第182話 こちらスタンピードの現場です4

「目鼻をふさぐ」と高ランカーたちが放った炸裂弾で真っ白になった。


 ――――濛々もうもうと立ち込める火薬の煙と、次々と破裂する閃光。


「「プギャァァ――ッ」」

「「ブモォォォ――ッ」」


 もともとわずかな光の中で生息する迷宮ダンジョンの魔物たちだ。

 目の前で弾ける閃光に目を灼かれ、自慢の嗅覚も煙でいふされ恐慌に陥った。

 それは自然と、自らの後ろから押し寄せる強大な魔力を放つ魔物から、逃げるように動いていく。


「ヨォシ、第二防衛線まで下がるぞ!」


 マーベルが魔物たちが到達する前に、後ろへ下がるよう指示する。


「「おうさっ」」

 威勢の良い掛け声を上げて撤退していく高ランカーたち。


 あれ? 俺だけわかってない感じ? コッチに加速して来ている気がするんやけど、ヤバいんじゃないの?

 

 求む! 解説――と言うわけで、ノシノシ肩で風切り引き上げるマーベルに追いつくと、後ろを指差しながら尋ねた。


「なぁ、せっかくパニックになったのに畳み掛けないのか?」


「バァカ、もう炸裂弾はねぇ。弾切れなら引くしかねーだろが」


「あと先考えず仕掛けたってか?」


「お前、ほんと。ほんとバカだな! あの魔物たちの進む先には――――」


 と口を開く途中で背後からズドズドド――――ンッと地響きが沸き起こった。


「「「プギェ」」」

「「ブモォォォ――ッ」」

「「ゴァァァ――――ッ」」


 阿鼻叫喚が巻き起こっている。なんだ? 何が起こった?


「――アソコにはお前が掘ったデカい堀があるだろうがよ。だからその手前で炸裂弾を放って目眩めくらましをしたんだ。

 目鼻が効かなきゃそのまま突っ込んで自滅だ。追い込み罠の基本中の基本だ、覚えとけ」


 ま、どれだけ削れたかはわかんねぇけどな……とボソリと呟いてマーベルは足早に歩いて行った。


 地響きと阿鼻叫喚の咆哮がおさまった時、Aランクの冒険者は後方に下がって休憩に入り、代わりに第二防衛戦に待機していたBランクの冒険者が準備を終わらせていた。


「よぉし、野郎どもっ! 雑魚は削ったぁ、あとはデカい奴らが来るぞっ。しっかり焼いてやろうぜ」

 ここでもマーベルが陣頭指揮を取るつもりらしい。


 鉄兜からはみ出る首筋に浮かび上がる炎のタトゥーが迫力満点でなかなか心強い。


「焼くって?」


「第一防衛戦にたんまり火薬を運んだだろうがよ」


 そう言えば炸裂弾と一緒に火薬樽も運んだような――うん、だったよな。


「城壁から合図があったら火魔法を叩き込め」


 おうと野太い声が響き渡った。

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