ワッチはただのお狐じゃよ
オダマキ
プロローグ
悲鳴が聞こえた
最初はその声は少数だった
次第に悲鳴は広がり、街を狂気で包む
怖い、死にたくない、この子だけでも、悪夢だと言ってくれ・・・
その言葉は、急にその場に現れ街を破壊しだしたファンタジーに向けられていた
(悲鳴が聞こえると思ったら、なんじゃこやつら!おっきな蟻かのぉ?やけにメタリックというか金属ぽいのじゃが)
逃げ惑う人々をかき分けて反対方向にやってきたモノは大きな蟻たちを見て焦るでもなく観察する
2メートルは超える大きな銀色の蟻はカチカチと口を動かし建築物を壊していく
(ふむ、殿はコレを退治しろと言っておったのか。しかし、コレは固そうじゃし疲れそうじゃのぉ)
すでにこのファンタジーの前にはそのモノしかおらず、戦うのであれば戦いやすい環境と言えよう。
「この世に足を踏み入れた異界の蟻たちよ、悪く思うでないぞ。殿の命令なのじゃ」
そのモノはそう言うと左手に右の親指の爪を立て勢いよく引く。それにより赤い液体が流れ地に着く・・・前に形を作っていく
ソレはそのモノよりも大きな赤い薙刀へと姿を変えた
「数は・・・たくさんじゃな。まぁ良い全て倒せばこの騒動も終わるはずじゃし。ほれ、行くぞ」
赤い薙刀を蟻へと向け一突きするが、勢いよく突けば刃が折れそうだと感じるだろう
「コレは・・・面倒くさそうじゃのぉ」
蟻はその突きを受け攻撃されたことに気が付き戦闘行動をとる
他の蟻にも伝播し、一対多の図ができあがってしまう
今度は蟻の側面に移動し節を狙って刃を振り下ろす
その刃は蟻の頭部と胴体を切り離した
「コレで一匹じゃな、しかし横っかわに回るのが疲れそうじゃのぉ」
そんな独り言を呟きながら蟻を一匹ずつ確実に倒していく
何匹目かの蟻を倒して安全マージンが取れたところで薙刀の下部、石突きを見やるそのモノ
「これで正面から突いて壊せんかの?モノは試しじゃ」
薙刀を反転させ石突きを構え蟻の頭部を突く
蟻の頭部に少し罅が入る
その罅に石突きがもう一度突かれ罅が広がる
10突きほどついてやっと頭部が割れ動きを止める蟻
「コレはダメじゃワッチが疲れるのじゃ」
腕を回して誰に言い訳するのでもなく疲れたアピールを見せる
その後は淡々と頭部と胴体を分ける作業がなされファンタジーな蟻は生命活動を終えた
「コレで殿の命令は終わったのじゃ!はぁ疲れたのじゃぁ、コレは1、2ヶ月は休みをもらっても文句は言われんじゃろ!まぁワッチ仕事しとらんけどな!」
・・・ ・・・ ・・・
ワッチはよく女子に間違われる普通の男子高校生じゃ
周りからよくしゃべり方が古くさいと言われるが慣れというモノがワッチを変えさせてくれなくての、すまぬがこのまま皆には我慢してもらう
と、まぁ自分語りは置いておいて今は現実を見るのじゃ
目の前にいるべっぴんさんがワッチに助けを求めておるこの現実に向き合うのじゃ
「………血、血を分けておくれ」
ワッチはただのお狐じゃよ オダマキ @sironekooaka
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