第190話 先行き不安な決死隊

 ショーカンはエリック少将か魔宮ダンジョンの入り口の封鎖を依頼される。


「手段はある。護衛をつけて、魔物の薄いこのルートを切り開く」


 と赤いマーカーでルートを示していく。


「護衛はありがたいが、メンバーは?」

 足手纏いになるメンバーはごめん被りたい。特にカイゼル髭のアイツとか。


「まずは君たちチーム『リボーン』、そして領軍と冒険者から14名選りすぐった。神聖軍からは魔道士を3名派遣する」


「チーム丸ごと? まだレオは未成年で――」

 言いかけて口をつぐむ。

 報酬はレオのためにあるような物だ。レオは自分だけ安全なところにいる事を是としないだろう。


 逆にミランダは戦力としては十分だが、上級市民の資格だけでは利益メリットが少ないから気が引ける。

 

 むぅと眉を顰めているとエリック少将がニヤニヤしている。


「君はレオ君がそばにいる方が真価を発揮するみたいだからね。彼女は外せないよ」

 と先に釘を刺しに来る。


「危険だろうがよ! まだ少女だぞ」

 思わず反駁はんばくするとエリック少将の笑いが消えた。


「まだわからないのかい? このままじゃ、その少女も老人も赤子もみんな死ぬんだ」


 と俺の首根っこを捕まえて監視塔のふちまで連れて行く。


「見ろっ、ああやって貴様らの同胞が戦列を支えている」


 眼下には塹壕ざんごううごめく人の波と、その少し先の第二戦線で燃え上がる火が夕映えの中に浮かび上がっていた。


「誰も彼もが助かりたいさ。だが、このままじゃ2日も持たないんだ。生き伸びるためには誰かれとは言ってられないんだよ」


 はぁ……とため息をついてエリック少将を見返す。


「決死隊じゃねぇか」

「いかにもそうだが決死とは良くない。そうさな『回生隊』とでも呼ぶか?」


 起死回生かよ。ナイスなネーミングだぜ。


「ミランダが了承したなら文句は言わねぇ」

 せめてもの反抗だった。

 

 

 ――――チーム『リボーン』と護衛の一団が整列している。

 結局、ミランダは了承し契約書の類いも引き受けてくれた。


「それでは出発の前に神聖軍の軍監ぐんかんとして一言、申し上げる」


 カイゼル髭の威丈高なキンキン声が響いた。


「なんでアイツがいるんだよ?」

 

 ミランダも眉をひそめながら小声で教えてくれる。

「他に余裕がなくて輜重隊しちょうたいから魔道士も選出したらしいの。一番人手を割いているからって軍監ぐんかん(軍の監視役)に割り込んできたみたいで」


「これより我がブレードリヒ隊はぁ――」


 隊名まで変えてやがる。トホホだよぉ。

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