第6話

 私と紘は、高校1年生のクリスマスの日の約束通り、高校を卒業しても、社会人になっても、ずっと好き同士でいた。20代後半に結婚をし、私は渡井夕映になった。紘からプロポーズされた時は嬉しくて、こんな幸福が自分の人生に訪れるなんて夢のようだと思った。きっと天国から、お母さんが私にプレゼントをくれたのだと思う。

紘との間に、残念ながら子供はできなかったけれど、私は子供よりも紘と二人でいられる時間の方が大切だった。紘と一緒に歳を取れるなら、これ以上嬉しいことはないと思っていた——。


**


 ピピ、ピピ。

 規則的に鳴る電子音は、いつも私の頭の中で鳴り響いていた。幻聴でも聞こえるくらい、何度も聞いていた音だ。私をこの場に縛りつける、呪文のようにも聞こえるそれは、今日、鳴り止むことになる。

 

 長かった、と過去を思い返しながら大きく息を吐く。


 しわのない、自分の両手のひらを見つめ、この手を握ってくれた男の子のことを思う。母親を亡くして、怖くて震えていた私を、光の世界へと連れ出してくれた彼のことを。彼のことを思い出すと今でも胸が切なく締め付けられた。

窓の外を見ると、いつかの春と同じ、澄んだ青色の空が神様みたいに私を見守ってくれていた。

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