第3話 告白した日のこと

 僕は高校に入学してから、いつしか幼馴染の美咲さんのことが好きだと自覚し始めていた。


 それというのも、小、中と彼女と過ごす日々が当たり前過ぎていたので自分の気持ちに全く気付くことが無かったのだけど、高校入学後、同じクラス、同じ部活だと言うのに全く話さなくなり、自然と二人の間に距離ができたことがキッカケで気付くことが出来たのだろう。


 しかも、彼女がこの学校でモテモテだということを親友の山本孝太やまもとこうたから聞いてからは、ずっと心の中のモヤモヤが消えずにいた。


 それ程、僕は美咲さんのことが好きなのだろう、ところが、彼女には好きな人がいるらしい、そのことも孝太から知り得た情報なのだが、誰なのか気になってしまい、落ち着いていられない日々を過ごした僕は、情報を知り得た数日後、いよいよ行動に移すことを決める。


 というのも、夏休み期間中である、八月八日は彼女の誕生日なのである、今迄はプレゼント何て渡さないで来たけど、これはある意味チャンスでもあった。


 幸い、彼女と遊ぶことが無くなり、部活の無い日は親友の孝太と工場でバイトをして時間を過ごしてきたので、無駄にお金は持っている。


 だから僕は、この機会に彼女に誕生日プレゼントを渡し告白することを決意したのだ。


 ところが、プレゼントが中々決まらない。


 というのも、入学してから、僕は彼女と全く話をしていないせいで、今の彼女がどんな物に興味を持っているか分からなくなっていたのである。


 そうこうしているうちに、自称陰キャでは無いと思われるが、情報収集すら一人でままならないせいで、彼女に何をプレゼントしたら喜ぶのか思い付かないまま、無駄に日にちだけが経過していった。


⋯⋯彼女に何をプレゼントしたら喜ぶんだろう?


「なぁ、孝太、あのさ、女子って何をプレゼントしたら喜ぶんだ?」


「何だよいきなり、もしかして美咲さん誕生日そろそろなのか?」


·········ぎ、ギクリ!  


「な、何で分かるんだよ······」


「分かるよ、いつも一緒にいるんだから、お前、美咲さんばっかり見てんじゃん」


 彼女の事を話題にしたことはなかった、幼馴染という情報しか知らないはずだったけど、好きだということもしっかりバレていたらしい。


「う、うん、夏休み期間中に誕生日が来るんだよ、八月八日⋯⋯それで、何かプレゼントしようかなと思ってるんだけど⋯⋯まだ決め兼ねてて」


「そっか、なら、美咲さんが喜ぶ物なら何でも良いんじゃないか? 女子が好きな物って言われても、皆がそれで喜ぶとは限らないからな、俺なんかより、お前の方が彼女と付き合い長かったんだから、好みくらい把握してんじゃねーの?」


 ご最もである、付き合いが長いのは事実なわけで⋯⋯でも、だからと言って今の彼女が昔と変わらないかというと、違う様な気もするのだけど。


「困ったな、良く分からないや!」


「分からないって⋯⋯マジか!?」


「うん、良く分からない!  どうしよう」


「思い出せって、何して遊んでたんだよ?」


「ゲーム良くしてたかな⋯⋯」


「ならゲームとか喜ぶんじゃねーの?」


「そ、そうかな⋯⋯」


「⋯⋯まぁ、でも、俺責任取れないからな」


「う、うん⋯⋯」


 こうして、僕は美咲と話さなくなり、彼女のことが良く分からなくなっていたのだけど、良くゲームで遊んでいたことを思い出した僕は、バイト代からゲームカセットををチョイスすることにした。  


 もしかすると、また一緒に遊ぶことになるんじゃないかという期待も込めて⋯⋯当日は、渡したいものがあると前もってメールで伝えてあり、了承済みではあったので、早朝彼女の家のそばにある公園で待ち合わせしていた。


「啓介くんおはよう!」


 彼女は約束の時間丁度になると現れたが、急ぐことなんてないのに小走りでやってきたからだろう、少し息を切らしているのが分かる。


「美咲さんおはよう、あと、今日は誕生日だったよね。おめでとう」


「うん、おはよう、啓介くん私の誕生日覚えてたんだね、ありがとう⋯⋯」


「はい、それと、これ僕からのプレゼントです」


 バックから包装された袋を取り出すと、彼女に渡す。


「うっそ、凄い驚いた、わざわざプレゼント用意してくれてたんだ⋯⋯あ、ありがとう」


 僕は、彼女がプレゼントを受け取るのを確認すると、決めていたシナリオ通り勇気を振り絞り告白することにした。


「それと、もう一つ、高校入学してから気付いたんだけど、僕は美咲さんのことがずっと前から好きでした。最近話をしなくなったけど、また前みたく会話がしたいなって思ってます、良かったらこんな僕ですが付き合ってください」


「⋯⋯」


 案の定沈黙が続く⋯⋯彼女の口から直ぐに返事は貰えなかったけど、それも想定内ではある。


「ええっと、返事は後でで大丈夫です、今すぐじゃなくても⋯⋯」


戸惑う美咲さんに「またね」と言うと、僕は告白した恥ずかしさもあり、その場から逃げるように小走りで立ち去っていた。


 その日の夜、風呂から出るとスマホに彼女からメールが入っていることに気付き、僕は直ぐに読んでみる。


 そこには、【ごめん】の文字と、今ゲームはして無いから友達にでもあげて······と、折角プレゼントしたゲームがポストに返却されてることが書いてあった。


⋯⋯何で⋯⋯何で何だよ!


 ずっと一緒に遊んでたじゃないか……。


 直後、悲しい気持ちになる自分がいたけど、理由を聞く勇気が無いので聞けなかったし、好きな人がいる噂のことも確認出来なかった。




































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