第五羽「旅立ちの時」

「お母さん、私旅に出ようと思うの」

「なにを言ってるの!そんなのダメに決まってるでしょ!?」

お母さんに強く反対されてしまったのだ。そこから私達はケンカになってしまい、お父さんに止められる羽目になった。

お父さんは何も言わなかったけれど、きっと反対だと思う。

だけど、一度決めたことをここで曲げたくはなかった。

一言も謝らずにいなくなるのは心苦しいけれど、こうなってはしょうがない。

夜明け前、私は巣を発つことにした。

けれどもその直前、まだ起きていたお父さんに見つかってしまった。

「こんな時間にどこへ行くつもりだ、ロンディ」

「決めてない。旅に出るから」

お父さんはため息をついてからこう言った。

「そうか。気をつけて行くんだよ」

「えっ?」

予想外の言葉に私はおどろく。

「止めないの?」

「父さんはおまえが旅に出ることに賛成なんだよ。母さんは過保護かほごすぎる」

お父さんとお母さんはとても仲が良い。だから考え方にちがいがあるとは思わなかった。

「母さんの説得は父さんに任せなさい」

「ありがとう。それじゃあ、いってきます」

私はその言葉を最後に巣から飛び立った。

フェリテは昨日と同じ場所で大きく手を振(ふ)っていた。

準備じゅんびはいい?」

「ちょっと待って!」

フェリテは背負っていたリュックから布のようなものを取り出した。暗いせいか色はよくわからない。

「おせっかいだったらごめんね。寒そうだったから作ってきたんだ」

かれはそう言って私に着せてくれた。

「これ、何?」

私はフェリテにたずねる。見たことのある形のものだけれど、名前は知らなかった。

「ケープだよ」

「へぇ。ありがとう」

「どういたしまして」

「それじゃあ、行こうか」

「うん!」

私達は大空へ飛び出した。

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