第四羽「広がる空へ」

少しだけいた状態でフェリテの背後に回りこみ、足でかれかたをつかむ。

「えっ?」

フェリテの反応にはお構いなしで私はつばさをパタパタと動かした。みるみるうちに目の前の景色が変わっていく。

「えっ、ちょっと、ロンディ!?」

あわてた声と共に下で大きく動く気配がしたので注意する。

「お願い暴れないで。落としちゃうから」

「そ、そっかごめん」

フェリテはすぐにおとなしくなってくれた。

「とりあえずこの森の上を一周してして下ろすね」

「わかった!」

元気な返事でなによりだ。

私は宣言した通り森の上を一周して元の場所へ彼を下ろした。

「どうだった?初めての空の旅は」

「すごかった!いろんなものが見えて、あたる風も気持ち良くて!」

「それは良かった」

興奮した様子でまくし立てるフェリテ。楽しめたようで私もうれしくなる。

「そっか。あれが、みんなの見ている世界なんだ……」

そう言ったフェリテは少しだけ悲しそうな顔をした。

「ぼくにも羽が生えてたら、もっといろんな場所へ行けるのに」

うつむく彼に私は言う。

「行こうよ」

「えっ?」

「私がきみの羽になるから」

「良いの?」

「うん。むしろいろんなところに連れていってあげたい。私も見て回りたいし、それで他の種族の友達が増えたらもっとうれしいなって」

「それ良いね!」

それから私達は明日の朝出発することに決めた。

今すぐにしなかったのは、私がお父さんお母さんにきちんとお別れを言いたかったからだ。

これまで私を育ててくれた親だ。勝手にいなくなるのはダメだと思う。

けれど、その考えはすぐに変わった。

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