第7話 誘惑とプライドと
今日は土曜日ーやったー!……と思って今起きたら午前11時20分、そして目を開けて1番最初に映ったのは銀髪の死神。……あぁ、朝からイケメンは目の保養だね…じゃなくて、寝起き姿見られたくないんだけど。
「おはよう、よく寝れた?」
「……おはよう。……いつから居たの?」
「3時間前くらい?」
「……ずっと何してたの、およそ3時間」
「ここの椅子に座りながら、編みかけのマフラーが机に置いてあったから編んでた。あ、見て~さっき完成したんだよ」
片手に深緑色のマフラーを持って見せてきた。……いやこれ今日、私が音楽聞きながら編もうとしてたやつ!しかも普通に綺麗に編めてるのが余計むかつく!
目つきの悪い顔で睨んだが、それを気に留めない様子でにっこりとしている。
「……これ、君が着けるの?」
「いや、着けないよ。お母さんが5年前くらいに作ってくれたマフラーを愛用してるから。
あ、ライアーがいるならあげるけど」
「僕別に気温が何度だろうとどんな服装でもいけるからいい。風邪も病気にもならないし」
もう今の時点で死神は驚異的で本当に"神様"なんだなと思い知らされているけれど、まだ私が知らないだけで到底人間では敵わないような能力等があるんだろう。
「……とりあえずこのマフラーは畳んでタンスにでも仕舞うよ。
朝ごはんは……今日はいっか、12時過ぎくらいにカップ麺でも食べようかな」
お父さんは友人とゴルフに行っていて、お母さんは午前中は喫茶店のシフトが入っていて今は家には居ない。
「分かったー。僕も美味しそうな魂探してくる~」
「え、なんで朝から今日来たの……て、もういないし」
てっきり用事か話したいことがあるから来たわけじゃないんか。
今日何しようかな……。……あ、宝石……宝石描こう!
前に宝石をリアルに描いてる動画を見て自分もやってみたかった。
スマホで宝石を調べ、画像を漁る。 寒色系の宝石がいいかな……あ、これ良いかも。
宝石自体はルビーくらいしか名前は知らないし興味もないけれどなんとなくその宝石の名を検索した。
「アパタイト……だからか、なんか見覚えのあると思ったらライアーの目の色とおんなじじゃん」
動画で見たような画材はないけれど自宅にある絵の具やアルコールマーカー、色鉛筆などで描き始めた。……こういう時にライアー居なくて良かった。1人で集中して取り組みたいから。
いかに本物に近付けて丁寧に仕上げれるか、これが模写の醍醐味で楽しさであると個人的に思っている。
土曜日から日曜日にかけてアパタイトを描き、ほぼ完成に近い状態になった。
あぁ……明日から学校か……。しかも月曜日は社会が2時間目にあるよ……当てられてもおかしくないから先生が問題出しそうな所、教科書にチェックして解答も端の方に書いとこ。
「やっほ〜……」
「わぁ?!びっくりした……」
背後からライアーが現れた。
「良い魂なかったぁ……」
「残念だったね」
「……あっさりしすぎだって……
ん、社会?……あ、そっか明日社会の授業あるんだったねー 僕、明日はちゃんと居るから当てられた時には答えるよ」
「一応、その……なんていうか事前に見ているのと見ていないので気持ち的に結構変わるって言うか……。事前に見ていたら落ち着いていられるし。
あ、でも先生が質問したら、私が答えを言う前に先に言って!私が先に答えて間違えてたら嫌だから」
「ふふ、分かってるよ。
……ところで、明日は数学の小テストもあるけど、それは大丈夫なの?」
「あぁぁあ!!忘れてた……ヤバい、復習してない!優先順位まちがった!!!」
ドンドンドン
「ちょっとまゆり!!どうしたの!急に大声出して...!もう夜10時なんだから静かにして……はぁ、一瞬誰かと通話でもしているのかと思った」
お母さんから苦情が飛んできた。
今まで独り言もほぼ無かった娘が突然部屋から大声を出したら、そりゃあ心配になるよね。……あぁ、もう少し声のボリュームを落とせば良かった。1分前に戻りたい。
「……笑うところじゃないよ、ライアー。今のでちょっと怪しまれたよ」
「ぅははは、ごめん。でも、元はと言えば君が小テストの事を忘れてたのが悪いんじゃないの?」
……正論で言い返せない。
「……で、復習するの?」
「……やる気でない...やりたくない……でも、みんなだって嫌々やってるよね...」
「……君の言う"みんな"はどれくらいの人を指しているのかは分からないけど、少なくともクラス全員が勉強してる訳ではないよ。 大抵の人は朝、学校に来て慌てて復習するか、諦めてるよ」
「……おとつい話したあの私の"理想"はただ想像してるだけじゃない。 少しでも近づけようと以前もそして今も...実現に向けて頑張ってきている。
だからただ能天気な奴らなんかと同じ事はしたくない」
「……そっか、……君は僕が今まで出会ってきた人の中で1番手強い気がするよ」
「……そうかな?案外チョロいから美味な魂に出来上がるのもすぐだと思うけどね。
……ありがとう、さっきよりやる気出てきた。やれる所まで頑張ってみるよ!」
「うん、じゃあ僕はこの辺で」
ライアーが微笑んで消えると、勉強机に向かい、鞄から教科書とワークを取り出してシャーペンを握った。
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