1話 空から女の子が!

『1話 空から女の子が!』

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いや、全ての原因をその出会いになすりつけるのは酷だろう。

少女には初めからその素質があった。

実際は原因でも何でも無く、ほんの些細なきっかけに過ぎなかったのかもしれない。


しかし、背中を押してしまった事に変わりは無い。


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「っ!」


 何か、悪寒を感じた。

 咄嗟に青年を突き飛ばし、その反動を利用して大きくステップ。

 さっきまで私が立っていた場所に何かが降ってきた。


 間一髪だった。

 鈍い音がして、パッと見かなり大きそうな物に見えた。

 下にいたらどうなっていた事か。


 しかし、一瞬警察かと思って身構えてしまった。

 常識的に考えれば空から警察が降ってくるわけ無いのだが、最近は無駄に意識してしまっていて良く無いな。

 さっきのおっさんだって、もし発見されてしまっていたとしてもそこから捜査開始したにしては早すぎる。


 ただ、まだ嫌な予感もする。

 もし私のことが本当に嗅ぎつけられてる様ならまた移動かな。

 面倒ではあるが、仕方ない。


 そんな思考が頭を回り初めた所を、目の前の光景が一瞬にして吹き飛ばした。

 何か大きな物が降ってきたであろう場所、そこに転がっていたのは1人の女の子だった。

 え、女の子……??


 !?


 落ちてきたの?

 女の子が?

 一体、何故?


 常識的に考えて空から警察が降ってくる訳は無い。

 けど、空から女の子が降ってくるのはあり得なくはないらしい。

 現に今目の前で起こってる訳だし。


 ファフロッキーズ現象みたいな話って事?

 カエルや魚じゃないけど。

 質量的に言えば、数倍じゃすまないレベル感だ。


 まぁ、竜巻でサメが空を飛ぶんだし女の子も空ぐらい飛んでも可笑しくない……のか?


 そう言えば、金曜日の夜は良く女の子が空から降ってきていた様な気がしないでもない。

 私の中の遠い記憶がそう言ってる。

 それより多少ショッキングな映像だった気がするが、確か記憶の中ではもっとこうふわっと……


 いや、冗談だ。

 現実をあまり直視したく無かったというだけ。

 普通に考えるなら自殺だろうな。


 日本だけで年間何万人も死んでるんだし、その瞬間を目撃することもあるだろう。

 特にここは人口も多い。

 それならちょっと面倒な事に巻き込まれたなってそれぐらいだ。


 ただ、この女の子の格好。

 魔法少女……だよね。

 コスプレ、いや本物か?


 普通の人間があの速度で道路に叩きつけられたらまず原型は残らない。

 もっとグチャグチャになっていたはず。

 この魔法少女はかなりボロボロだが、まだ生きてはいそうな様子。


 多分、本物なんだろうなぁ。


 どこか現実逃避するような思考。

 当然だ。

 魔法少女がこんな有様ってことは、


「まだ息があるとは……。無駄にしぶとい奴め」


 やっぱり居たよ、ヴィラン。

 あーあ。

 私は見事巻き込まれたってことか。


 なんて不幸な。

 ま、いい子にしてなかったからね。

 仕方ないか。


 空から降って来た魔法少女はまだ生きてこそいるが本当に生きてるだけ、とても戦えそうな状態ではない。

 つまり、守ってはくれないと。

 魔法少女に止めを刺した後、ヴィランが私のことを見逃してくれる可能性に賭けると言うのもな。


 仕方ない。

 いや、むしろか。

 いい機会だ。


 もともと、ヴィランのナカミに興味はあった。

 魔法少女に殺しは御法度、ヴィランのなんてそう見れる物じゃない。

 私の場合、映像越しにすら見たことがない。


 ポッケに手を入れる。

 頭を性欲に支配された青年を相手にするのとは違う。

 確認は大切だ。


 カッターは……あと5本、か。

 心許ないな。

 さっきのおっさん相手に楽しみすぎた。


 ま、無いものは仕方ない。

 少なくともとどめを刺すまで、ヴィランは目の前の女の子から意識を逸らしたりはしないだろう。

 あんな状態でも逆転の一手を隠し持っててもおかしく無い存在、それが魔法少女だ。


 ヴィランが魔法少女に止めを刺す瞬間、そこを狙って急所を一突き。

 それしかない。

 魔法少女は多分死ぬが、私が何もしなくともどっちみち死んでるだろうし運命だと受け入れてほしい。


 こんな災難に巻き込まれた私と一緒だ。

 不幸ってやつ。

 この女の子の場合、魔法少女なんてやっていい子ちゃんしてたのかもしれないが……ドンマイ。


 ただ、ヴィランはまだこの魔法少女の事をいたぶって遊ぶつもりの様だ。

 まぁ、そうでもなきゃこっちまであんなボロボロの姿で生きたまま飛ばされて来たりしないだろうしな。

 油断できない事と余裕を持っていたぶる事はヴィランの中では両立するらしい。


 カッターを握り締め、意識を研ぎ澄ませる。

 その瞬間を待つ。

 早くとどめをさせよと思うが、そう言う話をするならまだ日も落ちない時間にそもそも魔法少女を狙うなんて目立つことをこのヴィランはやらなかっただろう。


 私やパパ活女子と一緒、ヴィランは趣味と実益を兼ねているのだ。

 ひっくり返る可能性のある差に違いは無いが、現状を見るにヴィランの方が遥かに格上であるのも事実。

 なら自分の趣向を優先したくなるのが人間って生き物である。


 そこに、こうした方が良いのになんて言うのは野暮って話だ。

 勿論、最善はさっさと殺しておく事だとは思うけどね。


「そこの君! あの娘の事を助けて欲しい!!」


 へ?


 ヴィランが魔法少女をいたぶって遊んでる空間、そこに別の何者かが突っ込んで来た。

 場がよりカオスになる。

 ただでさえややこしいのに、勘弁してくれ……


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