第188話 報酬と無茶な依頼

 レオにも関係ある話とエリック少将から聞くと、ショーカンは警戒心をあらわわにした。


 ――――ショーカン目線です――――


「やっと聞く気になってくれたか。なに、報酬の話だよ」

 エリック少将は懐から長財布を取り出すと、その中に納められたカードを取り出した。


「これが王都の上級市民の入国許可証だ。確か君の相棒のレオ君には弟がいるね? 確か……ラエル君だったか?」


 話が見えず、なんの話だ、と視線で問い返す。


「ラエル君は心臓に持病を抱えていて、王都の病院へ連れて行きたい――それがレオ君の希望だったはずだ」


「――なぜ知っている?」


 お貴族様が平民に興味を持つ事などない。あるとすれば利用する時だけだ。俺の警戒心はMAXに引き上げられた。


「少し君に興味があってね、色々調べさせてもらったよ。

 さて先に報酬の話だが、王都の上級病院を紹介してやる。

 受診は王都の上級市民でなければ受けられないが、功績の優れた平民を一時的に上級市民と認める上級市民制度と言うのがある」


 俺はエリック少将の話が見えず、かと言ってレオにとって有益な話なら腰を折る訳にもいかず、ポカンと間抜けな顔をしたまま見返すしかなかった。

 きっと頭の回転が早すぎて他人に理解させるのが苦手なタイプなんだろうな、とぼんやり考えている。


「そこで君たちを上級市民にして、受診できるようにしてやろう。もちろん紹介状も書く。どうだね? 平民では受診できない病院を受診できるって報酬は?」


 レオの一番の望みはラエルの心臓病の治療だった。

 それが上級市民が受診するような病院で受けられるなら、断る理由はない。

 だが、相手はお貴族様だ。後で知らぬ存ぜぬとひっくり返す危険はある。


「それって確約できるのかい?」


 その物言いが無礼だったんだろう。アルツール男爵の額に血管が浮かび、佩刀に手をかける音がした。

 

「貴様、貴族の約束を……」


 まあまあ、と両手でアルツール男爵を止めると

「その契約書を書こうじゃないか。神聖軍の発行する契約書だ。間違いない」


「……仕事の中身次第だな」


「そう来なくちゃね。さてこっちに来てくれるか?」

 と地図の広げてあるテーブルまで手招きする。


 現在位置と迷宮ダンジョンの周辺に、押し寄せて来ている魔物の分布が描かれてある。


「君に任せたいのは迷宮ダンジョンの封鎖だ」


「ふあぁぁぁ?」


 変な声が出たんですが?

 

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