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…翌日。



一番最初にDクラスの中でも最弱とされる魔獣討伐の依頼を受け、柴田の作戦が本当に実行可能かを確かめる事にした。





ーーーーー





…結果は成功。



どうやら藤原のスキルは色々と本人の判断での融通が利くらしい。



柴田の縛りも有効なのかは分からないがとりあえず範囲攻撃を縛る事自体は出来るとの事。



検証は済んだので、俺たちは報酬を三等分して一旦別れ…



俺はいつも通りFとEの依頼を片っ端から受けて資金調達をした。



「お、そういえば!海原お前聞いた?」


「聞いた聞いた」


「嘘つけ!」



柴田の良くあるウザい問いに俺が適当に流すとツッコむように声の大きさを上げる。



「昼間に藤原から聞いたんだけど、なんか近くの町に女子が居たみたいだぜ」


「マジで?」


「おう。どうする?行ってみっか?」


「そうだな…とりあえず依頼が無くなったら行くか。その町の空き家がいくらするか分からんし、金は一円でも多い方がいいだろ」


「そだな」



藤原が風呂に入っている間に俺と柴田で簡単な予定を立てた。




…そして4日後。



雑用と呼ばれるFランクEランクの依頼がついに尽きたので…



俺たちはクラスメイト女子が目撃された町へと向かう事に。



「なあ藤、この町からどれくらいかかるんだ?」


「さあな。俺の場合はパーティが急いでたから馬で休まず移動して一日ぐらいだったし」


「途中に村とかあんのか?」


「通る道にもよると思うが…確か俺の時は村二つぐらい経由した」


「んじゃ、そのルートで行くか。急いでるわけでもないし…途中の村で適度に休憩いれた方がいいだろ」



俺は藤原の話を聞いてそのルートで目的の町へと向かう事に決めた。



…藤原の話通り村を二つ経由して3日ほどで町に到着。



「結構かかったな……もうこの町には居なかったりして」


「俺が最後に見てから一ヶ月ぐらい経つからな。居なくても不思議では無いけど」



てか居ない確率の方が高いだろ。と、柴田の発言に藤原は予防線を張るような言い方をする。



「とりあえず俺は拠点を確保してくるから一旦解散な」


「おう」


「頼んだ」



俺は町の入口で二人と分かれると案内板を見て不動産屋に直行した。



「いらっしゃいませ」


「空き家を探してるんだけど…」


「空き家ですね?少々お待ちください」



不動産屋の建物に入って目的を告げると店員は奥に引っ込んで行く。



「…こちらが当店がご紹介できる空き家になります」


「…ぐおっ」



5枚の紙を渡され、中身を確認すると…どれも結構な値が張る物件ばかり。



…前の町で資金を集めてなければ到底手が出せないであろう値段ばかりである。



「もっと安い方がいいんだけど…他の所に行った方が良い?」


「中心部から離れた場所ならいくつか紹介出来ますが…よろしいですか?」


「安ければ、それで」



要望を伝えると店員がそう確認してくるので俺は頷いて了承した。



「かしこまりました。少々お待ちください…」



店員はまた奥に引っ込むと5分ぐらいしてから戻って来る。



「コレが当店が扱っている全ての空き家になります」



そう告げると店員は十数枚に及ぶ紙をテーブルの上に置き、さっきの5枚の紙を回収した。



「…じゃあ、この物件で」


「内覧はよろしいですか?」


「あー、うん」



どの空き家も庭が広いだけで建物自体は小さく、建物が大きい空き家が少ない。



そんな中、間取りを見る限りでは二世帯住宅っぽい大きさの空き家があり、コレ以外に良さげな候補が無い。



なので内覧をせずにそのままこの空き家を買い取る事にした。



「…はい。確認は終了しました…こちら、土地建物の権利書になります」


「ありがとうございます」



…必要な書類にサインして金を払うと店員がソレを確認して購入完了。



俺は不動産屋から外に出て直ぐに柴田と藤原に電話をかけ、住所を伝えてから俺もソコへと向かう。



「おー、結構良い家だな」



俺は二階建ての結構な大きさの空き家を見て呟いた後に早速兵士を大量に召喚して掃除や補修をさせた。




…時計を見ると今日はまだ少し時間があるので…



家の中を見て回った後、暇つぶしにギルドへ行き『雑用』の依頼を片っ端から受けた。



そして夕方頃に帰宅するも二人の姿は無い。



「ココで合ってる…よな?おーい海~?居るかー?」


「お邪魔しまーす」



兵士に夕飯を作らせていると柴田と藤原がやって来る。



「お、居た居た。相変わらずでけぇ家だな」


「町の中心部から離れてっから安いんだとよ」


「まあでかくて安けりゃどこでも良いしな」



柴田と藤原は俺を見ると安心したように笑いながらそう言ってシンクの方で手を洗う。



「で、どうだった?居たか?」


「いんや、見つからなかった」


「やっぱり俺らみたいに他の町か村に移動してんのかもな」


「そうか。残念だがまあ仕方ないな」



このまま行けばいずれどっかの町で誰かと会えんだろ。と、俺は期待を裏切られたかのような残念な気持ちを切り替えるように返した。



「王都になら男女問わず誰か居そうな気はするけど…いや、ソレもどうかな」


「王都、ねぇ…空き家とか無さそうだし、あっても高そうだな」


「王都ってだけで物価も高そうだしな。もし行くんなら結構しっかり金貯めとかねぇと」


「ま、行くにしても結構先の事だろうし…とりあえず飯食うか」



俺は話を打ち切りテーブルの上に置かれた料理を食べる事に。

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