第3話 もしかして君、結婚する約束した幼馴染だったりしない?
「ああああああああぁぁぁ……恥ずかしい死にたい」
「ま、まあ私もその後で名前は聞こうと思っていたのでハズレってわけではないと思いますよ?」
「それでも、恥ずかしいよ」
まさか、彼女の言いたいことを外した上に彼女の言いたいことが――
「道を間違えてることだなんて……」
俺はあまりの恥ずかしさに顔を上げられないでいた。
俺はファミレスに向かって歩いていたのだが完全に自分がとんでも方向音痴であることを忘れていた。
あの時は雰囲気が良かったため、あそこで彼女の言いたいことをズバッと当てられたらかっこいいんだろうなー。
と、調子に乗ってしまっていたのだ。
俺がそうやって悶絶していると彼女がくすくすっと笑い始める。
「ふふっ、こんなにも一緒に居て楽しい人は初めてです」
「これは……褒められてるんだよね?」
この状況だと俺のポンコツさを面白がられているだけのような気がするんだけど、きっとこの言葉はいい意味なんだよな?
「褒めてますよ、少なくとも一緒に居て飽きません」
「いや、それ完全に面白がってるよね?!」
「ふふっ、否定はしません」
「そこは否定してくれよ?!」
そうこうしていると、いつの間にかファミレスの前に着いていた。
階段を上がり、扉を開けるとファミレスの暖かい光が目に入る。
人はまばらだが、所々には俺たちの同じ制服をした学生もいた。
「2名様ですね。こちらの席へどうぞー」
窓際の2人席に案内される。
なんだか、店員の目が生暖かいような気がするが……気のせいだろう。
「さて、どうします? なにか頼みますか?」
「うーん、そうだなぁ……えっと、君は家で昼食、食べるんだよね?」
「いえ、用意するのも面倒なのでここで済ましちゃおうかと」
「それなら俺はこのたらこパスタとドリンクバーにしようかな」
「では、私は普通のパスタで」
俺は店員さんを呼ぶボタンを探すが無い。
ああそっか。
「最近はQRコード読み取って注文するんだっけ」
俺はスマホを取り出し、QRコードをスキャンする。
すると、銀髪少女が目を輝かせていることに気づいた。
「ええっと……やってみる?」
「はいっ!」
彼女は水色のスマホを取り出し、カメラアプリでそれをスキャンしようとする。
が……
「あ、あれ? おかしいですね……読み取れない」
あまりにもスマホが近すぎるのだ。
この子、ポンコツかもしれん。
「もうちょっと遠ざけないと読み取れないと思うよ?」
「こう……ですか?」
彼女は体ごと後ろにズレる。
人間は腕を曲げられることを忘れてないか?この子。
「あ、読み取れました!」
そう言って彼女はスマホの画面を俺に向ける。
「それじゃそこにテーブル番号とか商品の番号とかを入力してくれ」
「出来ました……!」
校門の前でヤンキーの彼氏を振ったりと度胸のある彼女だが、実はかなりの天然なのかもしれない。
だが、なんとなく、彼女の振る舞いの奥には何か闇の深い過去が関係しているような気がした。
「なあ、どうして俺のナンパを受けたんだ?」
「……? それはさっき言ったと思いますけど」
彼女はきょとんと首を傾げる。
「違う、俺が今聞いてるのはあいつを振った理由じゃないで俺のナンパを受けた理由だよ」
よくよく思い出すと彼女はさっきそれに答えていなかった。
彼女といる時間は楽しかったがもしかしたらこれで終わりかもしれない。
だが、知り合い、友人、恋人……どんな関係になるにしても俺はこのことをハッキリさせたかった。
「……貴方は、そういう所は鋭いんですね」
なにか彼女が呟いたような気がした。
「私が貴方のナンパを受けた理由ですよね……初めは私、完全に断るつもりでした」
そうだ、彼女は最初、とてつもなく冷たい目をしていて、返事も素っ気なかった。
それなのに急に俺のナンパを受けるなんて……例え今の彼氏に不満があったとしてもおかしな話だ。
その上、俺と一緒にこうやってファミレスに来ている。
これには何か理由があるとしか思えない。
「でも、もし相手が自分の知っている人だと気づいたらどうでしょうか、
「へ?」
突然、俺は名前を呼ばれて驚く。
待て待て待て、俺に銀髪美少女の知り合いなんて居ないぞ。
もしや、これは恋愛漫画やドラマでよくある実は昔に離れ離れになった幼馴染だった系か……?!
「もしかして俺たち会ったことがある?! もしかして幼馴染で結婚の約束してたり――」
「いえ、してないですけど」
またしても俺は早とちりしたようだ。
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