第1話 最初のターン 7:和子―展開(2023.4.)
5歳ぐらいの弾ける笑顔の少年が両親らしき成人男女と手を繋いでいる。少年の右手を繋ぐのが、顔からして若い時分の祖父和幸だから、これは…父の寿和だ。
いや、今までこんな顔してなかったじゃん。元の顔立ちに、喜びの表情を吹き込むと確かにそうだが…別人過ぎる。
そして、少年の左手を繋ぐ臨月の女性。思わず、私は二度見した。早逝した祖母の寿とは…私じゃん。そっくり?他人の空似ではないレベル。祖母なら確かに血は繋がっている親類になるけど、これは私。
いやいやいや、別の写真コラージュしてないし。
頭が、ぐわんぐわんする。
ちょっと常備薬飲もう。椅子から立ち上がったところ、よろめき、支えを掴もうとした手は空振りをし、派手に転ぶ。運悪く、机ごと、PCもスキャナも蹴飛ばした。アプリが固まるどころか、PCのOSの嫌な画面が出ている。スキャナからは先の元写真もはみ出してしまっている。否、はみ出ているどころではない。何枚かピース吹き飛んでいる。作業の手戻り規模は膨大だ。
とりあえず、私は一番時間を食いそうなやつ、PCの電源を長押しした。
はああー。リセット。
RESET
スキャナで、まばゆい閃光が走り、さっきの写真が物理的に復元された。印刷されたての鮮やかな、少しの破れもない写真になっている。
何のリセット、ありえんて。愕然としたのを最後に、電源が切れるがごとく、プツッと私の意識は落ちた。
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