第195話 なぜか叱られるも三者三様

 ショーカンのメテオストライク(極小)によって魔狼たちは退散した。


「ショーカン!」


 防衛陣を解いた決死隊の中から、レオが走り寄って来た。


「おうっ、レオ。やっつけてやったぜ」


 心配性だなレオは――ここは安心させてやらなきゃな。

 と、フェイスガードを押し上げてグッと親指を立てて見せる。


「何やってんのさっ! ショーカンが倒れたらここまで来た意味なくなるんだよ? なに前に出てんのさ」


 ジャンプした上にパチンと兜を叩いて来た。


「あれ?」

「あれってなにさ」

 

「ここは『怪我ない?』とか『心配したぞ』とかのねぎらい系が正解なんじゃないかな?」


「心配する前に馬鹿やらかすから、呆れて物が言えないっつうの。

 命懸けでショーカンを守るつもりで来るこの人たちの気持ち、わかってる?」


「うわぁ……正論パンチ」


「なによそれ? 早く『隠密ステルス』のエリアに戻って」


 なぜかレオに説教されながら決死隊の集まりに戻ると、隊長殿が近寄って来た。


「ご苦労様です。貴殿の活躍で隊は救われました。ですが、レオ殿の言われるのももっともです。我らは貴方を迷宮ダンジョンの入り口まで護衛し、作戦を遂行するためにいるのですから」


 と、ここでも説教を食らった。

 またやらかしたってわけですかい? もう二度と前に出ないぞ俺は――なんて絶対に言わないし聞く耳は持たん。

 なぜなら俺は目の前の命を救うために反応する予感がするし。


「すまねぇ」


 それでもジャパニーズの謙虚さで、相手が心配してくれた事に頭を下げる。


「ベルトラン・デュ・グラケンです。回生隊の隊長を拝命しておりますが、かねては領軍の守備隊長をしております」


「ベルト……さん?」

「ベルトで結構。貴殿とは気が合いそうですな。無事に作戦を遂行し、一杯酌み交わしましょう」


 そう小声で告げると、「斥候はルートの特定を。ミランダ殿はお手柄でした。引き継ぎ周囲の検知をお願いします」

 と簡潔に指示を出していく。


 へぇ……苗字があるって事は貴族なんだろうがイイ奴じゃん。

 

 なんて感心していると

「あそこまで追い込んで殲滅せぬとは、やはり冒険者風情か。浅慮せんりょだのぅ」

 と、甲高い声が聞こえよがしに聞こえてくる。

 ブレードリヒの野郎だ。何があってもおまえだけは絶対に助けん。


 プンスコしているとミランダが近づいて来て「気にしちゃ負けよ」とそっと耳打ちしてくれた。


 そうしてる間にルートが確定した、と斥候が戻って来た。

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