだお酒が残っているのか、陽葵は少し呂律が回らない様子でいつものように行為の詳細を話し始めた。
半分以上は何を言っているのか分からない。
「だいたい本当にまともな人だったら高校生相手にお酒飲ませてホテルに連れ込んだりしないよね。しかも媚薬とか最悪。私はそのつもりでご飯の誘いに乗ったんだし別に良かったんだけど、普通の女子高生にも同じ事してるんじゃないかって考えたら本当に無理」
「ほんと、ひなが酷い目に遭わなくて良かったよ」
「まあ、私は偽物だからね。どれだけ犯されても何があるわけじゃないし」
「もしそうだとしても、だよ。お酒飲まされて媚薬とかいうので感覚狂わされて、そのまま何処か連れて行かれて危ない目にあったりとか、そんな事になってたらどうしてたの」
「……そうだね。ごめん、もっと気をつけて行動しなきゃだよね」
酔い覚まし用に500mlのペットボトルに満杯の水を入れて渡した。
それを一気に飲み干してから彼女は物憂げな顔をした。
「本当の女の人がこんな事されたら大変なんだよね。無理矢理犯されて酷い目に遭って。妊娠に怯えながら生活して。産みたくもない人の子供を産んで。その事で人生を狂わされちゃって。子供を育てられる環境も無くて。そういって捨てられた子供達がこういう児童養護施設って場所に預けられちゃったりするんだ」
気分が落ち着いたのか、まだ酔っているのか。陽葵はそう言って世の女性達を憂慮した。
「私は偽物だから、そういう被害に遭った女の人の気持ちは分からないし、分かってあげられない。だからこそ私がしている事ってそういう暴行の被害に遭った女性への冒涜なんじゃないかって考えたりもするし、結局私は本当の女性にはなれないんだ、ってそんなことを考えたりもして落ち込んだりもする」
「……ならやっぱり、手術で女性の身体になっても結局は男性のままってこと?だったらひな も一生男性として生きるしかないってこと」
「性別ってものが『子供を産む』という機能面の話だけで決まるなら私は一生女性にはなれないかもね。だけど別に女性は子供を産むためだけに生きてるわけじゃないからさ。その機能がないからって悲観的になる必要も無いかなって私は思うよ。私達みたいなのでなくてもそういう風に生殖機能が無いまま産まれてきてしまって、それでも前向きに生きてる女性だって沢山いるっていうしね」
「そうなんだ」
「もちろん、理解してあげられる部分が普通の女性より少ないから女性同士の話の中で躓いちゃったりはするだろうけど」
「けど、理解出来なくても識ってあげることは出来る。一緒に考えて悩んであげることは出来る。そうだよね」
「そう!まさにそうだよ。だから『○○が出来ないから自分は女性じゃない』とか『女性はこうあるべきだから』とかって考え方を意識しすぎないで、かなは自分らしくなりたい自分になっていけばいいと私は思うよ」
陽葵は笑いながらそう言って僕を撫でながら励ましてくれた。
結論が出たところで、笑顔のまま眠る体勢に入った陽葵にストップを掛けた。
「いい話で誤魔化そうとしたところ悪いけど、今日の事は明日ちゃんと真利愛さんにも施設長さんにも報告するからね」
「……まあ、仕方ないよね」
陽葵は諦めた表情で溜め息を吐いた。
固定観念というのだろうか。
確かに色んな固定観念の中で僕らは生きていると思う。
『男性は髪を短めにするべき』、『力仕事は男性がするべき』、『女性を守るのは男性の役目』、『男性は精神的に強くなければならない』、『男性ならくよくよ悩むな』、『男性なら多少怪我をしても気にするな』、『男性は人に甘えてはならない』、『男性なら欲に正直であれ』
とまあ男性だけで考えても色々とあると思う。
日本人は特に何事も型に嵌めて考えてしまう節があるから、それに抗うような事をすると非難されてしまったりする。
せっかくいい話をしてくれたついでに僕は最近の悩みを話すことにした。
先日鏡で成長した自分の姿を見て身体の変化に戸惑ったことや毎日毎日ムダ毛の処理が大変であることだったり、夢精の頻度が増えてしまったこと。
身体の変化に対してせめて髪だけは切らずに伸ばしていることも話した。
流石に陽葵を見て変に意識してしまうことは言えなかったけど。
「さっき『なりたい自分になればいい』って言ってくれたけど、身体はそうはいかなくて、このままどんどん男性になっていって理想の自分とかけ離れていく。僕はそれが怖い」
相談している途中で気づいたら涙を流していたらしい。自分の膝の上にポトポト雫を垂らしながら話していた。
「ごめんね、私は男なのにかなの悩みを理解してあげられない。それが悔しいよ」
「ごめん、そんなつもりで言ったんじゃないんだ。ただ聞いて欲しかっただけで」
「ううん、謝らないでいいよ、これもさっきの話と一緒。理解してあげられないけど聞いてあげることは出来るし、どうやったら悩みを解消できるのか考えてあげることは出来るから」
「……ひな」
「だから何かあったら今日みたいになんでも相談してくれていいからね」
それだけ言って陽葵は眠ってしまった。
元々疲れた状態で帰ってきて寝させようとしてベッドに寝かせたはずだった。
それなのに長話をしてしまってなんだか申し訳なく思えた。
