3
夕日が沈み
時刻は夜の20時
俺は買い出しで外を歩いていると
今朝子供達が遊んでいた公園に
井上の姿が...
どうして井上が..
井上は公園のベンチに座り
下を向き悩んでいる様子だった、
あんな事があった後だ
声を掛けづらいと思いつつ
俺はヨソヨソしく声を掛けた
「どうしたんだよこんな所で...」
冷たい冬の風を感じさせ
気温がますます下がっていく
井上は俺の声を聞き
顔を合わす事なく俺の名を呼んだ
「北神君...ちょっとね、考え事してたの」
考え事?
仕事の悩みなのだろうか?
それとも...
俺は隣のベンチに座り
「今日の事だったら本当にごめん
もう俺も井上に近付かないし
井上も嫌だったら俺の事を...」
そう言い掛けた途中
「そんなんじゃない!」っと顔を合わせ
そう言った
井上は少し 涙目を浮かべ
「・・・・・ごめん」
っと井上は顔を下に向け謝った、
何故謝られたのか分からないが
俺もごめんと謝った
・・・・・・
数秒間の沈黙が続き
先に喋り始めたのは井上だった
「私、言いたい事いつも言えなくて
本当の気持ちを隠したまま
いつも我慢して生きて来たんだ」
本当の気持ちを隠したまま...
井上もそんな事を...
「吹奏楽やってた時も
本当は部長なんかやりたく無かった、
でも他にやる人が居ないから
仕方なく私が立候補しただけ、
今のプロジェクトも
仕方なくやってるだけだと思う」
自分を偽って生きてる人生は
とてもツライ事だろう、
それを井上は昔から...知らなかった
「仕事なんてやれれば何でも良いし
本当は仕事なんてせず遊んで暮らしたい、
家でダラダラして
寝たい時に寝て遊びたい時に遊んで、
・・・・言いたい事も全て言って」
・・・・・・
なんて言葉を掛けたらいいか
分からなかった、
こんなダラダラ今を過ごして
遊び呆けているような人間の俺には
井上は嬉しそうに言った
北神君の前なのに
何故かこんな話ができる
変なのっと
「・・・・・私も、
いつか本音で話せる時がくるのかな?」
俺はベンチを立ち
「井上なら出来るさ」っと言い
座っている井上に手を差し伸べた
井上の手は氷のように冷たく
温まっていた俺の手を冷やした
「明日もあの喫茶店で会えるかな?」
「・・・行けたら行くよ」
何それ、そう井上はクスクスと笑った
こんな嬉しそうな井上の姿を見るのは
なんだか初めてだ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます