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「…おや、料理長…王妃に用ですか?」


「ああ。少し話があってな」


「…ではどうぞ」



王妃の部屋の前に着くと見張りの兵が尋ねてくるので料理長が肯定しながら返すと兵はノックしてからドアを開ける。



「…おや?ガンディーニシェフ?どうしました?」


「いやなに、兄ちゃん達がそろそろ国に帰るってんでな…」


「まあ!そうなのですか!?」


「あ、うん」



王妃は料理長が用件を話してる最中に驚きなながら俺に確認を取った。



「それでいつ戻って来るか分からねぇから今の内に一生分のアイシェを作ってってくれるそうだ」


「まあ素敵!」



料理長の誇張表現に王妃は手を叩いて喜ぶ。



「そのためには広い地下室と大型の樽が必要になってくるんだが…」


「樽は今すぐあるだけ集めましょう。地下室は…」


「地下牢を使わせてくれ。どうせ使ってねぇんだ、旧棟の地下牢があれば十分だろう?」


「そうですね…許可します。今すぐ手続きを…」



料理長が提案すると王妃は少し考えてすぐさま行動に移す。




…それから夜遅くまで料理長やお姉さん、王妃達と一緒に俺の兵達の魔法農法を駆使しまくってエグい量のワインを仕込んだ。




…翌朝。




「たでーまー」


「おう。どうだった?」


「どれくらいの量作ったんだ?」


「えーと、2000Lの大樽を…数十個分ぐらい」


「「2000!?」」



城で一泊してスキルの連携で帰宅すると柴田と藤原が聞いてくるので、思い出しながら返すと当然驚く。



「あれ?100個までいってたっけ?やべー…個数までは覚えてねーわ」


「いやいやいや!10個でも2万だぞ!?」


「ソレを100個ってったら20万リットルになんぞ!?」



俺が更に思い出すように言うと柴田と藤原がツッコむように確認してくる。



「そりゃもう複数の家の畑で魔法農法フル回転よ。常に大雨降らして収穫しまくってたからな」


「…おめーの本気になった時の規模やべーわ…」


「な…ワインの瓶何万本分だよ…」



俺の楽観的な説明に柴田が呆れたようにヒきながら呟くと藤原も同じ様子で同意しながら呟く。



「霊水のヤツが一本1Lだから一万本ぐらいじゃね?」


「…い、一万…?ってか霊水のヤツって確か…」


「一本何億とかのヤツだよな…?それの一万って…?」


「ちょ、兆…?だめだ、もう分からん」



俺が軽く説明すると藤原と柴田はもうついていけない様子で呆れたように諦めた。



「まあおかげで保管してた霊水を全部使っちまってな。もう持ってるジュース30本分しかないから、ソレが無くなったらまた回収に行かないといけないわ」


「つーかあの回収した霊水ってそんなにあったのかよ」


「流石に採りすぎだろ」



俺の報告に藤原と柴田は笑いながらツッコミを入れるように返す。



「ま、実際は既に使ったのを合わせると更に2000Lぐらい増えんだが…そこはどうでもいいか」


「…そう考えると自然の恵みってすげーな。その何万リットルの霊水作んのにどれぐらいかかんの?」


「霊水作りに没頭しても5年…いや、10年ぐらいはかかるかな?この前の聖水作った時のメンツが集まれば一年かからないだろうけど」


「…マジか」



柴田の疑問に俺が考えながら予想で答えると藤原は驚きながら呟いた。



…そして朝食後。



「俺ちょっと出るから」


「またか?」


「今度はどこにだ?」



ゲームを始める前に外出を告げると藤原と柴田が不思議そうに尋ねる。



「今度は王子達んトコ」


「「あー…」」



俺が行き先を教えたら藤原と柴田は納得したように呟く。



「…んじゃ、ちょっくら行って来るわ」


「おう」


「行ってら」



俺はどの王子の所に行こうか考えた結果、とりあえず佐藤や清水の居ないトルツの大使館的な所に行くことにした。



「…おや、ウミハラ殿。王子に用ですかな?」



…トルツの大使館的な建物に入ると俺はもはや顔パスで中に入り、王子の居る部屋へと向かってると廊下で王子の部下に話しかけられる。



「うん。ちょっとね」


「そうですか。王子は中で書類作業を行なっております」



俺が肯定しながら返すと部下の兵は部屋の前までついてきてドアをノックしてくれた。



「…入れ」


「では私はこれで」


「ありがと」



入室許可が下りると部下の兵がドアを開けて去って行くので俺はお礼を言いながら部屋の中に入る。



「…ウミハラ殿?珍しい…どうかしたんですか?」


「いや、ちょっと暇つぶしで遊びに来ただけ。忙しいならまた出直すけど」


「全然。緊急などではないため書類作業など後回しでも問題はありません」


「そう?悪いね」



王子の問いに俺が配慮するように答えると否定しながら書類を机の中に片付けるので、俺はソファに座った。



「あとちょっと話があって…他の王子達を呼ぶ事も出来る?」


「分かりました。連絡を取ってみましょう」



俺がちょっと遠慮しながら中々に図々しいお願いをするも、王子は嫌な顔一つせずにガラケーを取り出して他の王子に電話してくれる。



…すると10分もしない内に他の王子が集まって来た。



「いやー、忙しい所を呼び出す形になっちゃって悪いね」


「なに、書類作業ばかりでは肩がこるからな。気晴らしにはちょうどいい」


「…ん。…ちょうど休憩…」


「それより話とは?ウミハラ殿がみんなを集めての話など珍しくはないか?」



大使館の応接室みたいな所で俺が王子達を見ながら謝ると、モニクァの王子とワウシャープの王子が気を遣ってくれたかのように返してドロウィンの王子が意外そうに聞く。



「本当は一人一人話して行った方が良かったんだろうけど…めんどくさくなったから」


「…ふふっ。だからといって私達を集めますか…」



俺が呼び出した理由を告げると教国の王女が笑って毒のある言い方をしながら呟いた。

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