第17話:逢引 ♥♥
「お待ち遠さま」
待ち合わせ場所に指定した地元の駅に、ツバキ先輩は時間通りにやってきた。先日モデルになってもらった時と同じ、藤色の着物姿だ。違うのは髪で、今日は高く結い上げてある。うなじが色っぽい。
「俺もいま来たところですよ。着物、本当によくお似合いですよ」
前半は社交辞令だが後半は本音だ。窮屈そうな見た目とは裏腹に、とても自然に振る舞っている。
「それじゃ、案内してくださる?」
「ええ、喜んで!」
ツバキ先輩は、今度は俺の部屋でモデルになることを提案した。それも、二人きりで。これは確実に脈もあるというか、先輩自身も期待しているのだろう。
「もう少し、早く歩いても大丈夫よ」
「失礼、気を使いすぎてましたか」
「アキヒコ君が思っているよりは動きやすいから」
着物に草履だと歩きにくいと思ってかなりゆっくり歩いていたら、そうたしなめられてしまった。
*
「どうぞ。今日は夜まで誰もいないので」
「それじゃ、お邪魔させていただくわね」
自宅に招き上げる。着物姿の先輩は目立つので、近所の人に見られたらどうしようかと思ったが、何か聞かれたら「部活の先輩に絵を教えてもらっていた」と正直に言えればいいだろう。着衣の状態でモデルになってもらったという「アリバイ」はすでに用意してある。
「お茶、用意しますね。先輩のところで頂いたものとは比べ物にならない粗茶ですが」
「あらあら、お気づかいしなくてもいいのに」
俺はお茶には詳しくないが、香りだけでも普段飲んでいるものとは別物で、高級な茶葉であることが伺えた。あるいは淹れ方も違うのかも知れない。ともかく、部屋に上がってもらった先輩に、買い置きの茶菓子と共に持っていくのであった。
*
「アキヒコ君、着物には馴染みがないって言ってたわよね?」
「ええ、母も着物は持っていないし、俺も浴衣すら着たことありませんから」
「ちゃんと描くには、構造を理解しなくちゃね」
そう言って、先輩は俺の隣に座る。
「例えば、ここに隙間があるって知っていたかしら。
腕を上げて、体の側面を見せる。帯の上の部分が開いており、これが「身八ツ口」か。
「手を、入れてみてごらんなさい」
「し、失礼します」
一応、両手を擦り合わせて暖めてから、右手をゆっくりと着物の隙間に差し込んでいく。
「もっと奥まで入れて大丈夫よ。着物の下に着ているのが長襦袢というのだけれど、わかるかしら」
「はい、聞いたことはありますね」
着物の下にある、もう一枚の白い着物。下着に相当するものだ。
「長
誘われるように、長襦袢の中へと指を滑らせていく。柔らかい膨らみと、硬い突起の感触。
「先輩、その下は……」
「和装用のブラジャーというのもあるけれど、今は付けていないわ……んっ、続けて」
そう言って、先輩はしなだれかかる。俺はすかさず背後に周り、全身で背中を受け止めた。そして、両手を身八ツ口の中へと滑らせる。2枚の襦袢をすり抜けて、直に双丘を揉みしだく。
「うふふ。そこまでしていいとは言ってないわよ」
とは言うものの、俺を咎めるそぶりは見せない。むしろ、恍惚の表情を浮かべて身を委ねているようだ。それにしても、しっかり着たままでも直接胸を触ることができるなんて。
「着物って、こんなにエロい構造だったんですね」
「身八ツ口が開いているのは形を整えるためとか、動きやすくするためとは言うけれど、こういう楽しみ方もあるのは確かね……もう少し、強くして……はぁっ……いいわぁ」
先輩は淫らな顔を隠そうともしない。俺の手にも自然に力が入っていく。
*
「ねえ先輩、俺もそろそろ我慢できないんですけど。着物、汚しちゃったりするといけないし」
「そうね、少し待ってね」
先輩は帯を体の前に回して解いていく。
「できればでいいんだけれど、バスタオルはあるかしら」
「あ、はい」
バスタオルはベッドのシーツの上に敷いていたが、念のためにもう一枚を用意しておいた。
「床に広げてくれる? そこに着物を畳んで置くから」
言われたとおりにする。なるほど、大事な着物を直接床に触れさせるのは良くないということか。着物と襦袢を脱いで丁寧に畳んでいく。
「改めて。これが和服における下着よ。上がさっき話した肌襦袢。下は
薄手の肌襦袢からは濃いオレンジ色の乳首が見える。アオイのより一回り大きめで、乳輪もくっきりしている。純白の裾除けは腰から脛のあたりまでを覆い隠している。
「構造、確認してみる?」
「はい……」
先輩はベッドに横たわった。俺は裾除けをめくっていく。
「裾除けの下に穿いているのが湯文字。本来は女性にとっての最後の一枚ね」
湯文字の中は何も穿いていなかった。つまり先輩は、ノーブラ・ノーパンでここまで来たということになる。
「ねえ、来て」
「はい……お手柔らかに」
先輩から教えてもらえるのは、絵や着物だけではなさそうだ。
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