第二章「最初に行くは島内の町」

第六羽「苦手な場所」

まもなく朝日がのぼろうとしている。

森の上まで来た私は、足でつかんでいるフェリテにたずねた。

「最初はどこへ行こうか」

「森の外にある大きな町!昨日見て気になったんだ」

フェリテは興奮した様子でそう言った。行きたくてワクワクしているのは明らかだ。

けれども私にとっては一番行きたくない場所だった。

「あー、あそこか……」

「どうしたの?」

「その、ハルピュイアのこと良く思ってないんだよね。あの町に住んでる人達」

正確には体の一部が何かしらのけものだからニンゲンとはちがうけど。

町に住む獣人じゅうじん達と私達ハルピュイアは特に仲が悪かった。いや、獣人達がとてつもなくハルピュイアを毛嫌けぎらいしていたと言うのが正しい。

食べ物をうばわれる一番の被害者ひがいしゃだからというのがその理由だと思われた。町の中、特に畑や果樹園の近くにはハルピュイア向けのワナも多いし。

「そっか……」

「……上から見るだけだったら良いよ」

ある程度町から距離きょりがあればトラブルは起こらないはずだ。

「ありがとう!」

笑顔になったのが声でわかる。

フェリテをがっかりさせたくない。そう思った私は覚悟かくごを決めて町へ向かった。

私は町にある街灯の上にフェリテを下ろした。

太陽が顔をのぞかせたばかりで、まだだれも外に出ていない。それでもフェリテにとっては新鮮しんせんな景色であるようで、かれは目をかがやかせていた。

私にとってこの町は行くのがこわいところだから、ワクワクすることができるフェリテがちょっとうらやましい。

こうやってじっくりながめるのはひさびさかもしれない、とふと思う。いつもは見つかるとすぐにげてしまうから。

本当はもっとにぎやかで楽しそうなところを見たかったし、フェリテにも見せたかったけれど、それはちょっとワガママかな。

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