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「げー!アレ、ミノタウルスじゃん!」


「マジかー…ミノタウルスっつったらCランクじゃなかったっけ?俺らじゃ多分勝てねーぞ」


「どうする?」



魔獣を見て柴田と藤原が嫌そうに言って俺に話を振る。



「どうするもこうするも斉藤助けたら逃げるしかないだろ」


「…だな」


「とりあえず斉藤を怪我させないように攻撃力を縛っとくわ」



俺が鉄格子の向こう側に大量の兵士を召喚してミノタウルスに向かわせると柴田もスキルを使う。



…が、やはり範囲攻撃を縛らないと意味ないのかミノタウルスの斧の一振りで数人から十数人の兵士が消えていく。



「おおー…あっぶねーな。藤、斉藤を避難させといた方が良くね?」


「そだな」



ミノタウルスが大暴れする様子を見て柴田が指示をすると藤原は俺の兵一人と斉藤をスキルで隔離する。



「…いや、良く考えたらミノタウルスを隔離してる間に斉藤を助けに行った方が良かったんじゃね?」



数分間兵士達が次々と薙ぎ払われていく様子を見てぼーっとしていたら、ふと思いついてしまった。



「そっか。じゃあいつも通り範囲攻撃縛るわ」


「じゃあ斉藤戻してミノタウルスを隔離…と」



二人は俺の思いつきに賛同し、敵が一体だけなのでいつも通りの戦術を取る事に。



「どっから行く?」


「どっちでも良くね?」


「じゃあ右だ、右」


「よしきた」


「待って!」



俺らが右の方から行こうとすると斉藤が止める。



「来ないで!」


「…どうする?本人めっちゃ嫌がってっけど」


「そだなー…住吉には『助けて』って言われたし…」



俺は斉藤の意思を尊重する事にして一旦立ち止まって他の二人の意見を聞く事に。



するとズシン、ズシン…とまたしても重量のありそうな足音が聞こえてきた。



「え、えー」


「もう一匹!?」


「お、おい…やべぇんじゃ…」



斉藤側の左から出て来たもう一体のミノタウルスの姿に俺らは困惑して軽くパニック状態に陥る。



「だから、早く逃げてって!」


「うるせえ!黙れ!」


「柴!」


「おう!」



ミノタウルスが、逃げるよう叫んだ斉藤の方を向くので藤原が鉄格子を蹴飛ばしてミノタウルスの気を引くように叫ぶ。



「あ!」


「ちょっ…!」



俺がもう一体のミノタウルスの方に大量の兵士を向かわせると…



別空間に居た兵士達は範囲攻撃で全てやられたのか最初の一匹が戻って来た。



「「ブモォー!!」」


「や、やべぇ!二匹に増えたぞ!海!どうすんだよ!俺が縛れるのは一匹だけだぞ!」


「とりあえず斉藤は隔離したけど…ここからどうする?」


「下手したらあの横穴からこっち側に来るかもしれんしな…どうするよ?」



二匹のミノタウルスが鉄格子の前まで近づいて来ての威嚇に俺らはまたしても軽いパニック状態だ。



「これ以上増えたらマジでやべーってかコッチ来たらどうすんの?」


「知らねーよ。だからと言って斉藤を置いてけねーだろ…おい、海、お前の兵隊で斉藤だけ運ぶ事はできねーのかよ」


「さっきやってたけど無理だったじゃねぇか。あいつらの範囲攻撃をどうにかしねぇ事にはな」


「じゃあどうすんだよ!俺のスキルにも時間制限あんだぞ!」


「そりゃかけ直せばいいだけだろ」


「あ、そっか」



…俺ら三人で色々と話し合うも状況を打破する案が浮かばないまま時間だけが過ぎていく。



「「ブモォー!ブモー!」」


「おいおい、あいつら遂に鉄格子に攻撃し始めたぞ」


「…一か八か、一匹別空間に送って残ったやつ縛って斉藤だけ引っ張ってくか?」


「でも俺の兵が速攻でやられたら全滅すんぞ」


「でもやらないよりはマシだろ」



ミノタウルスが雄叫びを上げながら斧で鉄格子を殴り始めると柴田が賭けのような作戦を告げる。



「…待てよ?おい、藤。お前のスキルって座標移動とか出来ねえのか?」



柴田の『別空間』という単語に俺はふと漫画で読んだ事のある知識を思いついたので藤原に聞いてみた。



「あ?座標移動?」


「こっちの空間に戻す時に斉藤の座標…位置を変える事は出来るか?」


「出来るわけねーだろ、そんなんやったことねーし」


「じゃあやってみようぜ」


「はあ!?」



俺がチャレンジするように親指を立てながら言うと藤原はありえないといった感じで驚く。



「海お前何聞いてたんだよ!俺出来ねーって言ったじゃん!」


「うるせー、男なら出来る出来ないじゃなくて『やる』んだよ」


「大丈夫大丈夫。藤、お前なら出来るって」


「柴…お前他人事だと思って…失敗しても知らんからな!」



俺と柴田の後押しに藤原はヤケクソ気味になって挑戦する気になった。



「えーと、座標…位置?」



藤原が考え込むようにぶつぶつ呟くと斉藤が戻ってくる。



が、さっきの位置と変わらない。



「やべっ!」


「おい、藤。斉藤の位置変わらなかったぞ」


「うるせー、座標とか位置とか難しいんだよ」


「じゃあ藤、お前を中心に空間を動かしたらどうだ?」



また斉藤と俺の兵士の姿が消えると柴田がアドバイスするように言う。



「空間?…あっ」

「あ」

「あ」


「やべ!」



…柴田のアドバイスが功を奏したのか斉藤の姿がさっきとは違う位置に現れた…



のは良かったが…よりにもよって二体のミノタウルスの間に挟まれるような位置に現れ、藤原は焦ってスキルを使い斉藤の姿が消える。

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