276
「…ん?そういえばマイヤー殿は?」
「ふふ…兄様はこの前からずっと聖石の研究に躍起になっております。『このままではウミハラ殿に負けてしまう』と…負けず嫌いですからね…」
ウミハラ殿に任せておけばいいのに…と、教国の第一王子と双子の第一王女はモニクァの王子の問いに笑いながら答える。
「あー、ソレなんだけど…俺らねぇ、そろそろ国に帰ろうかと思ってんのよ」
「「「「国に!?」」」」
「…なんで驚いているのですか?彼にも帰る故郷ぐらいあるでしょう?」
俺が本題をサラッと話すと王子達の反応が被り、王女は不思議そうに聞いた。
「い、いや…そうなんだが…確かにそう言われると…しかし…」
「…ウミハラ殿の生まれ故郷の話は聞いた事がなかったもので…」
「あー、まああんまり話しても無意味だから何も言わなかった…って事もあるから…」
モニクァとトルツの王子が衝撃覚めやらぬ感じで呟くので、俺は言い訳のように理由を話す。
「それで?帰国はいつになる予定だ?」
「早くて一週間ぐらいだね。遅いともう少しかかるかもしれない」
「いつごろ戻ってくる予定ですか?」
ドロウィンの王子の問いに予想で返すと王女は料理長みたく俺が戻って来る前提で聞いてきた。
「そこはちょっと分からねーな。今までみたくいつでも戻って来れるんならわざわざこんな報告なんてしなくていいし」
「…確かに。浅慮でした…反省します」
「やはりウミハラ殿みたいな偉大な人材をそう簡単には手放すような事はしないか…どこの国だ?外交で交渉すれば短期でも構わないし、なんならこちらから出向くという考えもあるが」
「「「確かに!」」」
俺の返答に王女が謝るとトルツの王子が国に交渉するような事を言い出すと他の王子も『その手があったか!』みたいな感じで賛同する。
「俺らは日本って国から来たんだけど」
「「「「「ニホン?」」」」」
「…初めて聞く名だ」
「…私もです」
「うむ…そのような国は聞いた事が無い」
「自分も」
「私もだ」
俺が出身国の国名を教えるもこの世界の住民達からしたら異世界にある国なので…
当然みんな不思議そうな反応をした。
「なんせ極東の小さな島国だからね。まあどこから見て極東なのか分からないけど…あと多分鎖国状態だろうし、知らないのも無理はないよ」
「なるほど…神秘的な国ですのね」
俺は適当な感じでこの世界に当てはまりそうな予想をしながら話すと王女が微笑んでよく分からない事を言う。
「…今の話のどこに神秘性が…?カケラも無かったと思うけど…?」
「ウミハラ殿や英雄殿達が埋もれるほどならば十分に神秘的だろう」
「…まるで、妖精の国…」
俺が呆れながら呟くとモニクァの王子が笑いながら王女の考えに肯定するよう返し、ワウシャープの王子がネバーランド的な事を言い出す。
「いや俺らどう見ても人間じゃん」
「ただの例え話だ。いや、本当に人間なのか…?」
「人間だよ!」
「「「ははは!」」」
俺の否定的な言葉にドロウィンの王子も笑いながら解説するように言うが、なぜかボケてくるので俺がツッコミを入れるとみんなが笑う。
「…まあとりあえず、ココにいつまた戻って来れるか分からないから今の内にワインの在庫を全部出そうと思ってるんだけど…」
「なんと!ソレはありがたい!」
「買える分全部買わせてくれ!」
「…ノンアルと、霊水のが欲しい」
「私の分もよろしくお願いします」
みんなの笑いが治まる頃合いを見て次の話を切り出すとドロウィンの王子以外のみんなが食いつく。
「おや?ギルバート殿はよろしいのですか?」
いつもならみんなと同じように食いつくはずの王子が一人、話の輪に入ってない事に気付いたトルツの王子が不思議そうに確認すると…
「私にはまだ在庫がありますので」
と、王妃から話を聞いてるのかドロウィンの王子は大人の余裕を見せながら断るように返した。
「そう?じゃあ一人分多めに分配できるね」
「本当か!はっはっは!ギルバート殿、感謝いたすぞ!」
俺が一人分の在庫が出来た事を告げるとモニクァの王子が何故か勝ち誇ったかのような顔で笑う。
ーーーーーー
…それから数十分後、王子達が選んだワインをそれぞれ複数個のクーラーボックスに分けて置き…
「今は手持ちがないだろうし、金は後からでもいいよ」
「助かります。今日中には揃えて支払いますので…」
「…ありがたい…後から必ず、持って行かせる」
俺が後払いを容認するよう告げると王女とワウシャープの王子は感謝しながら返す。
「とりあえずこのクーラーボックスに名前書いて貼っとくから帰る時に忘れないようにね」
「うむ!助かる。忘れるわけがないとは思うが気をつけよう…もしもの時のために兵に伝言せねば」
「あっ!そうですね」
「…念のため…」
兵に国名の書かれた付箋をクーラーボックスに貼らせて注意するとモニクァの王子が予防策として外の部下に伝えに行き…
王女とワウシャープの王子もついて行くように外に出る。
「伝言頼むぐらいならそのまま持って行かせばいいのに」
「いや、こんな大切な物を自分の目の届かない場所で人に運ばせるなど無理だ。部下を信頼するしない以前の問題で、運搬中に何が起こるか分からないからな」
「…ですね。やはり自分の手で運ばないと不安と心配で落ち着けないですし…」
俺の呆れながらの発言にドロウィンの王子が反論するように理由を説明するとトルツの王子は頷きながら同意した。
「そんなもんかね?」
「ははは、ウミハラ殿が理解するにはまだ早いかもしれないな」
「その前に私達にとってはかけがえのない物でも、ウミハラ殿にとってはただの量産品に過ぎませんから…同じ品物でも感じる価値が天と地ほども離れていますよ」
俺が呆れたまま返すとドロウィンの王子は大人の余裕的な感じで笑いながら言うが、トルツの王子がよく分からん感じで否定する。
「私達のダイヤもウミハラ殿にとってはただの小石というわけか…」
「まあ宝石って、言っちゃなんだけど普通にただの石だしな」
「ははは!違いない!」
「うん?なにやら楽しそうな話をしているようだな」
「…宝石…?」
希少性の例え話をするドロウィンの王子に俺がツッコむように指摘するとトルツの王子が笑い、モニクァとワウシャープの王子や教国の王女が戻って来た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます