第16話 俺の方が経験者だよな?
「なんか、変な雰囲気になっちゃったな……」
俺は頭をかきながら笑ってそう言う。
「ふふっ……そうですね。ちょっと暴走し過ぎちゃいました。彼女でも無いのに栄人さんの過去に色々言うのは野暮でしたね」
「嬉しかったよ」
「え?」
「君が色々言ってくれて嬉しかった。てっきり俺は自分に魅力なんて無いと思い込んでたたからさ」
「そ、そうですか……!」
「って、また変な雰囲気になっちゃったよ」
「ふふっ」
星那は口元を抑えて上品に笑う。
はぁ〜、本当に星那は出来た女の子だな。
容姿も完璧、性格も優しい、そしてヤンキーにも臆さないほど勇気がある。
学校でも、天使みたいな子が居るって噂になってたっけ。
「そういえば、学校だと星那はどこのクラスなんだ?」
「えっと……私は6組です」
「俺は1組だから……階層が違うのか」
1から4組は2階、5と6組は3階なのだ。
どおりで会ったことが無かったんだな。
「けど、3階だと階段が大変ですよ、何せエレベーターは使っちゃいけないことになってますから」
「そっか……2階と3階じゃ、上る距離は倍だもんな」
「まあ、3階だとよく空が見えるのでそこはいいですね」
「それって窓際席じゃないと関係なくない?」
「そうかもです」
そうやって俺たちはしばらく談笑しているといつの間にかパンケーキを食べ終えていた。
――――――
「わぁ、ここがゲームセンターですか!」
星那は目をキラキラとさせてゲーム感溢れるフォントの看板を見つめる。
本当に初めて来るんだな。
店内に入ると、けたたましいBGMが耳をつんざく。
「久しぶりだなぁ、ゲームセンター」
最後に行ったのは三年くらい前だっけか。
中学で初めて出来た友達と一緒にゲームセンターに行ってメダルゲームやったっけ。
「あれ、クレーンゲームですよね?……あっ、あのぬいぐるみ可愛い〜」
星那はそう言ってカワウソのぬいぐるみを指さす。
確かに可愛いな……。
「それじゃあ、やってみるか……ええっと」
俺は台を確認する。
なるほど、100円で出来るのか。
そしてこれは手元のレバーで操作するタイプね。
「じゃあ、俺がお手本見せるよ」
そう言って俺は100円玉を中に入れる。
もし、ここで一発でカワウソを取って星那にプレゼント出来たら……きっと、カッコイイだろうな。
そう思い、変なやる気が出てきてしまった。
「よいしょっ……」
俺はレバーを動かしつつ、素早くクレーンゲームの横に移動し位置を確認する。
そうして、俺はカワウソの背中の上にクレーンを、持っていき……
「よしっ!」
レバーを離すとクレーンはそのまま、カワウソ目掛けて降下していき、カワウソはアームの間に入る。
そして、そのままアームはカワウソを掴み――
「あっ!」
持ち上がっていく途中、カワウソは滑り落ちてしまった。
まあ、世の中、そんな上手くはいかないか、
「じゃあ、星那もやってみてよ」
「はいっ!」
星那は緊張した様子で100円玉を入れ、アームを握る。
「横に回って……ここで、こうです!」
星那は俺の行動を見事に真似し、カワウソの上にクレーンを持っていった。
ただ……場所が少し、カワウソの前過ぎる……あれじゃあ、持ち上げてる途中で俺みたいに落ちそうだな。
そう思って見つめていると――
「やった! やりましたよっ!」
絶妙なバランスでカワウソは持ち上がり、そのまま、穴に落ちていったのであった。
「あれ? 俺の方が経験者だよな?」
なんだか、経験者アピールした自分が恥ずかしくなってきた。
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