第15話難易度はヘルモード
入学式はつつがなく終了した。各界のスペシャリストを育成する学校入学式だからと言って、特別変わったことは無かった。生徒会や吹奏楽部と言った一部の先輩が対外学校に来ていないのも当然であろう。
後はもう帰るだけである。
「やっと終わったね、豊くん」
ぴょんぴょんと子供みたいにスキップをして、狭い教室の机と机の合間を縫うようにして、移動しながら俺の座る席によって来る。
「今日のお姉は、テンションのメーターが振り切れてるだけだから許してあげて、いつもはこんなにおかしく無いから……本当に……」
唯の目が泳いでいる。
ものすごく疑わしい。
「いい年して子供みたいに跳ねまわるのは、流石にどうかと思うけどな……」
俺の苦言に香が答えた。
「私見せてもいいパンツ履いてるから平気だよ? 何だったら見せてあげようか?」
そう言って野暮ったくない様に折り込んで短くした。スカートの裾そを親指と人差し指で、ひょいと摘まむとまるでカーテシーをするように摘まんで、持ち上げるような動作をする。
「お姉! それはちょっと……流石に大胆すぎだよ! ここだと他の人もいるし……」
「はーい。流石に今のは冗談だよ……見せてもいいパンツを履いてるのは本当だけどね」
そう言いながらウインクをした。
「あ、豊君ってこれから時間ある? お母さん達とご飯いこうって言ってるんだけど……豊君さえよければどうかなって?」
「流石に悪いから遠慮しておく」
俺の言葉で二人ともハリセンボンのようにぷくーッと、頬を膨らませて抗議の感情を表す。
こういう子供っぽい行為を高校生がやると、それはそれで可愛らしい。
水商売や客商売やると強いタイプの女の子だ。
「豊くんなら遠慮しないでもいいのに……」
「そうだよ。私達姉妹と豊君は家族みたいなものなんだから、唯もお母さんもそう思ってるから遠慮なんてしないでよね?」
「わかった今日は、少し予定があるだけだから……近いうちでいいならご飯いこうな?」
そう姉妹に言い聞かせて彼女たちを必死になだめる。
普通年頃の男女が5年以上もあっていない場合。最初の出会いって皆こんな感じなのかな? と想像するが三司姉妹が特別だなと、瞬時に結論を弾き出して自分に言い聞かせる。
「わかった。絶対約束だからね?」
姉の香が返事をする。
「そこで一歩引くところが、お姉がお姉であるところなんだろうね……」
しみじみと言う唯の言葉に俺は何も言えずにいた。
二人とも……と言うかおばさんも俺の事をすごく気にかけてくれていたから、2週の俺が迷惑をかけるわけにもいかない。
今日出会ったメンツがほとんどの教室内において、俺達三人は注目の的と言って良く。男女問わず視線を集めていた。
この学校の男女比は3対7であり、一クラス40人弱いるのに男子は12名ほどしかおらず、これなら男子クラスを作った方がいいのではと思った程である。
先ほどから女子たちの興味の視線と、男子たちの妬みの視線が痛い。
と言うかさっきから三ヶ日が俺の事を睨みつけてくる。
ラインの通知音がなる。
三ヶ日 「二人とごはん行ってきてもいいけど、先約は忘れないでよね?」
分かってるって。
「じゃぁ俺予定があるから……」そういって針の筵状態の教室から、一分一秒でも先に避難しようとして教室を後にした。
………
……
…
学校からほど近くにある。
お洒落な店構えの喫茶店に俺は入店していた。
お洒落で女性受けしそうなヨーロッパ風のデザインの喫茶店に、一人で入る勇気を持つことは出来なかっただろう。
「いらっしゃいませ。一名様でしょうか?」
20代前半に見える如何にも年上のお姉さんと言った風貌であり、色気と母性と言う相反する属性を持っているのだが……彼女だけが他のスタッフとは違い明らかにメイド服を着ているのだ。
「い、いえ待ち合わせです」
「左様でございますか」
「こっちよ」
そう言って手を上げたのは三ヶ日桃だ。
「ではご注文が決まりましたらお声がけください」
そう言ってメイドさんはカウンターの方へ引っ込んでいった。
趣味のいい喫茶店だがこの業態を何と呼ぶべきなのだろうか? 店の中央には大きなピアノとレコード流すための機械があり、壁の異なるところには本棚が置いてある。
これがブックカフェと言うものなのだろうか? ジャズ喫茶感もあるけどなどと考察しながら、三ヶ日の要る席に向けて足を運ぶ。
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