第22話 弱みの二つや三つ受け入れられなくて何が友達だよ
「お前、マジでいい加減にしろよ」
俺はいつの間にかにそう口にしていた。
あまり、大きな声を出しても周りの迷惑になるだけだ……一旦、落ち着こう。
「誰だって言いたくない、知られたくない過去だってある。それをむやみに誰かにバレすだなんて、お前が星那の元クラスメイトであってもやっていいことじゃねえよ」
そう思ったが落ち着けるわけなかった。
だって彼女は俺にとってもう、大切な人になっているのだから。
「は、はあ?なに? あんた彼氏だからってお姫様を守る王子様気取り? そういうの超イタいよ。それも、あんた全然星那と釣り合ってねえから余計にね」
「……っ」
本気でキレそうになる自分を俺は深呼吸することで鎮める。
落ち着け……今ここでキレたら完全に相手の思う壺だ。
「うわ、本当のこと言われて黙っちゃった?」
思い出せ、元々こいつらが言ってきた言葉を。
「……そうだね、確かに俺と星那は釣り合ってない。けれど、それが君たちが星那を傷つけていい理由にはならない。下手に話を逸らしてくるのはやめてくれ」
元々、こいつらは星那の過去を言いふらしたんだ。
相手に非はある。
「いや、私たち星那のこと傷つけようとしてないし。久しぶりに会ったから昔話して懐かしもうと思ってただけだよ? それをあんたが勝手に深刻に捉えてるだけなんですけど」
「勝手に都合よく解釈するのはやめてもらっていいか?」
「はあ? それはあんたでしょ」
ダメだ、こいつらには話が通じない。
それに長く話し込みすぎて周りからの注目も集めてしまっている。
説得できそうにもないし、諦めて別の場所に移動しようか。
そう思っていた時であった。
「やめてください」
ずっと俯いていた星那が少しだけ顔を上げてそう言ったのだ。
「栄人さん……もう大丈夫です、元々は全部私が悪いので」
「そんなわけ――」
「それに私はあなたが悪く言われる方が嫌です。本当に私のことは大丈夫なんです、ですから気にしないでください」
そう言う星那の声には微かに涙声が混じっていた。
「やっとあんたが全部悪いってわかったの?……まっ、もういいや。そんなに悲しそうにされると興醒めしちゃった。じゃあね星那ちゃん……いや、元残虐姫ちゃん」
そう一方的に言って3人組は奥の方へ消えていった。
それに対して星那は俯きながら俺の服の裾を掴んでいた。
「大丈夫……じゃないよな。ごめん、俺が上手く反論できなくて」
「違います」
「え?」
「違います、栄人さんが悪かったんじゃないです……ずっと嘘の姿を見せ続けていた私が悪いんです……!」
星那は深呼吸をし、近くのベンチに座って静かに喋り始めた。
「私は中学生の頃……いえ、ずっとずっと前から今まで人見知りなんです。それも今の栄人さんの何倍も」
「えっと……今まで喋ってきてそんな様子はなかったけど」
彼女はハキハキ喋るし、顔も基本ずっと上げて目は俺の方を見ている。
おどおどした様子なんてて今まで見たことすらない。
「実は私……栄人さんの前では何故か普通に喋っていられるんです。親戚にもクラスメイトにも人見知りが発動してしまうのに貴方の前だけでは」
「そう……なのか?」
「ええ、そしてさっきの人たちは昔、私が人見知りだったために冷たい態度をとってしまい、反感を買ってしまっていた人たちなんです……ですから元々は全部、私が人見知りなせいです。私がもっとちゃんとしていれば栄人さんが巻き込まれることもなかったのに……」
彼女は下を向いているから確認はできないが彼女は泣いているようであった。
その声には涙声が混じっており、俺の服の裾を握る手は震えていた。
俺はその仕草に、動作に見覚えがあった。
「大丈夫」
いつの間にか、俺は彼女の手を握っており
「例え、星那がそうであっても少なくとも俺は失望したりしないよ」
そう言っていた。
俺は知っていたのだ。
この仕草は震えは……誰かに捨てられるんじゃないのか、失望されるんじゃないのかという感情からくるものだ。
なぜなら、俺が1年前にそうやって震えて眞白から捨てられるんじゃないのかと思っていたから。
「誰しも弱みはある……むしろ星那にそんな弱点があって安心したかも」
「え……?」
「いや、変な意味じゃなくて……完全に完璧で俺とはかけ離れた存在だと思ってたから星那にも弱みはあるんだなーって思って少しだけ親近感が湧いたんだよ」
「受け入れてくれるんですか?」
「勿論、友達の弱みの二つや三つ受け入れられなくて何が友達だよ」
「……」
え?
何この沈黙。
友達だよね俺たち。
「ありがとうございます……! まさかこんな普通に受け入れてもらえると思ってなくて」
俺には浮気されたことによって自分への自信がなくなった。
でも、星那もそれに準ずるレベルの問題を抱えているのか。
なんだか、俺たちはこれから上手くやっていけそうな気がした。
「じゃあ、これからもよろしくな」
「はい、よろしく……お願いしますっ!」
そう言って彼女は顔を上げた。
その目にはなんだか、友情とは違った深い何かがあるような気がして……今まで以上に俺はもう逃げられないような気もした。
――――――
実は今日、遂に修理に出していたMacBookが帰ってきて、パソコンの書きやすさに感動しております。
いやぁ、これでスマホ執筆からは脱出できますね。
というわけでこれからも執筆頑張ります(いや、どういう報告?)
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