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「…とりあえず永江を連れて教国の神殿にでも行ってみるか」


「教国?ドロウィンでも良くね?」


「アッチの神殿の方がデカくて立派だからな。あと家から近い」


「…まあどこでもいいか」



俺が斉藤に電話をかけながら言うと柴田が不思議そうに聞くので理由を話すと藤原はどうでもよさそうに返す。



「…もしもし?」


「おう斉藤、ちょっと永江を貸してくれ」


「ミアちゃんを?」


「そうそう。ちょっと用が出来てな…多分そんな時間はかからんと思うが」


「うん、分かった。じゃあミアちゃんに帰宅するよう伝えておくね」


「頼む」



斉藤に用件を告げると不思議そうに聞くが俺の話を聞いて了承してくれる。



『ふむ、妾を呼び出すとは珍しいの。して何用じゃ?』


「早かったな。とりあえず俺と一緒に来い…藤」


「あいよ」



電話から5分ぐらいで永江が帰宅したので俺は用件を言った後に藤原に合図を出してスキルの連携で移動した。



『…ほお、大きな建物じゃな』


「まあ『教国』っていうぐらいだからな…他の国よりも神殿には気合入れてんのよ」



家から出て神殿へと行くと入口で永江が意外そうに若干驚いたように言うので俺は適当に軽く説明しながら中へと入る。



『…なんとも…嫌で不快な空間じゃな…』


「まあ魔獣のお前じゃそうかもな」



神殿の奥の方へと進んで行くと永江が気分悪そうな感じで呟くが、特に問題は無さそうなので俺はそのまま祭壇のある奥の大広間へと向かった。



『…うぅむ…こんな所で何を…?一刻も早くこの場から離れたいのじゃが…』



力が抜けていく感覚がする…と、永江は体調悪そうな感じでソワソワしながら尋ねる。



「この祭壇に向かって両手を組んで祈ってくれ」


『…こう、か…?』



階段を上った先にある大きな祭壇の前で指示をする永江が片膝をついて祈りのポーズを取った。



が、全くといっていいほど何も起こらない。



「どうだ?なんか変化はあったか?」


『…何も…しいて言えば疲れのせいで、 今すぐ寝たい気分だ…というぐらいか』


「じゃあ帰るか。確かこの街にはお前の好きな佃煮とか売られてるハズだから好きなだけ買ってやるよ」


『本当か!!では帰ろう!今すぐ帰ろう!さあ!』


「あ」



俺の問いにくたびれたサラリーマンのように力なく返した永江に俺がご褒美を用意すると…



永江は途端に元気になって早足で来た道を戻って行く。





ーーーーー





「おかえりぃ。どうだった?」



神殿の外にあった屋台で虫の佃煮を買い占めて帰宅すると永江は佃煮が大量に入った袋を抱えたまま直ぐに教会へと向かうので、俺が呆れてると藤原が尋ねてくる。



「分からん。永江は疲れたって言ってた」


「まあ、神殿っつったらなぁ…本来なら魔獣が近づけないようになってる場所だし」


「そんなトコに無理やり入ってったらそりゃ疲れるわ」


「でもアイツめっちゃはしゃぎながら出てったぜ?」



俺の返答に柴田が納得しながら返すと藤原も笑いながら賛同し、柴田は帰宅した時の永江の様子を思い出しながら笑う。



…それから三日後。




毎日永江を連れて神殿に行ってると…



なんか神が『力を取り戻した』とかで予定を前倒しにされて俺らは急に元の世界へと戻される事になった。





ーーーーーー





「異世界の者よ、ご苦労であったな」


「…なんでそんな距離空けてんだよ」



真っ白い空間でこの前会った男が10mぐらい離れた位置から感謝の言葉を告げるので、俺は気になって尋ねる。



「い、いや…特に意味は無いぞ。なんとなく急にそなただけ…いや、そなたとの距離を空けたくなっただけで…」


「んで?こんな予定も予想も前触れもなんも関係なく急に戻すんならさぁ、さっさと戻してくれよ」



なんか言い訳のように及び腰のように言う神に俺は呆れながらもイラつきながら返した。



「う、うむ…その前にそなたらには褒美を授けよう。願いを一つ言え」


「願いだぁ?…なんでもか?」


「我に可能な限りはな」



男の意外な発言に俺が確認すると当たり前の事を返される。



「…なんでもかぁ…うーん…いざとなると困るな…いっぱいあるし…」


「この空間は時間の流れが違う。他の者達と同じように長時間悩むがいい」


「『他の者達』?もしかして俺の他にも周りに居んの?」


「いや、そなたが最後だ。…我にも心の準備が要るのでな…」



俺が腕を組んで悩むと男は気を遣ったような事を言うので疑問を聞くと最後にボソッと呟く。



「他の奴らはどんな願いをしてたんだ?」


「大半の者は『金』だな。とはいえ功績に合わせて上限を決めているが」



俺の問いに男は意外にも普通にクラスメイト達の願いを教えてくれる。



「上限?」


「うむ。災魔や害獣を倒す事に貢献する者や人々の安全のために魔獣を多く倒している者と、ただ漫然と日々を過ごしていた者と…では差をつけねば不公平である」


「ほー、そんなトコまでちゃんと考えてんのか。神ってやつは意外としっかりしてんだな」


「当たり前だ。神だぞ」



男の話を聞いて俺が意外に思いながら返すと偉そうに言ってきた。



「んで?金額は?」


「最低一千万円。そこからこの世界で持っていた金が加算される」



俺が内容を聞くとこれまた意外にも普通に内訳を教えてくる。



「おおー…一千万か、豪勢な事だ」


「そなたの功績なら……うむ。5億…いや大変癪ではあるが10億円ぐらいは許可しよう」


「10億!!?」


「本来なら100億円まで許可したんだが、この前の神への狼藉、無礼の数々で天引きだ」



後悔するがいい…と、神はしたり顔でニヤリと笑いながら言う。



「10億かぁ…それだけあればもう一生金に困らねーな…」



減額されても尚、余りある金額だったので俺は腕を組んで真剣に考えた。



「……もし、固有スキルをそのまま…って言ったらイケんのか?」


「固有スキルを?…あちらの世界で、か?…出来ない事もない、が…この世界とあちらの世界では法則や現象などに色々と違いがあるだけに効果も違ってくるぞ?」



俺がふと閃いた事を確認すると男は難しそうな顔で逆に確認を取ってくる。



「どういう風に?」


「こちらでは可能だった事があちらでは不可能になったり、万が一出来たとしても持続時間や効果が弱まったりする。そして固有スキルごとに変化があるのだ、実際にあちらで試さないとどの程度の差異が出るのか我にも分からん」


「…なるほど」



男の話を聞いて俺はまたしても考え…



「…よし!じゃあ俺は………」


「…それで本当に良いんだな?」


「おう。男に二言はねぇ」


「ではさらばだ、異世界の者達よ。我が世界を救ってくれて感謝する」



願いを決めて告げると男に確認され、了承すると急に足元に穴が空いて男が別れの挨拶を言った後に感謝の言葉を述べた。










ーーーー完ーーーー

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