最終話

「アオ君、シュシュ……2人に話した通り、戻ったら屋敷を出なくてはならなくなったわ。ごめんなさい」


 2人は、首をブンブン振り。


「そんな事どうでもいいって」

 

「そうです、私達にはアオ君の家もあります。いつの日にか、新しくみんなの家を買いましょう」


 2人の言葉に嬉しくて「ありがとう!」と、カサンドラは抱きついた。




 ♱♱♱




 カサンドラ達は公爵家に寄った帰り、近くの街で一泊して屋敷へと戻ってきた。御者にはお礼と料金を支払い、荷物を下ろして、さっそく屋敷の片付けをしようとした。


 そんな、カサンドラ達の元に早馬便が届く。


 早馬便で届いた手紙はマドレーヌ公爵家からだった。その手紙の内容は、偶然ルリアお祖母様の遺言状が、屋敷へ届いたと書かれていた。


(ルリアお祖母様の遺言状?)


 その遺言状にルリアお祖母様の国境近くの屋敷と、遺産の一部を孫のカサンドラとシャリィに。残りの遺産は兄弟で分けなさいと、書かれていたそうだ。

 

 シャリィは遺産を受け取るから、屋敷はあなたにあげると書いてあった。どうせ、あの人達はボロ屋だから、いらないと思ったのだろう。


 だけど、カサンドラにとっては好都合、屋敷を出て行かなくて良くなったのだ。届いた手紙を真剣なまなざしで読むカサンドラ。その内容が気になって、仕方がないアオとシュシュは。


「ドラ、その手紙になんて書いてあるんだ?」

「ドラお嬢様、なんて書いてあったのですか?」


 と、聞いてきた。


 カサンドラは手紙から目を話して、アオ君とシュシュに微笑んだ。


「聞いてアオ君、シュシュ。この屋敷が私の持ち物になったの。もう、ここから出て行かなくてよくなったわ」


「マジか! よかったなドラ」

 

「お嬢様、アオ君、お奥様、キリリと暮らせるのですね。私、たくさん料理を作り、お掃除します」


 屋敷の入り口で、カサンドラ達の聞こえたのだろう。屋敷から、にこやかに笑うお祖母様がでてきた。


「カサンドラ、たぬっころ、シュシュ、おかえり」


「ただいま、魔女様」

「いま、もどりました」


「ただいまもどりました、ルリアお祖母様。あの、お金の方は良かったのですか?」


 そう聞いたカサンドラに。

 ルリアお祖母様は頷き。


「いいよ。あんな端金で喜ぶとは、中々おめでたいねぇ。リャリィが王家から返されたら、公爵の地位からも落っこちまうのに」


「え、ええ、シャリィが王家から返される? そうなのですか?」


 そこまで大事になっていたことに、カサンドラは驚く。その驚くカサンドラにルリアは。


「まえもだが。ふくよかになったシャリィは誰にも会いたくない、王妃教育も受けたくないと泣き叫び。そうとう駄々をこねているらしい。同じく、ふくよかになったアサルト皇太子殿下と、毎日喧嘩ばかりしているようだ」


「あらあら……でもルリアお祖母様、これに関して私はマドレーヌ公爵家の公爵令嬢、彼女の姉ではなくなったので、口出しできませんわ」


「そうだね、私にも関係ない」


 すでに亡くなったと言われている、ルリアお祖母様にも関係ない。まあ、これからマドレーヌ公爵家が、どうなっていくかは気になるところ。


(まあ、公爵家とは縁を切られたのだから、何を言ってきても知らんぷりします)




 カサンドラに伝える事が終わったのか。ルリアお祖母様は「ゆっくり休みな、私は少し出てくるよ」と、ホウキに乗り出かけていった。その姿をみんなで見送り、フウッと一息つく。


 ようやく、煩わしいことはすべて終わった。カサンドラは荷物を持って屋敷へと入っていく、2人に声をかける。


「ねぇアオ君、シュシュ、荷物を片付けてテラスでお茶にしましょう。王都で買った本が読みたいわ」


「オレも読みたい」

「私も読みたいです」


「お茶菓子は王都で買ったクッキーね!」


「はい!」

「おー!」


 再びこの場所で、ただのカサンドラとなった私の、新しい生活がシュシュ、アオ君、キリリ、ルリアお祖母様とはじまる。


 それは魔女のお祖母様から習う、魔法。

 気になるアオ君との恋。

 ハラハラ、ドキドキする冒険。

 おいしいものを食べまわる旅行、などなど。


 いまから、それらを考えるだけでワクワクが止まらない。


(私らしく、楽しく生きていきますわ!!)


 風に流れた長い髪をかきあげ、カサンドラは微笑んだ。

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