5
…その翌日。
いつも通り雑用の依頼を受けて金を稼いでいると柴田からの着信が。
なんでも『急いで来い!』と言われたので指定された場所へとのんびり向かう。
「おい、海。斉藤が魔獣にさらわれたらしいぜ!」
着くや否や藤原が駆け寄って来て問題が発生したかのような事を言う。
「斉藤?」
「クラスメイトの女子だよ!女子!」
「へー、で、さらわれたってのは?」
「魔獣が斉藤を捕まえて連れてったんだと」
「マジで?」
魔獣が人を誘拐する…なんて聞いた事ないので俺は半信半疑で確認する。
「マジだって!」
…ココで急に制服姿の女子が会話に乱入してきた。
「だから誰でも良いから早く斉藤を助けに行ってよ!」
「…コイツ誰だっけ?」
「住吉だって」
「あー、そういやそんな名前の女子が居たな」
結構な男勝り…もといボーイッシュな女子の焦ったようなお願いを聞いて俺はまず初めに名前を確認する事に。
「海原がこいつらのリーダーなんでしょ?お願い!」
「マジで?俺がリーダーでいいの?」
「良くない」
「良いわけあるか!」
住吉の発言に俺が二人に確認を取るも即否定的に返され却下された。
「まあお前がリーダーかどうかはさて置き…どうする?」
「どうする、ったってなぁ?クラスメイトを見殺しにするわけにもいかんし」
「じゃあ行くか」
「俺らが行ってどうにかなるもんなのか?」
そこら辺のパーティに任せた方が良くね?と、藤原はちょっと弱気な発言をする。
「んなもん行ってみねーと分からねぇだろ。なあ?」
「そだな」
「…じゃあ行くか」
柴田の確認に俺が頷くと藤原は不安そうにしつつも先頭に立って歩き出した。
「ん?そういや斉藤が居る場所とか分かんのか?」
馬車で町から離れて少ししたところで俺は疑問に思ったので二人に聞いてみる。
「海が来る前に住吉から聞いた。近くの洞窟のダンジョンだと」
「ダンジョン?ただの洞窟だろ?」
藤原の返答に俺は新たな疑問が浮かんできた。
「魔獣が居たらそれだけでダンジョン呼びになるらしいぜ」
「へー」
「海、お前もしかしてパーティに入った事ないのか?」
柴田の説明に俺が適当な感じで返すと若干驚いたように聞いてきた。
「ねぇな。そもそも俺はお前らと違って冒険者じゃねぇし」
「くっ…!このチート野郎が!」
「おめーも一回パーティを探す苦労と追い出される悲しみを味わえや!」
スキルの関係上、別にパーティを組まなくても…そもそも冒険者にならずとも日銭を稼ぐのに問題は無いのでソレを告げると二人に嫉妬された。
…そうこうしてる間に目的地の洞窟へと到着。
「よし、行くか」
「おう」
「そうだな」
馬車から降りた俺らは少しの間洞窟を見て本当に入ろうかどうか悩んでいたが…
藤原が合図をして先に入って行くので俺と柴田もそれに賛同して中に入った。
「おおー、居るわ居るわ。魔獣どもが雁首そろえてよぉ」
…何故か洞窟の中はちょっと薄暗い程度で普通に周りが見渡せるような明るさだった。
「普通洞窟って暗いもんじゃねぇの?」
「場所によって違うだろ。灯りが必要なところもあったし」
「そんなもんか」
「げっ!気づかれた。おい、藤」
「はいよー」
なるべく魔獣を避けながら歩くも完全に避けられるわけもなく…
柴田が藤原に合図を出すと俺の兵一体と魔獣をスキルで隔離させ、その隙に急いでその場を離れる。
そうして敵との接触を避け続けて奥に進んでいると…
「んお、なんか広いとこに出たな」
「雰囲気的にココが最深部っぽいけど…」
「あ!おいアレ!」
「…魔法陣?」
「ちげぇよ!奥!奥!」
俺が鉄格子の向こう側にいる斉藤の姿を確認して指差すも柴田は全然違う方を見た。
「お!ホントだ。無事で良かったな…にしてもこの扉どうやって開けんだ?」
藤原が鉄格子に近づいてドアの部分を引っ張るもやっぱり鍵がかかっているのかガチャガチャという音がして開く様子が無い。
「あなた達は…!」
「よっす、斉藤。住吉に聞いて助けに来たぜ」
「逃げて!奴らが来る前に…!」
ロープで上半身ぐるぐる巻きにされている斉藤が俺たちに気づいたので、柴田が声をかけるも鉄格子から離れて更に奥に行くように移動しながら警告された。
「奴ら?」
「おい、やっぱりなんか開けるには鍵が必要みたいだな。洞窟のどっかから取ってこないといけんかも」
「あっち側穴空いてるし、こっちから行けんじゃね?」
俺がドアをガシャガシャやって確認した事を報告すると、柴田が俺ら側の両側にある横穴と斉藤側にある横穴の存在に気づく。
「んじゃ行ってみっか」
「来ないで!私の事はいいから早く逃げて!まだ時間はあるから…」
斉藤が何かを言いかけると牛の鳴き声みたいなのが大音量で聞こえてきた。
「うそ…!そんな!だってまだ時間じゃないはず…!」
「お、おい…この展開ってイベントじゃねぇの?」
斉藤の驚愕したような呟きに柴田が辺りを見渡しながら呟く。
「逃げて!早く!アレが来る!」
「逃げろったってなあ?」
「流石にクラスメイトを見殺しにするわけにも…」
俺と藤原が斉藤に反発するとズシン…ズシン…と重量感のある音が聞こえ…
斉藤側の右の穴から牛の頭をした巨人が現れた。
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