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「おっ、居た居た。いやでも多くないかな?」



北に二時間ほど移動して山に近づくと麓の前で黒い大型の狼のような魔獣を発見したが、その周りにもいて…



多分群れであろう30体ぐらいの数が確認されたので俺は不安になりながら馬車を止める。



「アレは…ガルムか」


「試し斬りには持ってこいだな」



ドロウィンの王子が馬車から降りながら魔獣を見て名前を言うとモニクァの王子が首の骨を鳴らしながら笑う。



「アレ全部相手にするのは大変じゃない?何体か誘い出した方が良いと思うけど


「…大丈夫…」


「この装備であれば問題あるまい」


「ええ」



流石に魔獣の数が数なので俺が提案するもワウシャープの王子がそう返して馬車から降り、トルツの王子と教国の王女も降りて行く。



「ははは!では行くぞ!俺様が一番乗りだ!」



俺も仕方なく馬車を降り…みんなが降りて来た事を確認したモニクァの王子が笑いながら合図を出し、我先にと駆け出した。



「では我々も行きましょうか」


「…お先に…」



モニクァの王子に華を持たせるように他の王子達は少し時間を空けてから動き出すとワウシャープの王子の姿が消える。



「そうら!…ははっ!コレは良い!なんて斬れ味だ!素晴らしい!」


「…身体が軽い…!」


「ふっ!」



モニクァの王子が武器を振るって魔獣を軽く一刀両断にすると興奮したように叫び、ワウシャープの王子はまさに目にも留まらぬ速さで魔獣を斬り刻み…



ドロウィンの王子も大剣を振り下ろして魔獣を一刀両断にした。





「…うーん…凄い…」



『攻撃力増加』『ダメージアップ』『追加ダメージ』の攻撃一辺倒のエンチャを選んだモニクァの王子が魔獣達を軽々と一刀両断にし…



『素早さ』『ダメージアップ』のエンチャを選んだワウシャープの王子は残像が見えるほどの速さで魔獣を撹乱しながら減らしていき…



『魔法ダメージアップ』『消費MP減少』のエンチャを選んだトルツの王子が後方で魔法で支援しながら魔法を付与した弓矢でさながらレーザーのごとく一発で魔獣を貫通させて消し飛ばす。



…その三人のおかげで『防御力増加』『被ダメージカット』『HP増加』のエンチャを選んだドロウィンの王子は孤立していく魔獣を端から削るように一体ずつ大剣で一刀両断していく…という地味な作業をさせられ…



『魔力増加』『最大MP増加』『ダメージカット』のエンチャを選んだ教国の王女に至っては俺の隣でやる事なく暇している。



「ははは、もう終わりか」


「相手にもなりませんでしたな」


「…私の役割は無かったか…」


「…私も同じでしたわ」



魔獣が居なくなるとモニクァとトルツの王子が余裕そうに笑い、ドロウィンの王子が気まずそうに呟くと教国の王女が同意した。



「いやしかし、ガルムといえば厄介な魔獣だったハズだが…あまりに歯ごたえが無さ過ぎる」


「…多分、この装備だと…災魔や害獣とも渡り合える…かも」


「渡り合えるどころか倒せるよ。その装備なら」



特にこのメンツなら災魔や害獣でも余裕でしょ。と、俺はワウシャープの王子に訂正するように返す。



「なんだと!?…そんな装備を…本当にいいのか?」


「まあ別に要らないなら返してくれてもいいけど」


「とんでもない!コレは家宝としてありがたく頂戴いたす!」



モニクァの王子の確認に俺がそう返すと断りながら大袈裟な事を言い出した。



「家宝て。そんな大袈裟な…まあいいや。とりあえず用も済んだし、戻ろうか」


「…うん」


「良いストレス発散になったな」


「鷹狩りならぬ『魔獣狩り』というのも面白そうだ」



俺は呆れながら呟いて帰還を促すとみんな馬車へと乗り込んだので、そのまま拠点へと帰る事に。




…そして昼食後。




「ん?」



野郎三人でゲームをしてると井上からの着信が。



「もしもし?」


「おう、海原か?分かったぜ。生贄とか捧げる方法」


「…何言ってんだ?お前」


「ん?どーかしたのか?」



俺が電話に出ると井上はいきなり意味不明な事を言い出すので『意味分からん』と思いながら聞き返すと柴田が不思議そうに聞いてくる。



「ほら、魔獣の力が必要とかで生贄がどうとか言ってただろ?」


「あー」


「どした?」


「なんか井上が生贄の方法が分かったとか言ってな」


「「生贄ぇ?」」



井上の説得に俺が納得すると藤原も聞いて来たので内容をそのまま伝えると二人とも訝しむような顔でハモりながら聞き返してきた。



「で?その方法って?」


「神殿で祈りを捧げさせるだけで良いんだと」


「はあ?そんな簡単な事で?マジ?」


「なあ海。なんて?」



俺が尋ねると井上はえらい簡単な方法を伝えてくるので疑いながら確認すると藤原が急かすように聞いてくる。



「なんか永江に神殿で祈りを捧げさせるだけで良いんだと。ホントか?」


「「はあ?」」


「ちゃんと姫に確認したから大丈夫だ。俺も『本当かよ?』って疑ったら逆ギレされたし」



俺の発言に二人がまたしても信じられないような同じ反応をすると井上が笑って俺らの反応に同意しながら返す。



「んで?その祈りってのは?」


「分からん。姫はとりあえず神殿内に居るだけで良いって言ってたが…ん?あ、ごめん。切るわ」


「あ」



俺が詳細を聞くも井上は曖昧な事を言ってなんか用事が出来たのか謝って電話を切った。

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