カラス 転生者の男

 ボクはライトノベルが好きな大学生だった……どうしてか分からないが、自分はヒロインと恋に落ちる魔法使いのカラスになっていた。


(スゲェ、転生だ……魔法使いのカラスだから、魔法が使えるし。一押しのカサンドラに会える)


 だが、カラスとなった男はある記憶を思い出す。この小説のヒロイン、カサンドラは18歳のとき、妹を毒殺しようとして捕まり。ギロチンで死に時が巻き戻り、ヒーローのボクと知り合い、妹達に復讐する。


 彼女がギロチンで死ぬ姿は見たくないが、ギロチンにかけられる彼女を、ボクがカッコよく助けるのはどうだろう。


(どうせ、この小説の内容を知っているのはボクだけ……そうだ、カサンドラをギロチンから助けるだけじゃ物足りない。もっとボロボロで、みじめな彼女をボクが助けて。ボクがいないと、生きていけない彼女にするのはどうだ?)


 カラスは巻き戻ったカサンドラが自分よりも先に出会う、魔女の存在を思い出した。小説ではいろんな、魔道具があると書いてあった。


 魔法使いのカラスも一応、魔導具を持ってはいるが、魔女が作る魔道具の方が出来がいい。カラスは魔女の家を漁り、魔道具を盗み、魔導具には魅了の魔法をかけた。


 そして、初恋のアサルト様と婚約したカサンドラを嫌う、妹のシャリィにコレを渡し引っ掻き回させ、カサンドラを落としに落としてもらおう。


 ゲスの考えを抱く、カラスであった。




 カラスの思惑通り、妹のシャリィは魔道具をつけ、よく動いてくれた。余計な薬も渡したらしく、カサンドラがふくよかになる。


(あの薬、使えるじゃないか。もっと取ってこよう)

 

 カラスの計画は順調に進み――カサンドラの婚約破棄の舞踏会の日が来た。この日、カサンドラは妹を毒殺しようとした罪で、アサルト皇太子殿下に捕まり、断頭台へと送られるはず。

 

(カサンドラ、ボクがいま助けてやるぞ)


 早く、早くカサンドラを捕まえて、ギロチンは送れ。しかし舞踏会へと現れた、カサンドラの容姿が美しく変わっていた。妹も虐めておらず、普通に王子に婚約破棄された。


(ハァ? どういう事だ? いや待て、カサンドラのこの行動……もしかして、カサンドラは自分と同じ転生者なのか?)


 だとしたら、カサンドラはなんの隔たりもなく、同じ転生者の自分を受け入れてくれる。カラスは別荘へと移り住んだ、カサンドラをズッと追いかけ見ていた。


 だが内容が変わり、会うはずがないと思っていた魔女が現れ。カラスは魔女の魔法で跳ね返され、カサンドラの側に寄れなくなった。


 ――カサンドラは転生者で、ボクのモノだ!




 今度、王子と妹の婚約披露の舞踏会が開かれる。魔女のせいでカサンドラには近付けない。カラスは考えた。子供のいない伯爵家に魔法をかけ、彼らの息子として参加すれば、バレずに舞踏会の会場へと入れる。


 そこでカサンドラに会い、転生者だと告げたカラスに。


『まあ、あなたも転生者なんですか、私もです。同じ転生者に会えて嬉しい』


 と、カサンドラはボクに笑ってくれるはずだ。




 カラスはシャリィに呼ばれて、ウキウキとバラの花束を持って出てきたが、カサンドラは転生者ではなかった。


 そしてボクは……魔女によって全ての魔力を奪われ。普通の、ただの伯爵家の長子となった。

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恐怖のギロチン回避! 皇太子との婚約は妹に譲ります〜 え? 私のことはお気になさらずに にのまえ @pochi777

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