第2話 桜井美咲

 幼馴染の桜井美咲さくらいみさきさんとは、幼稚園の頃からお互いの家を行き来するほど仲良しで、それというのも親同士が元々知り合いで仲が良かったからだった。


 だから小学生になりゲーム機を与えられると、遊ぶ時はもっぱららゲーム機を持ち寄り、オンライン通信をして遊んでいたので、その頃の美咲がゲーム好きであったことは明確だっただろう。


 けれど、小中はわざわざ誕生日が来たからと言ってお互いプレゼントを貰いっ子何かしたことなんてない、お互いの誕生日が来ると、どちらの親も誕生日会に誘ってくれたので、一緒にケーキを食べたりはしてお祝いをしていたけど、流石に高校生からはそんなことも無くなった。


 僕と美咲の成績はいつも大体同じで、中の上といったところだろうか、なので、お互い受験する高校が同じになるのは当然のことだった。


「またクラス一緒だね、啓介けいすけくん高校でもよろしくね」


「うん、美咲みさききさんよろしく」


 そんなわけで、入学すると五クラスもある中でクラスも一緒になり、沢山ある部活の中から選んだのは二人して写真部だった。


 何故か偶然が重なっているように感じた僕は、美咲との運命のようなものを感じ取っていたのは間違いないだろう。


「なんかさ、私達ずっと一緒だね! 写真部でもよろしくね啓介くん」


「お、おう、部活でもよろしく」


 こうして彼女との高校生活が始まったのだけど、中学の時とは違い、元々自己肯定感の高い美咲はどんどん同性の友達と仲良くなっていき、気づけば彼女は入学早々クラス全員の女子と仲良くなっていた。


 僕はというと、それなりに仲良くなった男子はいたが、数人といったところだろうか、特別陰キャなわけでも陽キャなわけでもないので、そんなもんなんだろうが、中学時代までは休み時間ですら常に一緒に過ごしてきたからか、美咲が同性の友達と笑い合っているのを見るとなんだか寂しく感じてしまう。


「なあ啓介、お前、桜井美咲さんと幼馴染なんだろ?」


「そ、そうだけど、それがどうかしたのか?」


 ある日、入学早々仲良くなった親友の山本孝汰やまもとこうたが聞いてきたのである。


「いや、だってさ、昨日二人が幼馴染って噂を聞いたんだけど、そのわりにはクラスで話してるとこ見ないからさ、実は噂は違うんじゃないかって気になったんだよ」


「僕と美咲さんは幼稚園の頃からの幼馴染だよ、お互いの両親が仲良しだったから中学の時は一緒に遊んだりもしてたけど、そういえば部活も同じなんだけど、今は話さなくなっちゃったかも」


「ふーん、そうなんだ!  ってことは嫌われたりでもしたのか?」


「べ、別に嫌われたわけじゃないと思うけど⋯⋯」


 そう言いながら、もしかして嫌われてる?  なんて一瞬頭ん中で考えてしまったじゃないか。


「そっか、ならさ、ずっと一緒に過ごしてきたんだったらどっかで彼女のこと好きになったりしなかったのか?」


「えっ⋯⋯と⋯⋯」


「お前知らないのか、実は櫻井さんモテモテなんだぞ、この間も隣のクラスの奴に告白されてたらしい」


「ま、マジ!?」


「お前そんなことも知らないのかよ、幼馴染だった癖にうと過ぎるだろ!」


「⋯⋯そ、それで」


「何だよ、気になるのか?」


「······」


「あぁ、それでだけど、どうやら美咲さん断ったらしいぞ、他に好きな人がいるからって」


⋯⋯す、好きな人?


「そ、そうなんだ」


「お前気にならないのかよ?」


 そりゃ、気になるに決まっている⋯⋯ましてや好きな人がいるなんて⋯⋯その人って一体?


「気にはなるよ!」


「だろ、だから櫻井さんが好きな人は、もしや噂の幼馴染くんかと思ったんだけど、お前ら会話してないなら違いそうだな」


「⋯⋯そ、そうだね⋯⋯」


⋯⋯僕はそう言われ、一旦その場を微笑んでやり過ごしたが、彼女がモテモテだと知ってからは、その日一日学校で胸がモヤモヤし続けていた⋯⋯しかも、好きな人がいるだなんて⋯⋯。


 その日の夜、僕はモヤモヤのせいでちっとも眠れなかった。


















 







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