第10話 発酵の話
奈々子は悩んでいた。
空腹だったので冷蔵庫を覗いてみたところ、賞味期限切れのものがいくつかあることに気づいたのだ。
捨てるべきか、食らうべきか。
That is question.
シェイクスピアをもじりつつ、奈々子は適当にまだ期限が切れていないプリンに手を伸ばし、少し腹を満たしてから真剣に考えることにした。
プリンは抹茶プリンだった。
そういえば、結婚式で貰ったカステラを出したら抹茶色をしていておいしそうなので、夫に食べさせようとしたらお茶の色ではなくカビの色だったアナウンサーがいたなあ、と思いながら奈々子は食べていた。
食欲が失せそうな話を思い出しつつも、二個目の抹茶プリンを食べたくなっている彼女は豪胆である。
二個目の抹茶プリンも美味だった。
三個目もいきたいけどさすがに太るかな、と思って我慢した奈々子は偉い女性である。
さて、空腹でお腹と背中がくっつくような事態は避けられそうなので、冷蔵庫の整理を始めよう。
奈々子はまずキムチを取り出した。
賞味期限は二週間前。
臭いを嗅いだが問題はなさそうである。
ただこの方法では本当に安全な食品かどうかはわからないので、賢明なる読者の方々におかれましては早めの消費をお願いしたく存じます。
話を戻して奈々子はキムチを捨てるか否かを考えた。
発酵しているほうが本場の味に近いと聞いている。
酸味のあるキムチのほうが彼女は好きだったので捨てないことにした。
次にひきわり納豆を取り出した。
賞味期限はやはり二週間前。
臭いを嗅いだが納豆の特徴的な臭みを考慮しても問題はなさそうである。
ただこの方法では本当に安全な食品かどうかはわからないので、賢明なる読者の方々におかれましては早めの消費をお願いしたく存じます。
話を戻して奈々子はひきわり納豆を捨てるか否かを考えた。
前に三週間ほど賞味期限の過ぎた納豆を食べたが、なんの問題もなかった。
彼女は捨てないことにした。
最後に味噌を取り出した。
賞味期限はまたしても二週間前。
臭いを嗅いだが特になんともなかった
ただこの方法では、いえいえ、賢明なる読者の方々におかれましてはご周知のとおりでしょう。
三度目の話を戻して奈々子は味噌を捨てるか否かを考えた。
そんなに量もないし、明日までには使い切るだろう。
味噌カツが食べたいな、と思って彼女は捨てないことにした。
結局、冷蔵庫から減ったのは抹茶プリンだけであった。
整理作業を終えたので、奈々子はご褒美に三個目の抹茶プリンを食べることにした。
三個目の抹茶プリンも美味であった。
しかし、この行いが後の健康診断にどう響いてくるかは、神のみぞ知る……というほどでもないものの、気をつけておいたほうがいいだろう。
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