3

そして翌朝。



昨日の今日でどれくらいの依頼が溜まってるか…と思い、ギルドへと見に行くと…



やはり結構大きな町だからか直ぐに上限いっぱいにまで依頼が埋まっていた。



…それからFとEの依頼を片っ端から受けては大量の兵士を派遣して報酬を受け取る事、一週間。



「たでーまー」


「…本当に入っていいのか?」


「大丈夫だって」



…どうやら柴田が誰かを家に連れて来たようだ。



「お」


「あ」


「いやー、ちょっくら町で見かけてよお」



リビングに入って来た柴田の後ろからついてきた男の制服を見て俺がクラスメイトである事に気づくと柴田が連れて来た理由を話す。



「えーと、誰だっけ?」


「藤原」


「ああ、そういやそんな名前のがいたな」


「この家は海原のだ、ってさっき柴田から聞いたけど…マジ?」


「マジ。先週買った」



藤原の名前を聞いて思い出してると確認するように尋ねてきたので俺は肯定する。



「マジか…この前まで普通に空き家だったのに…よく買えたな」


「空き家は安いからな」


「コイツはギルドの雑用係だからな。意外と金持ってんだよ」


「…もしかして最近FとかEの依頼を鬼のように片っ端から受けて独占してる変わり者って…」


「そうそうコイツコイツ」



藤原の疑問に柴田がからかうように笑いながら俺を親指で指しながら答える。



「へー、まさか噂の奴がクラスメイトだったとは」


「そういや海原。コイツもさっきパーティ追い出されて行くとこ無いんだと」



この家に泊めてやってもいいんじゃね?と柴田は藤原の現状を説明して提案してきた。



「ああ、良いんじゃね?部屋は余ってるし」


「マジで!?良いの!?」


「良かったな」


「ありがとう海原!柴田サンキューな!」



…こうして居候が更に一人増える事に。



「そういや藤原…だっけ?はどんなスキル持ってんの?」


「スキル?ああ固有スキルの事か?」


「おう」


「…とんでもねー外れスキルだった。おかげでやっとこさ入ったパーティも直ぐに追い出されるし」



俺の問いに藤原は嫌そうな顔をしながら返す。



「マジで!?俺のも使えねーやつだったけど、どんなスキルよ?」


「『決闘』っていう、強制的に一対一の状況を作り出すスキル」


「強制的にタイマンに持ち込むんなら敵が多い時に便利じゃねーの?」


「ヤンキーじゃないんだからバフ無しで敵とのタイマンに持ち込めても勝てるわけねーだろ」



俺の問いに藤原は呆れたように感想を告げる。



「で、お前達のスキルは?」


「俺は『縛り』っつー相手と自分にデバフをかけるやつ」


「うわ…お前のもなかなかの外れスキルだな…」



藤原の問いに柴田が先に教えると同情した様子で若干ヒき気味に呟く。



「んで、海原のは?」


「俺のは『人海戦術』大量の雑魚を召喚するだけ、だな」


「なんだってー!当たりじゃねぇか!俺のと交換しろ!交換!」



藤原は俺のスキルを知ると怒ったように無茶な要求をしてくる。



「いやいや、藤原。アイツのってマジで数が多いだけのただの雑魚だぜ?日常生活ではチートだけどよ」


「戦いは数だろうが!」


「あ、俺も同じ事言った」



柴田が宥めにかかるも藤原はこの前の柴田と同じ事を言いながら憤るように叫ぶ。



「いくら数が多くても雑魚ばっかりじゃ範囲攻撃一発でおしまいだろーが」


「んなの柴田のスキルで縛ればいいだろうが!ふざけんなよ、このチート野郎が!」


「「あ」」


「え」



俺が呆れたように返すと藤原はまさかの欠点を埋めるような対策案を出してきた。



「…柴田、お前そんな事出来んの?」


「知らん。てか範囲攻撃とか縛れんのか?」


「今度やってみよーぜ」


「そだな」



藤原の案をありがたく受け入れて柴田と話し合い次の機会に試してみる事に。



「…てか思ったんだけどよぉ」



夕飯後、ソファに座っていた急に柴田が話を切り出してくる。



「もし俺のスキルで範囲攻撃を縛れたとしても、敵が複数居たらヤバイわけじゃん?」


「そうだな」


「だったらそういう時に藤原のスキルが役に立つんじゃね?」


「…そうかぁ?」



柴田の提案に藤原本人は経験談からか怪訝そうな感じで返す。



「相手が二人ならいけるかもしれんけど…ソレ、俺が一番危ねーじゃん」


「は?お前のスキルって強制タイマンだろ?だったら敵と海原を一対一にすればいいだろうが」


「…はあ?そんな使い方出来るわけねーだろ」


「やった事あんのかよ?」



…柴田の提案した作戦の内容を巡って二人は口論のような感じで言い合う。



「した事ねーから出来るか分かんねーよ!」


「俺だって範囲攻撃を縛れるかなんて試した事ねーから分かんねーよ!」


「…それに俺の決闘は一対一だぜ?海原の人海戦術とは相性悪くねえか?」


「まあ、海原の兵士がどういう風に判定されるか次第だな」



若干ヒートアップした話し合いも藤原が少し冷静になったからか落ち着くところに落ち着いたようだ。



「とりあえず明日適当な依頼を受けて試してみればいいだろ」


「それもそうだ」


「あんまり強い魔獣だと失敗した時やべーからこの前と同じでDクラスでいいだろ」


「そうだな」



…明日のスキルの確認に向けての打ち合わせも終わり時間も時間なので俺は部屋に戻って就寝した。

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