第196話 ワレラ作戦ニ成功セリ

 魔狼を退けたショーカンたちは、再び迷宮ダンジョンの入り口へ歩みを進めた。


「こう真っ暗だと神経が先にバテるよな」

 と俺が溢すと

 

「疲れるから話しかけないで」


 レオもお疲れのようだ。もうどれくらい歩いたのだろう?

 

 迷宮ダンジョンの入り口は街道で迷宮都市タレントゥムスへ結ばれている。

 その街道は魔物に溢れているから、大きく迂回して山林を抜けてことになる。

 その最後の部分、今は入り口近くの背面に抜けるあたりだ。


 索敵を繰り返し周囲をうかがいながら到達した頃には、全員が疲労困憊ひろうこんぱいしていた。


「もうそろそろ入り口の裏あたりね」

 ミランダが検知サーチの範囲を広げて探っていたが、現在地が特定できた、と教えてくれた。


 同じくらいに先行していた斥候が戻ってくる。

「この先には道がありませんが、この先の真下が迷宮ダンジョンの入り口です」


 そう言われれば足元から軽い振動とともに魔物の咆哮が響いている気がする。


「もっと近くに出られないかい? 土砂を放出するなら真上からが良い」


「ならばこちらへ」


 と指し示す先に蛍光色の布切れが巻きつけられていた。


 やがて目の前の樹木が突然途切れると、迷宮都市タレントゥムスの灯りが飛び込んでくる。

 そこには所々で花火のようにきらめく火焔かえんと、風に乗って流れてくる魔物の咆哮であふれていた。


「あまり時間はなさそうです。ご準備を」

 とベルトラン隊長が剣を抜き、下草を払って動きやすいようにしてくれる。

 

 崖の縁に立ち、真下を覗き込んでみると地面まで200メートルはある。

 その壁面に迷宮ダンジョンの入り口はあり、両側が崖になっていてちょうどUの字型をしていた。

 そこから続々と魔物が出て来ている。


「行くぞ」


 中空に出現する半透明の巨大な扉。

 それが左右に開かれるとズドドドドッと大量の土砂が迷宮ダンジョンの入り口に降り注いだ。


「「ブォォォ……」」

「「キシャァァ……」」


 生き埋めになった魔物たちの断末魔と、ズドォォォ――ンッと地響きが響いて足元が細かく振動した。


「これがメテオストライク(中)だぁ!」

 気分が上がって必殺技の名を絶叫してみた。

 

「「違うわ!」」


 なんで全否定?


 足元から魔物の咆哮は消え去り、束の間静かになる。

「周りに魔物の気配はないわ。火球ファイヤーボールを放つから確認して」

 とミランダが魔法を発動させると、一面の土砂が浮かび上がった。


 さっきまでU字形に広がっていた迷宮ダンジョンの両側の崖まで、キレイに土砂で埋まっている。


「ワレラ作戦ニ成功セリ」


 魔道士が放つ火球ファイヤーボールが宙に舞った。

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