眠る陽葵の顔を少し眺めた後で僕は部屋を出た。
ホテルであんな姿の陽葵を見た後だからかすごく意識してしまった。もしまたくっついて寝たりしたら何をしてしまうか。考えただけで虫唾が走る。
記憶が無いはずなのにどうしてこう知らなくてもいいことは覚えているのか。
男でいる事が嫌なのに男みたいに欲情してしまう自分が嫌になる。
トイレに行き小便をするとついでに白い何かが混ざって出てきた。
その事に嫌悪感を覚えながら、リビングに布団を敷いてそこで眠った。
それから数日が経った。
しばらく一緒に寝れない日々が続いたある日、目を覚ますと目の前に陽葵の顔があった。
慌てて起き上がると自分の顔が彼女の顔へゴツンと音を立ててぶつかってしまった。
お互いに自分の顔を押さえて蹲った。
「……痛あ」
「ごめん、大丈夫?」
「大丈夫、大丈夫」
「でもひなも悪いんだよ。何で顔覗き込んでたの」
「ただかなの寝顔を見てただけだよ」
そんな一言を聞いて自分の顔が真っ赤に染まるのを感じた。顔が熱を持っているのが分かる。
「……な、なんでそんな事」
「最近朝起きると隣に居ないな、一緒に寝てないなって思って。リビングの方が寝心地いいの?」
「……まあ、そんな感じだよ」
「ふーん、そっか」
陽葵は納得してない様子で頷いた。
昼前になり、陽葵はいつもの用事で出掛けていった。
出る前に怪訝な顔をされてしまったけど、特に問題は無い。
少しして施設長さんが訪ねてきて身の回りのお世話をしてくれた。手伝いながら近況の話なんかをする。
「最近は陽葵さんと一緒に寝てないのね」
「はい、まあ」
「こういう事訊いちゃうとアレかもしれないけど、やっぱりそういう事色々考えちゃうのかしら?」
「…………………………、はい」
「そっか、難しいね。あの子があんなだから余計考えちゃって、追い込まれちゃうんだろうね」
「別にひなのせいってわけじゃなくて。これは僕の弱さだと思うんです」
「こう言われるのは嫌かもしれなけど。男の子だもの仕方ないわよ」
施設長さんは言葉を選びつつ落ち込む僕を励ましてくれた。
その気遣いが痛い。
お世話が終わって施設長さんが帰っていった。
勉強の続きをするため課題のプリントを引っ張り出して解き始めた。
問題を解く度、隣で教えてくれる陽葵を幻視してしまって、その度に自分の頬を叩いた。
自分の末期具合を悟った。
何も手がつかなくてリビングで横になっている内にそのまま眠ってしまったらしい。
目が覚めると夜になっていた。
隣で陽葵が寝ているのを見て慌てて起き上がった。今度は幻覚じゃない。
なるべく起こさないように動こうと思ったら腰に手が回されてしまい動くことが出来ない。
この状況は色々と不味い。
股間部のソレがいきり立つのを感じる。自分がこんなことで高揚してしまっているのが嫌だし、それに気づかれるのも嫌だった。
もう起こさないように、なんて言っていられなくて、寄り添う陽葵を無理矢理引き剥がしてトイレに逃げ込むべく走った。
立ったモノが引っ掛かって走り難くく感じた。
「……かな?」
唐突に起こされた陽葵は首を傾げながら僕の方を見ていた。
僕はトイレに駆け込むと便座に座り用をし終わってから股間のモノが縮んだ後でトイレを出た。
「どうしたの?お腹痛かった?」
陽葵が心配して声を掛けて来てくれた。
「うん。それに頭痛くて声もかすれちゃってるし風邪気味なのかも」
「大丈夫なの?キツいなら寝てていいよ。前のお返しってわけじゃないけど私看病するよ」
「もし風邪だったら
「借りるも何もそこは私達二人の部屋じゃん」
「まあ、そうだけど。じゃあ、おやすみ」
「あっ、うん。……おやすみ」
寂しそうな陽葵の顔を横目に僕は部屋に入ってベッドに腰掛けた。
何をしているんだろう。
避けたいわけじゃないのに、気恥ずかしさからか陽葵から逃げてしまった。
彼女にあんな顔をさせてしまった。
寝苦しさから目を覚ますと、身体が熱く感じた。
体温計を求めて部屋から出るとリビングで陽葵が眠っていた。
うっすらと涙の跡が見えてしまって、申し訳の無い気持ちになった。
体温計で熱を測ると38.7度あった。
口からでまかせを言ったつもりが本当に熱を出してしまったなんて笑えない。
冷蔵庫から氷枕を取り出してタオルを巻いて、薬箱から冷えピタを取り出して額に貼った。
冷たさが気持ちいい。
前頭部後頭部を共に冷やしながらベッドに横になった。
冷えて冴えた頭で最近の自分を振り返った。
抗えない男の情欲に釣られて振り回されてしまって情けなく陽葵を避けた。
出先から帰ってきて行為の解説をする彼女に対して自分がその男性達と同じ事をする光景を妄想してしまって死にたくなった。
元から綺麗だと思っていたその陽葵の顔立ちが以前よりも輝いて見えた。可愛い、綺麗だとそう言ってしまいたいけど、気恥しい気持ちから言えなかった。
そして今朝、目を覚ますとそんな顔に覗き込まれて頭をぶつけ合って大して痛くないはずなのに痛かった。
顔じゃなくて、心臓が痛かった。
この気持ちはなんなんだろう。
心は落ち着かないままに瞼が重くなってきた。
そして再び意識が途切れた。
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