第5話 貴方と君

☆(須郷七穂)サイド☆


私が出会ったその女は私の髪の毛を「お婆さんみたい」と言ってきた。

だけど不思議と動揺はしなかった。

怒りとかもない。

ただそれ以上に.....弥吉さんを馬鹿にされたのが腹立たしい。

考えながら帰宅する私達。

弥吉さんはずっと複雑な顔をしていた。


「.....弥吉さん。.....大丈夫ですか?」

「大丈夫じゃないな。.....そもそも君の事を卑下する様な奴だとは思わなかった。最低最悪の気分だ」

「.....私は別に構いません。.....それよりも私は弥吉さんが馬鹿にされた事が腹立たしいです」

「須郷さん.....」

「何故か分かりませんが」


そんな言葉を言いつつ私は弥吉さんを苦笑して見る。

すると弥吉さんは考えながら「そうなんだな」と答える。

私は「はい」と言いながら弥吉さんを見る。

そして前の人込みを見る。


「.....彼女はあんな性格なんですか?」

「.....あんな性格じゃ無かった。.....昔は違ったんだ」

「.....そうなんですね」

「大切な人だったよ」

「.....ですか」


そして弥吉さんは歯を食いしばる。

私はその姿を見つつ頭で考えてから「猫カフェ。良かったですね」と告げる。

すると弥吉さんは「そうだな」と反応をしてくれた。

それから笑みを浮かべてくれる。


「あんな感じの良い人が居る。そして隠れ家的な感じだった。.....最高に楽しかったよ。.....少なくとも俺は.....アイツと居る時より遥かに楽しかった」

「あはは。弥吉さん大げさですよそれは」

「.....そうかな」

「はい」


私は弥吉さんに苦笑する。

弥吉さんは足を止める。

それから「今度は俺からお礼するよ。必ず」と言ってくる。

私は「!」と思いながら弥吉さんを見る。

そして私は微笑んだ。


「待ってます」

「こうやって交わった仲だしな。.....人生も青春も一度きりだ。楽しもう」

「そうですね。.....私、それは重々に思います」

「.....君は本当に不思議な人だな。.....元気が貰えるから」

「そんな。大げさですって」


謙遜だそれは。

私は誰も勇気を持たせられない。

最低な人間だから。

だからそれは大げさすぎる。

思いながら私は歩き出す。


「私.....不登校って言いましたね」

「.....ああ」

「だけど無理に通っています。.....実は母親が厳しくて」

「.....モンスターペアレントってやつか」

「そうですね多分。だけど私は学校に行きたく無いんですけどね。今は友人が居るから良いんですが」

「.....君も大変だな」


「私は大変じゃ無いですよ。怠慢なだけです。だから私は最低な野郎です」と答えながら私は人込みを抜ける。

すると「いや。それも君の個性だ」と答える弥吉さん。

私は驚きながら弥吉さんを見る。


「.....弥吉さん.....」

「.....俺は君のその個性は良いと思う。.....最低じゃない。.....最低じゃなくて何て言うかな。.....君は本当に素晴らしい人間だよ」

「.....弥吉さんは不思議な人ですね。.....本当に励みになります。私、貴方に出会って良かった」

「.....まあその。不思議っていうか。.....俺はただの元不登校児だ」

「.....その。弥吉さん」

「何だ?」

「どうやって不登校を脱したんですか?」


その言葉に弥吉さんは「アイツ。.....山本の存在があった」と答えた。

私は驚きながら弥吉さんを見た。

足が止まってしまった。


「.....言ったろ?山本はあんな性格じゃ無かったってな」

「.....そうなんですね」

「.....だけど今はもう最低な野郎としか見れない。.....何でだろうな」

「.....大丈夫です」

「.....?」


私の言葉に弥吉さんは私を見る。

そんな弥吉さんに私は「だって弥吉さんですから」と笑顔になる。

そして「弥吉さんが諦めなかったら彼女は.....救われますよ。私の彼氏の様な存在じゃ無いんですから」と笑顔になる。

その言葉に弥吉さんは柔和になった。


「.....サンキューな。確かにそうかもな」

「.....」


何かその言葉に胸が痛んだ。

何故か分からないけど。

私は(?)と思いながら胸に手を添える。

それから私は首を振ってから「じゃあ帰りましょうか」と笑顔になる。


「ああ。じゃあ帰ろうか」

「そうですね」

「.....ところで君の家ってどこだ?」

「私の家ですか?○○マンションの4階です」

「え?俺は7階だぞ?」

「え!?」


私は驚愕しながら弥吉さんを見る。

弥吉さんは「そうか。そこまで運命的だとはな」と苦笑いを浮かべる。

それから「出会わなかったのはきっと何か運命だったのかもな」とも言う。

私は何だか赤面してしまった。


「.....?.....何で赤面するんだ?」

「い、いや。何故でしょう?だけど何だか恥ずかしくなって。分からないです」

「.....そうか」

「.....」


何でか嬉しくなった。

私は良く分からない感情のままその衝撃的事実の中。

帰宅をする。

それからエントランスで別れた。

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