第8話 もう無理
「いいえ、違いますよ。私は――全てを精算しに来たんです」
私は元カレ――いいえ、日野さんに対してそう言い放った。
「は? 精算? クソアマが……あんまふざけたことばっか言ってると――」
「――12月24日」
「は?」
「2023年12月24日……あなたは私に告白してきました」
「ああ、そうだけど」
「私は拒否しましたが、あなたは自分の父親が職をなくした私の父親に助けの手を伸ばした命の恩人であることを盾にして仲間たちと共に私に迫ってきましたね?」
「は、はあ? なに言ってんだよ、星那……お前は快諾しただろ?」
日野さんが私を睨みつけながらそう言ってくる。
その言葉はただの嘘じゃない。
これ以上、その話をしたらこっちも反撃するぞ……という意思だ。
でも、私はそれを承知で話し続ける。
「私は貴方の告白を断りましたよ。ですが、貴方に脅されたので仕方なしで付き合っていただけです」
あの時――告白を断られて逆上した彼が仲間と共に私を襲おうとしてきた時だ。
その時、私はなんとか大切なものを奪われる前に逃げられたが、結局、私は彼と付き合うことになった。
そうしないと、『私の父親の悪評を自分の親に伝える』と脅してきたから。
「ふははっ星那、お前ついにおかしくなったか……お前の父親はうちのオヤジの会社に拾って貰ってんだよ。お前がこれ以上好き勝手するんだったら俺にも手があるぞ?」
そう、あの日もこうやって脅された。
私は自分の震える手をギュッと強く握る。
「貴方はいつまで私を自由に出来ると思ってるんですか?」
「あ?」
「もう私のお父さんは貴方のお父さんの会社を辞めました。ですからこれ以上、貴方に脅される義理はありません」
「なんだと?」
「もしも、貴方が今後一切合切、私と……栄人さんに関わらないのであれば今回のことはこれ以上誰にも言わないことを誓いましょう。」
頼みますからもう、ここで引いてください。
もう、これ以上、私は小賢しいことをする自分をあの人に見せたくない。
ですが、その願いはすぐに打ち砕かれました。
「ふ、ふははっ! もう関わらないでくれたら今までのことは誰にも話さない?……誰が信じるかよ、ビッチ女が」
「でしたらどうなるか、わかってますよね?」
「いや、そもそもお前は1人……あの根暗オタク野郎が居たとしても2人だ、それに対してこっちは7人。なあ、お願いを聞くのはどっちだぁ?」
「っ……」
彼らに話が通じないことがよくわかった。
私が次にどうするか悩んでいると彼は爆弾を投下してくる。
「それに、俺達、こんな写真も持ってんだぜ?」
そうやって彼はおもむろにスマホを取り出し――
「っ!?」
そこに映っていたのは私の着替え姿の写真だった。
どうやら、隠しカメラで撮られたようだ、後ろには他の生徒の着替え姿も映っている。
女子更衣室は決して、どんな時間帯も男子は入れない。
つまり、彼の仲間の女子生徒が隠しカメラを設置したということだ。
「こんなこともあろうかと準備してたんだよなぁ、さあ、どうする? ここで諦めるんだったら夜中の街を裸で歩かせるぐらいで勘弁してやるぜ?」
「クズがっ……」
「はんっ、勝手に言ってろ。だが、早くしねえとこの画像を星那の住所と名前と一緒にネットの海にバラまいちまうぞ?」
もう無理かも。
「……わかりました」
「は、結局、口だけのクソアマじゃねえか。あのオタク野郎も隠れたままだしよぉ。なんかムカつくな」
彼は私の胸ぐらを掴もうと手を伸ばす。
私はなすすべもなく釣り上げられる。
「後でオタク野郎もボコボコにしてやるか」
ああ、もう無理だ。
これ以上、温情をかけるのは。
私は両腕で彼の私の胸ぐらを掴んでくる腕を挟み――
「いっでぇ!!!」
思いっきり締め付けた。
彼は地面に転がり、その衝撃で彼が左手に持っていたスマホが手からこぼれ落ちる。
私は急いでそれを拾い上げた。
しかし――
「何しやがる星那ぁぁぁぁ!!!」
その間に彼は起き上がり、拳を振り上げ、それは私に向かって振り下ろされ
――なかった。
「頼むからいい加減にしてくれませんかね」
私が恐怖で閉じた目を開けるとそこには腕で彼の拳を受け止める栄人さんの姿があった。
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