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「おーっす。みんな揃ってなにしてんだ?」


「おっ、イノか…いやな…」



庭にスキルで移動して来た井上を兵に食堂まで案内させると、ドアを開けながら意外そうに聞くので駒込が清水から聞いた話をする。



「…はあっ!?災魔が邪神を復活させようとしてて、でもその邪神は死皇帝とかいうのに既にやられてたぁ!?…というかその『死皇帝』ってアレだろ?柴田達が倒したっていう、どっかの国の博物館に展示されてる…」



井上は驚きながら聞いた情報の真偽を確かめるように言うと柴田を見て確認するように聞く。



「私達が居た国の『ドロウィン』の王都にあるよ」


「装備は深山が着けてるしな。まさかそんなヤバイ奴のモノだとは思わなかったが…」


「いや、私達もだよ」


「「「「うん」」」」



佐藤が場所を教えると駒込が微妙な顔をしながら深山を見て言うと住吉が同意するように言い、この場にいる女子全員の言葉が被った。



「そんな事ある?装備のステータスとかでどんだけ凄いとか分からんか?普通」


「だって私達普段ゲームとかあんまやらないし…」


「あー…じゃあ無理か」



井上の言葉に深山が言い訳するように返すと頭を掻きながら納得する。



「でも装備のステが気になるな。9000とかいってる感じ?」


「あ、私達の装備でそれぐらい」


「「「マジで!?」」」「「ホント!?」」



井上が興味本位で聞くと斉藤が返し、俺ら三人以外の野郎達と小林が同時に驚く。



「う、うん…魔法防御?っていうのは一万超えてるけど」


「一万超え!?マジ?じゃあもう魔法ダメージほぼ1か0じゃん!」


「一万って…海原くんが作る防具の約5倍…?」


「まあ今更になるけど本当はもっと高性能なヤツ作れっけどな」


「マジで今更!」



斉藤の余計な補足に石井が更に驚くと飯島が俺を見ながら呟くので訂正すると駒込がツッコんできた。



「多分海が最高性能のヤツ作ったら桁が二つか三つぐらいちげーぞ」


「…そんなに凄いの?」


「おう。そりゃすげーぜ?俺らも試作品見た時はめっちゃ驚いたし」



柴田が笑いながらその際の金額について触れると小林が軽く驚いたように尋ね、藤原も笑いながら返す。



「まあ流石にその死霊王の装備には届かんがな」


「いや、装備の一式揃えたらエンチャの効果で死霊王ぐらいなら超えるだろ。流石に死皇帝クラスは無理だと思うけど」


「…なんか軽く言ってるが…その死霊王の装備が基準っておかしくないか?この世界で一番強い奴の装備が6000から7000だろ?」


「え?そんなもん?」


「「「え?」」」


「…まあ海は冒険者じゃねーからそこら辺の事情に疎いんだよな…」



俺の謙遜に藤原が反論すると駒込がツッコむように教えてくれるので、俺が意外に思いながら聞くと飯島達に驚いたように聞き返され…柴田がフォローするように言う。



「…じゃあ、もし海原が本気で防具や武器作ったらどうなるの?」


「一個あたり平均6000のステにプラスで4つのエンチャが付く」


「「「はあっ!?」」」「「えっ!? 」」


「いやー、その反応分かるわぁ…懐かしい」



小林が興味津々といった様子で聞くと何故か藤原がドヤ顔で答え…



小林とその他野郎が驚く様を見て柴田がニヤニヤ笑いながら言った。



「…一個あたり4つのエンチャントって…つまり…?」


「察しの通りアクセ除いたら最高20個のエンチャが付く事になる」


「「「「はー!?」」」」「「えー!? 」」


「アクセ二個で28だから…重複とか考えて調整しながらソレをフル装備したら害獣だろうと災魔だろうと雑魚よ雑魚。向かうとこ敵なしのチート無双状態だぜ」



駒込が呆然とした様子で確認するように呟くと柴田がまるでマウントでも取るようにドヤ顔で告げて、またしても驚く面々に今度は藤原が同じようにドヤ顔で告げる。



「いやいや嘘だろ!そんな事ある!?ってかなんでそんな…!」


「確かにソレを聞いたら桁が違う…一つの装備でどれだけの値段に…?」


「まあそんな事より井上。どうだった?」


「「「そんなことより!?」」」



石井は取り乱したように驚き、小林は呆然と呟き、俺ら以外のみんな…



あの灰村でさえ驚きのあまり腕組みを解いて呆然とした様子を見せるカオスな空気の中、蚊帳の外だった俺が流すように井上に確認すると駒込と小林と飯島がまたしても驚く。



「全然そんなことじゃ…えー…」


「あ、ああ…ちゃんと聞いて来たぞ。なんでも急に災厄クラスの魔獣が増えたようで…姫が言うにはソイツを倒さないと俺達は元の世界には戻れないようだ」



小林が納得いかなそうに言うも井上はそれに触れずに巫女から聞いたんであろう情報を報告した。



「マジか、中ボスを全部倒した後のボス登場みたいなモンか?めんどくせー」


「マジでな。これで邪神復活だったら一周回って逆に面白いんだが」


「一応蛇神って言ってたぜ?蛇の神だけど」


「「「…は?」」」



怠そうな感じで言う藤原に柴田が賛同しつつも笑い話に持っていくと井上が読みが同じ魔獣の名前を言うので俺ら三人の反応が被る。



「蛇の神か…なんか強そう」


「…そういえば蛇神エキドナとかいうヤツが一時期話題になってたな」


「そう、ソイツ。『蛇神エキドナ』っていう魔獣を倒せと言われたんだが…問題はどこに居るかが分からないらしくてな。姫は『普通の魔獣とは違うから一目見たら直ぐに分かる』とも言ってたが…」


「…ね、ねぇ海原…もしかして…」



小林や駒込の言葉に井上が困った感じを出しながらそう返すと、佐藤が永江を見ながら困惑したように声をかけてきた。



「いやー、流石にないんじゃね?同じ名前の魔獣はいっぱい居るだろうし」


「だ、だよね…」


「…あっ…」



俺が否定的に返したら佐藤は安心したように呟き、清水が水晶玉を見て小さく呟くと俺を見る。



「…もしかして…」


「…うん」



柴田の察したような問いに清水は困惑しながら頷く。



「…マジかぁ~…海、どうする?」


「どうする、ったって……なあ斉藤…永江が今の話に出てきた魔獣だったらどうする…?」



藤原が顔に手を当てて判断を仰いで来るので俺は斉藤に近づいて小声で聞いた。



「えっ!ミアちゃんが!?」


「ん?どうした?」


「いや、こっちの話。気にすんな」



斉藤の驚いたような反応を見て駒込が不思議そうに聞いて来たので俺が適当にごまかす。

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